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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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139 ユリナ、怒る

山手に近い街道。


カナミール子爵家三男カルゴと向かい合っている。


「やってくれたねユリナ君、マヤをヒロインに押し上げ、私を犯罪者にしたて上げてくれたな」


「馬鹿ね。黙ってる訳ないでしょ」


私が「回復奴隷」、マヤは「性奴隷」。そんな馬鹿な話、私もリュウも許さない。


先に見つけた私が処理する。


「どうせ、兄2人を亡き者にする計画もばれた。母が拷問される前に白状したようだ」


「どっちにしろ、先はなかったんだよ、あなた」


「そこはいい。次のチャンスが来たし、新たな道を歩くよ」

「チャンス?」


こいつの母の実家、イーサイド男爵家。

当主が病気の妻を治せる私の捕縛指令を出してる。


連れてきた人間を男爵家の継承権第一位にするそうだ。


こいつ、馬鹿と判明。


「イーサイド家ね・・。カナミール子爵、イツミ伯爵家の両家に追われるあなた、迎え入れる? 騙されてるよ」


この男にも護衛がいた。それに「暁の光」の4人も気になる。


そこには、ミハイルさん率いる「凶信者部隊」が対応してくれる。


お礼は後日。もちろん、飲み会だ。



私のところには護衛は必要なし。三男とサシで戦うと言ってあった。


なのに、弱い闇の子3人が私に付いてきている。


命令違反だよね。


顔も知っている。


少し前にオルシマで、教会勢力に施された精神魔法を解いた子達。


そして名もなき神の「祝福」を与え、一緒に乾杯した。


いずれも17歳で、カミユ、ダン、マイクだ。


来てしまった以上、帰れなんて言わない。


闇属性のせいでいわれなき迫害を受け、私のところに来た彼ら。


彼らも私が守る。



ただ、近づきすぎ。


私達と三男の距離は15メートル。彼らも危険な距離にある。


「ユリナ君。そいつら、低レベルだろ。僕は舐められているのかな」


「うるさい、俺達がユリナ様をお守りするんだ。ダン、マイク、死ぬ気で戦うぞ」


私は制止した。


が、気合が入り過ぎたカミユが勝手に飛び出した。


「ダメよカミユ!」


「ウインドカッター」


ざしゅ。一歩目を踏み出した瞬間にカミユの右足が飛んだ。


私は素早くカミユを抱き締め『超回復』を唱え、ことなきを得た。


だけど。


怒りが沸いてきた。


「カミユ!」


「あ、脚が元に戻っている。ユリナ様・・」


ばちいん!「馬鹿が!」


ビンタした。


「死んだらどうすんのよ」


「私達は、ユリナ様のために死ぬことが本望で・・」


「私は、そんなこと望んでいない!」


「え、え?」


「私から祝福を受けたんだ。あんた達は私の子供だ!」


「ユ、ユリナ様」


3人とも驚いた顔をしている。


悲しいくらい、普通の感覚が身についていない。


仕方ない。


「3人に解除されることがない命令を出す。無茶をして私を悲しませるな。怪我をして私を悲しませるな。死んで私を悲しませるな」


3人があっけに取られている。


「返事!」


「一生懸命に生き残ります」

「分かりました」

「はい・・・はい」


茶番だけど、それでいい。


彼らは精神的に私に依存してる。


いずれ、本当に自立する。それまでは、こんな言葉で心を支えてあげる。


これくらいで泣くな。



3人を下がらせた。


「熱いねユリナ君。だけど組織のトップに立つには甘すぎさ」


「そんな器じゃない。私はただ、虐げられても頑張りたい子を支援するだけ」


「ふふん、足元を固めていないと、いずれ誰かに裏切られるよ」


「それでも構わない。この子達が私を利用して幸せになれるなら、私は踏み台でいい」


「幸せか・・。結局は暁の光のリュウはマヤに取られ、自分の幸せはそっちのけか」


リュウは悲しい時の私を支えてくれた。感謝している。


こいつみたいに、「色欲と金欲」でしか物を考えない人間に、私達の関係性は分からない。


「あんたの低レベルな話も飽きた」


「さて、ユリナ君を切り刻んで捕縛させてもらう。そしてカナワに戻ってリュウを殺し、マヤの処女をいただくよ」


「たかだか風魔法適正Bでレベル70でしょ」


「ダンジョンで会ったときは分が悪いと思って引いたけど、1対1でそっちに勝ち目はないよ」


「もう死ね」


いつも通りにまっすぐ歩いた。


右太ももにウインドカッターを食らった。


『超回復』。少しバランスを崩したあと、また普通に歩いた。


「大したことない。スキルを得て最初に倒したのが「風のカルナ」。あなたなんかに何の怖さも感じない」


「え、間違いなく魔法が当たったよな」


「あなたは始末する。恩人のリュウを殺して、妹分のマヤを汚すか・・。赦さない」


私はオーク肉を出し、「等価交換」で体を完全に元に戻した。


そして、再び三男に接近した。


ウインドカッターが飛び交うが、『超回復』を唱え続ける。


「くそ、魔法が効かないとは」


カルナに食らった大技「ウインディートルネード」も受けた。


だけど今は収納指輪がある。風の渦に巻かれながらダチョウを出して体を修復した。


地面に落ちた私は、胡座をかいて、欠伸している。


切り札も通じない。

さすがに三男はおののいた。


そして逃げた。


奴の魔力も尽きかけているし、疲れている。


街とは反対方向に時速36キロの速度を保って追い続けた。


ある場所に誘導するように。


20分後、奴は街道から大きく西に外れた緩やかな山道を逃げていた。


スピードは落ちていた。私は同じ速さで追いかける。


『超回復』


手にナイフを持って、息も切らさず追い続けた。


「ひいいいい!」


この先にあるのは特級のダルクダンジョン。


それをスルーして先に進むと、オークやオーガが出没する危険地帯。


「好きな方を選びなさい。どっちでも付き合ってあげる」


どうせコイツ、逃亡中の身。


行方不明になっても、カナミール子爵家の関係者は逃げられてしまったとしか思わない。


それに子爵長男に、処理のことは匂わせている。


幸い、カミユ達3人もハイペースの追いかけっこに付いて来れない。


彼らがいないなら、思う存分・・



そのあとどうしたのか、誰にも言えない。





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