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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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157 日が暮れる前に

イーサイド家の強行手段がいささか不可解だったけど、長男ライナーが勝手に喋りだした。


「やってくれたよ。君が、イーサイド家とトラブったから、貴族の「治療」を断ると宣言したそうだね」


「そういえば、勢いで言ったな」

「近隣の貴族から悪評が立った上に、我々が領地に招いた教会関係者まで、重傷を負わされた」


「悪評はともかく、教会のグレイはミシェルを罪人に仕立て上げたから天罰だよ」


「その上に、我が領内で「凶信者部隊」まで暴れるから、交易や家の事業まで傾く恐れがある」


「狙った訳じゃないけど、没落し始めている?」



「許せん」

「気が合うね」


「何がだ」

「大切だったアリサの肉親でも、いや肉親だからこそ、あんたの顔を見たらムカつく」


「む、私とアリサが姉弟だと知っていたのか」

「ここにいない次女に、聞いてないの?」

「・・」


「兄妹でもお互いに出し抜く相手。肝腎な部分の情報交換はしてないんだね」

「だったらなんだ!」


「初対面のときから、あんたは私のターゲットなんだよ。アリサの「仇」と分かっていて、嫌がらせしてたんだよ」


「貴様・・」


ライナーは土魔法適正A。一緒に来た弟妹も土魔法の適正がAかB。この戦力なら、私をどうにかする自信があるんだろう。


土魔法には、私のようなタイプを拘束する技術もある。私の情報を探っていって「拘束可能」と判断したんだろう。


だけど、私には、少数の人しか理解していないスライム変換がある。そもそも、敵として恐かったのは「氷のシクル」「火のジュリア」の2人だけだ。


本気ならジュリア並のノエルは幸いに仲間だ。



「あのさ、早く始めようよ」


敵ユニットは5つ。後ろにイーサイド兄妹。私は適当に正面の4人ユニットに近付いた。手下からどうにかしよう。


「もう日が暮れるから、フロマージュちゃんが眠くなる前に、夜営する村に送り届けたいんだよね」


強化魔法を受けた剣士が斬りかかってきた。

鋭いが、ノエルと2人で「魔の森」を歩いてきたあとだ。


「怖くないんだよね、もう」


居合というやつだろうか、細身の剣が抜刀と同時に右脇腹を下から切り裂いた。


『超回復』ばちぃ。


剣が弾かれ、剣士は前傾姿勢に傾いた。


「反則でごめんね。「等価交換」」ぱち。


彼の右目に手を当てて、斬られたダメージ分の肉を頂いた。


直後に4発の魔法を食らった。食らったというか、拘束された。


氷の筒に閉じ込められ、外を土、氷、土で覆い、牢屋を作ってある。


「はっはっは。ユリナ、かかったな。体が凍ったところで鉄の拘束具を体中に着けてやる」


だけど、私は少しも動揺しない。


「冷気、密着度、強度。どれを取ってもシクルひとりの魔法に及ばない」


裸で寒いのを我慢して待っている。包囲網が縮まったと予想して、3分くらい待った。


「何人か接近してくれてたらいいな」


あまり時間はかけたくない。スライムを出して、魔法の壁に大技を繰り出した。


「スライムパンチ」ドンッ。


ビシビシビシ!


奴らの魔法の壁が固い分だけ、私の武器になる。


接近していたのは4人。土と氷の固い礫を食らった。少なくとも顔面に穴が空いた魔法使いは即死だ。


縮む体を元に戻すため、常に肉を収納指輪から出し続けている。


私は、よろけた剣士に向かって走った。


目当ては、そいつのミスリル装備。盗難目的ではない。斬られるのも構わず接近した。


そして「スライム変換」をして、ミスリル装備を装着した男の身体に潜り込んだ。


「超回復&破壊的絶対領域」ぱーーーーん。


「ぎゃあああ」


弾けたミスリル装備と男が、全方向への散弾となって飛び散った。

追加で4人倒れ、3人が傷を負った。


ノエルが張った防壁の方にも飛んだが、びくともしない。さすがだ。


「平民女が、貴族家の者を殺害しおって!」


「どうせ、あんたらが捕まれば、娘と孫を愛するイツミ伯爵様のドラグ様による、拷問、処刑コースが待っている」


残りは11人。1人の剣士が背を向けたけど、その瞬間にノエルの火玉が剣士の頭を包んだ。


「だから、私も遠慮しないって」

いい笑顔だ。


残りは10人。


「計画を狂わせて悪いけど、高位の精霊使いがゲスト出演してるんだよね」


「うるさい!」


ヤケになって突っ込んできた剣士2人を片付け、魔法使いも1人倒した。


味方のガードをしたままでも、ノエルは断続的に魔法を撃てる。逃げようとするやつは、みんな焼いてもらった。


そして、ライナー達3兄妹のみになった。


「ノエル、まだ防御魔法はイケる?」

「大丈夫。思う存分、戦って」


ライナーらはまだ、諦めていない。すなわち私に対策しているということ。


ノエルは私に攻撃を託し、フランソワ夫人一行の防御に徹してけれる。


「いよいよね。ライナー君がいなくなれば、誰が家を継ぐの?」

「勝つ気か。どちらちしろ、家を継げるのは私しかいない」


「その言葉を信じるなら、あなたさえ捕まえれば、イーサイドは衰退するだけね」

「レベル70、HP1050の私に勝つ気か。兄妹2人も強いぞ」


「う~ん。劣等人の私には本当の強さが分からないけど、強い上に「研鑽」した人間の恐さはないわ」


「また侮辱か。捕まえて、奴隷にしてやる。無理なら殺してやる」



「ライナーひとつだけ聞かせて」

「何だ」

「アリサはお姉さんでしょ。追放されるとき、何も思わなかったの?」



「思ったよ」


嫌らしい目をしている。何を言うか予測はついた。


「やっと俺の汚点がいなくなる。早く死んでくれってね」



アリサ・・。

あなたの弟だけど、これで1ミリのためらいもなくなった。


「今から、親友の仇を取るわ」




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