14 やりすぎスキル
ソフィーと自称忍者マリーが慰めてくれて、気持ちが落ち着いた。
友達3人の敵は取りたいけど、ジュリア達5人を倒すには決定打が足りない。
だから、何か強力な武器がいる。
それに街からいなくなったジュリア達を追うために、旅をしなければならない。
そのとき情報も必要だが、私には何の後ろ楯もない。だから、色んなことをお金で解決せねばならない。
足りない物、やらなければならないことが多すぎる。
まず、自分の能力を完全に把握したい。
◆
2日後、能力検証に来た。
私を助けてくれたソフィー達は、Aランク昇格の条件を満たすため王都に向かって出発した。
首の痣を治してあげたマリーが私と一緒にいると言ってくれたけど、仲間3人に引っ張られて行った。
私はとうとう1人だ。
今日の格好は上が、目が小さなヘソ出し鎖かたびら。下はミスリルふんどし。足はミスリルサンダルに革ひもを着けてサイズを合わせている。
風のカルナから頂いた、高価な弱装甲だ。
普通の服が「有機物」なので迂闊に着れない。
人前で戦闘する場合は、丈が長く目が粗い鎖かたびらを地肌に着て、上から普通のタンクトップを被せる予定。比較的安価なので、20セット用意している。
痴女スタイルの戦闘フォーム脱出も1つの課題だ。
「等価交換」でゴブリンでも栄養にできるので食費は必要ない。なのに、今後は服代が嵩みそうだ。
「という訳で草原に来ました。『超回復』をうまく使えたら、治療魔法としてお金を稼げます」
ここはEランクの私が慣れ親しんだ薬草群生地ではなく、Dランクの狩り場だ。ゴブリン、一角ウサギ、スモールボアが主な獲物だ。
私は高位ダンジョンを彷徨ったから、レベルは最低でもDランク上位の30まで行ってると思う。
だから、ここなら楽勝。3時間後にはゴブリン4匹、一角ウサギ2匹、スモールボア2匹を捕まえ、縄で縛っている。
「うりゃっ」
「ぐげげげげぇぇれ!」
まずはゴブリンの足をナイフで刺して、頭に手を当てた。
ソフィーに手を触れたときと同じで、触った場所から離れた右足に異変を感じた。
『超回復』。
「治った。一瞬だ」
次はゴブリンの足を切断。暴れるゴブリンを押さえつけて、切断面を合わせて『超回復』。
「これも治ったよ」
で、自分の背丈を測るとかなり縮んでいる。
魔力を使わないんだから、治療にも「等価交換」システムを使うのが当たり前のようだ。
「お金を稼ぐため『超回復』には、この辺を限度にしてもらいたいんだよね・・」
次は最初から手の指がなくなっているゴブリンに猿ぐつわをし、さらに手足をぐるぐる巻きにした。
どすっ。ざくっ。
足を膝下で切断し、腹を刺したゴブリンの腹に手を当て、腹の傷だけを意識して『超回復』を唱えた。
しかし、治ったのは腹だけでなかった。足が生えてきて、さらに最初から欠損していた指も元通り。
私の体が140センチくらいになり、スモールボアの頭に手を当てて「等価交換」で自分の身長を戻した。
だけど、すでに絶望的な気分だ。
「やっぱり寸止め機能で程よく治すってのが、無理なのか・・」
もう仕方ないから、最後の実験に入った。
ゴブリンの右足首から先を切り取って仕込み完了。
右手を足がないゴブリンに当て『超回復』、左手を一角ウサギ1匹に当てて「等価交換」の同時発動を意識した。
すると右手を当てたゴブリンは完全回復し、左手を当てた一角ウサギは骨だけになっていた。
「右から左に行ってこいは成功か。ゴブリンの皮膚が全体的にウサギのピンクが混じってる。なるほど、皮膚だけは、ちょこっと違う扱いなのか・・」
とりあえず、残りの獲物に止めを刺して、指輪に収納した。
このスキル、治療魔法の代わりとしては強すぎる。
人の治療でお金を稼ぎたいが、あらゆる傷を治すのは不味い。
例えば片眼と片足を失った人が腕を骨折し、私のとこに骨折だけ治しに来たとする。
だけど『超回復』をかけたら、骨折だけでなく全てが治る。今のところ、私がコントロールできない。
せめて世の中に欠損を治す魔法が普及していればいいが、ない。
欠損を治したという記録は約100年前。
超級ダンジョン下層で見つかったエリクサーで可能にしたという話があるだけだ。
そんな世の中で、私がギルドの片隅を借りて、エリクサー並の仕事をしたとする。
騒ぎになる。
貴族や有力者に拘束される。
徹底的に調べられて、弱点を利用される。
鉄の首輪をかけて、治療奴隷にされる。
そんな未来が浮かんでくる。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し、が近いのかな・・」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
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