表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/188

147 決戦の前夜

ワイバーン討伐隊に参加している。


普段は出没しない農村地域に出た原因は分かった。


その原因の貴族家の一団も懲らしめたが、ワイバーンの脅威が去っていない。


作戦会議には合同討伐隊を組むイツミ伯爵家、カロ男爵家、グママ男爵家から各5人が参加している。


私は伯爵様の言葉で少し救われ、酒でも飲もうかと思っていた。


だけど、なぜか会議に引っ張り出されている。


「ユリナ殿まですまんな。ただ、かなり事態が深刻化しそうなんだ」


ワイバーンの出没は3日に1度で、その法則通りなら明日。


2体が出るそうだ。


魔法部隊の攻撃でワイバーンを地面に寄せ、地上で肉弾戦。


今回の戦力があれば勝算十分だそうだが、前回の襲撃からイレギュラーが起こった。


敵に追加部隊が加わった。


ワイバーン2体のおこぼれを狙うハーピーが付いて来るそうだ。


前回は5匹で男爵2家の部隊で追い払ったが、怪我人も出たとか。


ハーピーは群れやすい。


前回が偵察隊なら、今回は主力部隊が来る。


最悪の場合は100匹の可能性あり。


「私も戦闘参加ですね。何を受け持ちましょうか」


「かたじけない。ユリナ殿は伯爵様以上にお強いという話ですが、どのくらいのレベルの敵を相手にできそうですか」


下手に力を隠して仲間に犠牲者を出してはいけない。


有効な情報を出そう。


「気功攻撃の私は基本、超接近型です」


ゼロ距離なら、特級ダンジョン10階の推定レベル90~100のランドドラゴンが最高。


人間はジュリア。それは黙ってる。


「おお、Aランク並なんですね」


「道具を使って、伝達気功、その効果を作ることはできます。射程距離は5メートル程度が限度です」


それから会議を重ね、陣形などを決めてもらった。


私の提案で、役割も決まった。


◆◆◆

明日に備え、みんなが寝静まった。


私は朝まで飲んでも『超回復』を使えば大丈夫。


野営地から離れた木の陰でウイスキーを出した。


今夜もハーフエルフのノエルと一緒。最近ずっとだ。


気持ちが不安定な私を気遣ってくれる。


彼女は寿命500年の美しきハーフエルフ。


私は美しくないが『超回復』の効果で寿命の概念がなくなっていると思われる人間。


ノエルの、時間的な価値観や世界観が何となく、分かるようになった。


「ユリナ、伯爵様から聞いて、みんな驚いてるよ。ワイバーンをおびき寄せるための生き餌、オークの塊の上に乗るんだってね」


「うん、一番槍はもらうよ」


「冗談言ってるけど危険すぎ。明日、撤回しても誰も文句言わないよ」


「ありがと、心配してくれるんだね。カウンタースキルで戦うから、食べられてから勝負なのよ」


「はいはい。常識で考えちゃいけないんだったね。ふふふ」


ミールと似ているけど、笑い方が違う。すごく大人っぽい。


ミールは私が逃げたあと、きちんと笑えているだろうか。


泣いているかもしれない。だけどミールの横にはミシェルがいる。


泣いてても笑っていても、2人で時間を暖めていて欲しい。


つらいことは時間が忘れさせてくれる。


ノエルがそう言ってくれたが、私もミシェルに対する余熱が消えてくれたら、そう願っている。


だけど今の気分は複雑だ。


ミシェルへの思いをミールとミシェルに気付かれた。


中途半端な行動が原因でカミユを助けられなかった。


ノエル、フランソワ夫人、ドラグさんのお陰で気持ちは楽になってきた。


それでも大切な闇の子の死は、私の中にダメージとなって残っている。


むにゅ。「ん?」


思いにふけっていたら、ノエルにキスされた。


「ふふふ。ちょっと悲しそうだけど、優しい目になってるよ」


「ちょっとびっくりしたけど、なぐさめてくれたんだ」


何だか抵抗感がなかった。


「ねえ、これが終わったらユリナはオルシマに帰るの」


「そうしようと思ってる。まだ気持ち的に無理そうなら、寄り道しながら帰るよ」


「私も行っていいかな」


彼女は伯爵軍が気に入って、15年もいる。


そそろそろ、放浪民族エルフの血が騒ぎだして、動こうかと思っていた。


ノエルに、妹みたいなミールを会わせたい。


彼女も興味を持っている。


「ミールの彼氏、ミシェルも紹介する」


「ねえユリナ」

「何?」


「ミシェル君って子が好きなんだね」


「・・まだ会って、数か月。一時的なもんだよ」


ノエルは言う。


彼女は色んな人を見てきた。


一目惚れから長く付き合ったカップルも見た。色んな出会いの形を見てきた。



人間に関わるのが好きなハーフエルフ。


13歳から67年も人間の街で暮らしてる。


なぐさめてくれる。優しい。


「ふふっ。言うことに深みがあると思ったら、13と67。合わせて80歳のババアじゃん」


「なっ。人間に換算すれば成人直後のピチピチだよ」


「ふふ、ピチピチって」

「あはは」


「ありがとう、元気出たよ」


だけど次の瞬間、私はトラウマワードに過剰反応してしまった。


冗談半分なのに。


「そうだ。オルシマに行くとき、私が彼氏のふりするね。一応は両性だから、男子の格好をすれば男に見えるよ」



「だめ!」



私がカミユに嘘の彼氏になってもらおうかと考えた。


慕ってくれる子の気持ち。一瞬でも踏みにじろうとした。


「カミュの心を傷つけようとした。そんな人間だから愛想をつかされたんだ。だから、だからカミユは私のことを生きて待ってくれなかったんだ!」


私は大声を出した。


だけどノエルは何も言わずに私を捕まえた。


「・・離して」

「嫌だね」


力強い。そんで抱き寄せられた。


「・・じゃあ、またキスしてよ」


「嫌」


「なら、何がしたいの」


「別に」


「・・・それなら抱いてよ。男の機能もあるんでしょ」


「それも嫌」


「何がしたいんだよ。もう離してよ。放っておいてよ!」


圧倒的なステータス差。スキルを使えばできるけど、私はただもがいた。


泣きわめいて、ノエルに文句を言って、泣いてわめいて、泣いて。


立ったまま抱かれて、いつの間にか意識がなくなっていた。


カミユが死んでから、初めて深い眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ