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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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122/188

122 涙が流れてた

ミシェル君を連れて逃げる。


イーサイド男爵家の領都まで来て騒ぎを起こした。混乱に乗じてしまえ。


サマンサさんに会いたいけど、状況が許さない。


接触すべきでない。とりあえず、街を出た。


追っ手はいた。そこには、マルコ君、師匠のミハイルさんが現れて、援護してくれた。


それに肝心な情報もくれた。もちろん、サマンサさんのこと。


実家のイーサイド家よりも、アリサの動向を把握していた。


カナワの街で冒険者になったこと。3年間は無事だったことを知っていた。


そして・・


あの日、行方不明になっていることを知っている。


リリオ君が旅の冒険者を装い、サマンサさんに悲しいお知らせを告げた。


アリサのために泣いていたそうだ。


本当の親ではない。けれど、肉親よりもアリサを気にかけていた。


「アリサ、あんたを愛してくれた人はいたよ。間違いなくいた・・」


ミール達には感謝しきれない。


サマンサさんは、この街に親族もいる。生活基盤もここにある。


今はそっとしておくのがベストだ。


ミシェル君を外を歩いている。オルシマ行きを勧めた。


海岸沿いに3キロほど歩いた場所にいる。



「ミシェル君。守ってくれてありがとう」


「あ、いや。ユリナさんってすごく強いよな。かえって俺が邪魔したみたいだ」


はにかむ横顔が、初対面なのに懐かしい。


「・・・え、ええと、オルシマに来て」

「え、なんで」


「私、ここの領主の長男にさっきのスキル絡みで狙われているの。あなたも巻き添えで捕縛されるわ」


「そんなことになってんだ」


「ごめんなさい」


「いや、謝ったりしないで。助けられたのは俺だから。こっちこそ、ありがとう」


OKをもらった。


ご家族の問題もない。


母親が2年前に亡くなり、今は身軽だと笑っていた。


血筋は薄くだがイーサイド家に繋がる。


「追放されたアリサとは、かなり遠いけど親戚だって聞いてる」


「だからミシェル君、なんとなくアリサに似てるのかな」


「俺のスキルのせいで母親が父と離縁してまで、男爵家と縁を切ってかばってくれた」


「うん、素晴らしいお母さんね」


「だけど俺自身は貴族と関わりがないEランク冒険者。本家の人間と会うチャンスもなかったし」


「そっか・・。アリサが家から追放されたことは?」


「・・聞いたことがある。すまん、俺も厳密にはイーサイドの血が入ってるのに、何もできなかった」


「別にミシェル君は悪くない」


「どうしたのユリナさん、じっと顔を見て」


「なんでもない・・」


彼もスキルのことで不遇続きだったろうに、すごく優しい。


同じ笑顔まで見せてくれて、アリサのことを思い出さずにいられない。


復讐にひとつの区切りがついた。そしてアリサを追放した人間の顔を見た。


無意識に押さえ込んでいた感情が、噴き出すようになった。


そんなときに、ミシェル君に出会ってしまった。


「アリサ・・」

「ユリナさん、どこか痛い?」


「何が」

「泣いてるから」


「思い出したの。アリサ、大好きだった」


私は彼の顔を見ながら涙が流れていた。気付かなかった。


「回復スキルがあるから、怪我はないよ」


「アリサ、大事な人だったんだね」

「うん」



言葉数が少なくなった。


1時間は無言。けれど気まずくはない。


グレイ司祭のジャッジメントを跳ね返し、ミシェル君に「超回復&破壊的絶対領域」を使った。


ミシェル君には、もう大きな手の内を見せた。


なのに、「超回復走法」は封印している。


使えば250キロ離れたオルシマの街まで半日で走りきれる。


歩幅を合わせてエールも飲まず、ゆっくり歩いている。


ふたりの時間を噛み締めている。


長い沈黙のあと、ミシェル君が口を開いた。


「・・本当に、俺がオルシマに行って迷惑にならない?属性も闇だし」


「大丈夫。私もお金を出して「ふーどこーと」を作るの。主力メンバーは魔力ゼロの女性3人と闇属性の男性1人なの」


「俺は冒険者を続けたいけど・・」


「その点は大丈夫よ。接点を持ってもらいたいだけ。とりあえず住むところも提供できるし、あなたの強化もする」

「強化?」


彼の自尊心は傷つけたくない。


注意しながら、私の特技を教えた。


スキルで他人のレベル上げの手伝いができる、と。


「前からイーサイド領を出ようと思ってた。ちょうど良かった」


「それなら・・」

「知り合ったばかりなのに、ありがたい。ユリナさん」


「歓迎するわ」

「追っ手が気がかりだかどね」




「問題ないよ」


「誰?」

「ミール、いたのね」


ミールが合流。私達がイーサイドの領都を脱出した後の事を教えてくれた。


教会暗部の大将、ミハイルさんが来て牽制してる。私達に追撃はないそうだ。


今回はマルコ君達20人の部隊を投入。


イーサイド家のアタッカーを戦闘不能にしたとのこと。


ミハイルさんを筆頭に戦闘に長けた面々がイーサイドの牽制。


また、アリサの追放に関わった母親は、胸の病気だそうだ。


絶対に治さない。それが復讐だ。


アリサが生きてたら、助けて欲しいと言われたのかも知れない。


「うん、アリサが生きてたら・・の話だよ」


ミハイルさん率いる「凶信者部隊」は、私の意思を尊重してくれる。


今後も、イーサイド男爵家の私への攻撃を食い止めてくれるそうだ。


今度は逆恨みで仕掛けられる可能性はある。私だけ狙うなら、追い返す。


それ以外の人に害が及ぶなら、戦うのみ。




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