151 恋人でもないのに
1000メートルの高さから落ちて、生還した。
私も、ノエルも生き残ってる。
私が下になってクッションになったが、時間の余裕はない。
ノエルは手足が千切れて気絶している。肋骨や股関節も折れている。
高スペックの上に高レベルだから生きているようなもの。
私は激しく損傷したせいで『超回復』後は過去最少の55センチまで縮んでいる。
だけど、命には関わらないから、後回し。
急いで収納指輪からダチョウを出してノエルに、行ってこい変換。
『超回復』&「等価交換」。ぱちばちぃ!
「もう大丈夫」
ノエルの下敷きになったまま、ぼ~っとしている。
ノエルも放心している。
こんなときに考えるべきではないけど・・。
ほんの少しの時間だったけど・・。
ノエルと性的に交わったんだろうか。
時速500キロで生身の身体のまま滑空しながら着地した。
その直前、正面から抱き合ったノエルのアレが、極限の緊張の中で怒張した。
そんなこともあるらしいが、気にする余裕なんてなかった。
2人とも裸だった。
最初の接地の衝撃で体がぶつかり合った。骨盤が砕け、2人の何もかも溶け合いながら潰れた。
普通なら死ぬけど、『超回復』で2人の身体が復活した。
あのとき、私の女の部分に、知っている、しびれるような感覚が走った。
「破壊的絶対領域」の作用でお互いの身体を弾くはずだった。
だけど、何の偶然から身体がフィットしていた。
最初のバウンドをして、再び着地するまでのわずか数秒。
復元された私のアソコに、奇跡のように、ノエルのアレがすっぽりはまってた。
ノエルも驚いた顔をしていた。
だから何が起こったか分かっただろう。
迎え入れたつもりもない。ノエルも何もしていない。
そんな余裕なんてなかった。
私もノエルも、繋がりを確認する間もなかった。あっという間に、2度目の着地体制に入った。
「すごかった。・・狙ってやれることじゃないけど、すごかった」
3分くらい放心していた。ノエルもだ。
そろそろ、自分の身体を戻したい。
「ノエル、回復スキルで意識も含めて全快でしょ。重いからどいてよ」
「あ、ああ。意識はあるけど驚きすぎて・・あ?へ?」
55センチになった私を見て驚いている。説明するより実演するのが早い。
ノエルの手からすり抜けて立った。
ノエルは横座り。
少し金色が入った、長い銀髪も美しい。
ダチョウを出して、唱えた。
「等価交換」
ぱちばちばちばちぃ!
一瞬で55センチから160センチ。視界が変化しすぎた。
久々にスキル使用後、目眩がした。
「ユリナ!」
素早くノエルが飛んできて、捕まえて膝枕で寝かされた。
「ノエル・・」
「・・」
すごく熱い目で見られている。
真っ直ぐた。
『超回復』を使い多くの人を治してきた。
なんだろ、この目。
今まで感じ取った、感謝、驚愕、欲望、色んな感情。どれとも違う。
何なのか分からない。
「ノ、ノエル」
「ユリナ、ねえ」
思わず息を飲んだ。いつもの軽い「ありがとう」の雰囲気ではない。
「あのね、ユリナ、私達」
声が震えている。
「私達、バウンドしながらの一瞬で、エッチしちゃったのかな・・」
「え? え? ・・し、した・・ね」
「やっぱり・・」
「回復スキルが働いたとき、私とノエルが奇跡的に繋がって再生されたんだと思う」
「・・私も、そうなった感覚があった」
「や、やっぱり?」
「・・あんなに全身がしびれるなんて・・」
「私も・・」
高度1000メートルからの道具なしダイビング。
「生還」の喜びよりもまず、「性感」の話になってしまった。
ノエルは処女ではなかったが、童貞だった。
図らずも、私が初めての女になってしまった。
それも世界中で例がないやり方。
「ユリナ、責任取るよ」
「気にしない方がいいよ。まさに事故だったし・・・」
これ以上は興奮できないくらい激しい体験をした。
1秒で終わった童貞喪失劇だけど、とんでもない余韻を残した。
やっと生還の喜びがわいてきて、2人で抱き合った。
ミール、ミシェル、リュウ、マヤになぜか謝りながら、何度かキスしてしまった。
◆◆◆
2人で話した。ノエルは私のことを好きだと言う。
私にはミールとミシェルのことで、気持ちの整理が付けられるのかさえ分からない。
まだ次の恋どころか・・
「きっと、ノエルの好きは、吊り橋効果。超回復ハプニングエッチのせいだよ」
「そうじゃないと思うんだけどね」
「まあ、オルシマに来るんでしょ」
「うん、そうさせてもらう」
「旅しながら、気持ちを落ち着かせればいいよ。・・いきなり最終形までいっちゃったけどね」
「さっきの結合はノーカウントにして。ミールちゃん、ミシェル君と話してさ。それから正々堂々とユリナと付き合いたいの」
ドキッとさせられる。弱った心に効きすぎる。
反則でしょ。
「ところでユリナ、私達って遭難してるんだよね」
ノエルの計算では、ワイバーンのせいで60キロ以上は西に飛ばされている。
伯爵様のとこに帰り、私とノエルの生還報告。プラス、ノエルの伯爵軍離脱の挨拶しないといけない。
「ノエル、ルートはどうする?伯爵様の家まで道なりなら300キロでしょ」
目の前は「魔の森」につながる「魔の台地」
だけど、私達は直進あるのみ。
イツミ伯爵軍も避けて通るルートだって気にしない。
レベル88、HP1232のノエル。有機物とスライムさえあれば反則スキルを使える私。
余裕だろう。
高レベルの魔物を捕まえて、今回心配をかけた男爵軍2つへのお土産を作る。
その程度しか考えていない。
危険地帯にあっても、恥ずかしくてノエルから顔を背けてる。
次回、少し現実逃避したユリナ・・
です。




