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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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134 なぜか殺戮部隊のトップに

ダルクダンジョンから出た。


貴族の使いにしか見えない集団が、私を捕まえに来ていた。


ここで弱気な対応はできない。


領主の三男に、美少女マヤも目をつけられている。味方ではないだろう。


場合によっては、私をミハイルさんを召喚する。

1人も逃がさないために。


「あの、私はマルクル。カナワ領主カナミール子爵の命により、ユリナ様にお願いにあがりました」


この人は見たことがある。


40歳くらい。貴族関係者とは思えないくらい、物腰が柔らかかった印象がある。


「お願い? それはおかしい。そちらの三男に脅された」


「なんですと?」


「ここにいる妹分のマヤが冤罪で捕縛される話になった。そして私も、私が被害者になった事件により出頭命令と言われた」


はっきり、させておく。


「私達が、カナミール子爵家を信用する要素がない」


ざわっ。「あれ?」


そこいら中の草むらから、幾つもの低い声が響いた。


「ユリナ様に、無実の罪で出頭命令・・」

「こいつらはユリナ様の敵・・」

「ユリナ様の大切な方まで害をなす・・」


「・・奴らの主君も家族も滅しよう」

「・・おう、害虫退治だ」

「・・息の根を止めよう」

「・・屑どもが」


「さあ」

「さあ、ユリナ様」

「ユリナ様、さあ」



「ユリナ様、私達に命令を下さい」



「ひいっ」


いきなり出現したたくさんの黒い気配。マヤが声を出した。


私もびびった。腕組みをして動じないのは・・固まっただけだ。


ミハイルさんが来てくれた。それも部隊ごと。


そしてまたも、誰ひとり、感知できなかった。


「ユ、ユリナさんって、個人の戦闘部隊まで作ってるんですか」


ちょっと『超回復』を使って一緒に乾杯。

そんだけで感謝してくれた闇属性の子達。


私を囲む貴族家部隊の、さらに外を囲んでいた。


「も、も、申し上げます。カナミール子爵はユリナ様、マヤ様に関する捕縛命令など出しておりません」


「人相書って証拠があるよね」


「人相書きを張ったのも、マヤ様に関することも三男様の独断で、厳重注意がなされております」


「それを信じろと?」


周囲の黒い殺気が、なおさら濃くなった。


脅すだけ。なのに、ヤバい方向に向いてきた。


「し、しかし」


「私の討伐履歴、調べてあるよね。お願いが何か知らないけど、今の私は気が短いわよ。イーサイド男爵家と揉めてるし」


人がいい使者さんは黙り込んでしまった。


けど、マヤのため、釘だけは刺しておく。


「あなた方を囲んでいる人達のことは把握している?」


私も良く分かってない。ミハイルさんに甘えさせてもらう。


「三男さんがマヤに手を出すのはもちろん、「暁の光」が被害にあったときは・・」

そこまで言ったときだ。


ミハイルさんが勝手に言葉を繋いだ。


「教会暗部「凶信者部隊」が、カナミールの血が地上から消えるまで、闇の中を駆け巡る」


「げ」


ミハイルさん、まるで私の意思みたいだよ。


有力者の間では名の通ったヤバい組織なのは聞いてる。


貴族家の使者さんが真っ青になっている。


これはいかん。


領主・カナミール子爵に危害を加える気はないもの。


この街の領主は、オルシマ領主と同じ、いい施政者なのだ。


かつて底辺、劣等人だった私には良く分かる。


カナワは仲間を亡くした悲しい場所。だけど、魔力ゼロでも虐げられなかった。


いい人に支えられ、余裕がないなりに友達3人と暮らしていけた。


領主が魔力ゼロのアリサを追放したイーサイド領なんかとは違う。


恩がある人もたくさんいる。


「異分子」の私が去ったあと、平和に現状維持をしてもらうことしか望んでいない。


この流れは不味い。


そうだ、妥協案。


「使者さん、命令は受けないけど、話があるなら聞くよ」


私が言い終わらないうちに、使者さんは頭を地面に擦り付けた。


「フロマージュお嬢様をお救いください!」


フロマージュ11歳。優しく育ったカナミール家の末っ子。私も知ってた。


だが、8ヶ月前に病に倒れた。


「血の中に病気の毒素があり、治療魔法を受けても3日ほどで再発するのです」


「今は?」


「治療しても再発までの期間が短くなり、体も痩せ細っております」


父の子爵は来ていないが、横着している訳ではなかった。


街の近くにいると思われる、私が発見されたときのため、備えている。


自らお願いをするため。


執務をこなしつつ、ろくに寝ず、報告を待っている。


カナミール子爵は、他の貴族より私の秘密を早く知っている。


探る時間が多くあったはず。


オルシマで接触してこなかった。だから、私の討伐履歴、交遊関係を見て「ヤバい」と判断したと思った。


今回は、私を刺激する危険性を承知した上で、それでも探している。



「娘さん、そんなに時間が残されてないのか」



使者さんに聞いた。


「いきなりだけど、これから迅速に事を済ませたい。言うことを聞く気はある?」


「はい、旦那より最大限の協力をせよと仰せつかっております」


「そのフロマージュちゃんの部屋を教えて」


「え」

「早く」


「はい、本宅2階の奥から2番目の右側の部屋です」


「ミハイルさん、図々しいお願いをしていい?」


「なんなりと」


「念のためにマヤが「暁の光」と合流するまで、護衛する人を貸してもらえる」


「承知しました」


「迷惑かけるわ。今度、借りを返すから」


「いえ、とんでもない。さあ、部隊散開」


「マルクルさん」

「なんでしょうか」


「私の中の「名もなき神」が言ってるわ。3時間後よ。今、マルクルさんに言われた部屋にいる人に奇跡を起こす、と」


「おお、本当に・・」


「ただ、街に入ってから、私とマヤ、そして闇の子達に何かあれば、気まぐれな「名もなき神」は力を貸さない」


「子爵邸に入るために、手続きなどもあり・・」


「それなら話は終わり。娘さんの治療に力を貸してくれる神様は、ここにいる闇属性の人達の方が好きなの」


ざわついている。


「娘さんのことは、平民の私に頭を下げたあなたへの、ボーナスだそうよ」


マルクルさんは即決。馬8頭を駆って、カナワの街の方に走り出した。


彼らがカナワの街にたどり着き、領主に報告するまで1時間と少し。


提示した3時間のうち、残りは2時間を切る。


時間的に、子爵側は大した対策を打てない。


3時間を提示したのは、相手に考える時間を与えないためだ。


ただフロマージュちゃんを治療して帰る。それだけをやる。





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