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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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133/188

133 彼女を守るため

ダルクダンジョン11階、フロアボスを倒した。


最初のフロアボスとはいえ、ダンジョンは特級。


誰にも会わないと思っていた。


そこに、ボス部屋前で他の挑戦待ちの人が5人いた。見たところ、強そうな20代の冒険者が4人。


冷静に見た。


なんだ、知っている顔だ。みんな個人ランクはBで、カナワでも上位に入るパーティー。リーダーはシドさんだ。


そして18歳くらいの豪華な装備を身に纏った優男が1人いた。


こいつもかなり力がありそうだ。


「シドさん、久しぶり。こっちは終わったから、どうぞ。マヤ、休憩しましょう」


「あ、ああ。久しぶりだな、ユリナ」


「マヤ!」


優男にマヤが声をかけられた。


「君はなぜ、こんな危険な場所に」


マヤ、返事せず。


「おい、何が言ってくれ。僕の誘いを断って、最近見ないと思ったら・・」


「何度も言ってますが私には想っている人がいます」


「リュウか。奴にはユリナがいるぞ」


こいつ無遠慮に、マヤの心をえぐっている。


「マヤ、聞け」


優男がマヤに手を伸ばそうとした。私は2人の間に体をねじ込んだ。


そしてシドさんも、優男の動きを阻んだ。


「カルゴさん。危険なダンジョン内で他の冒険者と揉めるのはご法度。領主の三男様でも、庇いきれませんよ」


「し、しかし。仲間がいないチャンスなのに・・」


「誘拐まがいのことまでしたくせに、ギルマスのラグさんにも報告済みですよ!」


マヤがとうとう怒った。


何かのスキルは持っている。そしてレベルも高いようだけど、危険人物に認定した。


もし誘拐犯がシドさんなら、顔見知りでも許せない。


シドさんが口を開いた。


「俺からも、2人の女性に謝る。申し訳ない」

「誘拐犯はシドさん達のことじゃないです。シドさんは謝らないで下さい」


「私もマヤがいいなら、なにもしない」


領主が探す私の名前を出さず、うまく収めてくれた。


「ふう、彼女に皆殺しにされるとこだった」


領主の三男、カルゴ君が反応した。


シドさんはカナワにいた時、底辺冒険者の私達にも気さくに接してくれた。


いつも一言多かったが・・


「貧相な顔。細い腕。ボロい服なのに特級ダンジョンで無傷。まさか、君が「噂のユリナ」か」


「失礼なキーワードの連続で気付いてくれたわね、カルゴ君」


「君は一年近く前だが、冒険者ギルド内でカスガ男爵家と揉めたな。それで出頭命令が出ている」


「ふ~ん」


しかし、次の一言でスイッチが入った。


「マヤも逃亡幇助で調べる。一緒に来てくれ」


最中の毛が逆立った。


マヤは早くも、私の妹分。


密室に連れ込んで襲う気か。許さない。


「どっちも断る。この場で撤回しなさい」

「なっ」



「撤回・・しろ」


カルゴを見た。


どんな人となりか知らないが、薄汚いゴブリンにしか見えなくなった。


向こうから、私はどんな風に見えているんだろうか。


すごく弱そうな女が、ただ睨んでいるだけに見えて、何も思わないんだろうか。


シドさん達と戦うんだろうか。


だったらシドさん達には悪いが、彼ら4人の手足を叩き折る。


そして、カルゴを裸でボス部屋に放り込もう。それからシドさんを治療すればいい。


ナイフを捨てた。


私は素手。要するに、「等価交換」で相手を殺す準備をした。



「ユリナ待った。俺らはカルゴさんの命令は聞かない」


「なんだと、シド」


「カルゴさん、俺らへの依頼は11階フロアボス討伐の手助けだけ。行き帰りも転移装置で直行直帰」


「追加ボーナスを払う」

「分かってないな」

「何のことだ」


「マヤ、君がダンジョンに入る前のレベルは?」


「・・22です」


「カルゴさん。ユリナはレベル22のマヤを連れて、無傷で、ここまで来たんですよ。強いとは聞いてたが、尋常じゃない」


「う・・」


「レベル80のハイオーガと戦って、息も切らしてない。目を見て分かったでしょ。すでに俺達の処理、それしか考えてない」


「大丈夫よ。シドさん達にはエールを奢ってもらった恩がある。・・三男しか殺さない」


「ふう。命拾いした。一杯飲ませといて良かったよ」


カルゴ君はすべて撤回した。これで場は収まった。


けれど、カナワ領主は敵認定する。


イーサイド男爵家と揉めたとき、助けてくれたミハイルさんもきっと近くにいる。


必ず相談しよう。



◆◆◆

私とマヤは10階に上がらず、12階に降りた。


カルゴを遠ざけるためだ。


ここ1ヶ月は、ひとりになると声をかけられ続け、ストレスになっている。


ヤツの手下に、囲まれたこともあったという。


ま、そいつらはリュウとオーグでボコってるそうだ。


「ユリナさん。12階から下は何が出るんですかね」


「分かんない」


「へ?」


「魔物50匹が目標。遭遇したやつ25匹を倒す。引き返して往復で50にしよう。そんでもう一回、11階フロアボスを討伐して帰ろうよ」


「何だか、薬草採取にでも行くような軽さですね」


「てへっ」

「褒めてませんよ」


そこから14階の途中まで行った。


ノルマ達成に11日をかけた。


確か魔物のレベルは平均85。


オーガ、オオカミ、蛇、大トカゲ。価値がある。


マヤは最後の方、剣を振る音も変わってた。


最低でもレベルは45、うまくすれば50。


マヤは、恐怖心を隠し、必死に戦っていた。


リュウへの思いが伝わってきた。


チャンスを逃さない、気概を感じる。


恋に不器用なマヤと私。拳と剣で想いを伝授している。


そしてマヤ、優しいけど無器用なリュウに、思いを伝えるだろう。


それは、いつになるんだろ。


もしかしたら、一途なマヤにリュウの方から距離を詰めてくれたら、なんて期待してる。


まずは「暁の火」のリュウ、オーグ、ダリアを呼んでもらおう。


◆◆

まあ・・


乙女チックな考えもここまで。


私、手配されてるんだった。


ダルクダンジョンを出ると、領主が派遣したお迎え20人が待っていた。


日数もあったし、仕方なしか。


けどすでに、頼む前に教会暗部を仕切るミハイルさんも来てくれている。


彼はミール以上に強い。


戦闘になっても、マヤを守り切れる。


勝つ要素しか見当たらない。


私は腕組みをしてる。部隊リーダーらしき人に向かって言った。



「何か言う前に、これだけは把握して」


精一杯、低い声を出した。


「私はカナミール家の三男と敵対した。理不尽な内容で手配されてる」


私、高圧的だ。


「腹が立ってる。言葉を選び間違えたら、10階のオーガみたいに、マヤが・・」


マヤ、ん?ってなってる。


「マヤがミンチにするわよ」


貴族家のお迎えの人達、みんな真っ青になった。



マヤは、えええ~?ってなってる。



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