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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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119 誰も喜ばなくても

イーサイド男爵家のことを心の中に封印しすぎて、肝心な人のことを忘れていた。


アリサの心の拠り所だった、育ての親ともいえるサマンサさんのことだ。


アリサが1人だけ、また会いたいと言った人。


不遇の子供時代を過ごしたアリサが私にも優しくしてくれた。きっとサマンサさんのお陰だ。


場合によっては、アリサのことを話さないといけないと思う。


そう考えると、気が重い。


モナの死をモナの親代わりだった孤児院のシスターに伝え時と同じくらいだ。


一人でイーサイド領に向かっている。・・つもり。


ミールには追従を断った。


私の身を案じて駆けつけてくれたマルコ達、新参の「闇属性」の若者5人もやめさせた。


彼らを巻き込みたくない。


道は東の海岸まで行き、海沿いを南北に走る街道を使う。


幅10メートルでメインの南北街道に比べたら狭いけど、そこを300キロくらい移動する。


早すぎるとジュリア殺しの犯人と疑われかねないから、急ぎ足くらいの早さで進んでいる。


日が傾く前に漁村を見つけた。村長さんに許可を取って、村の端っこで野営することにした。


が・・・。私にはさっぱりだか、恐らくミールやマルコは近くにいるのではないだろうか。


気配ゼロ。


「ミール、マルコ君、ほかのみんなも怒らないから出ておいで」


返事はない。いないならいい。


「いる・・。怒らないでね」

「ふえっ。いたんだね、ミール。それも20メートルくらいの近くに」


「うん、マルコもいるし、最近オルシマに来たばっかのメンバーもみんないる」

「え?」

「気付いてたかもしれないけど、7人いる」


「あ、ああ、そ、そうだよね」


誰1人として感知できず。闇属性の隠蔽力っておかしい。


みんな、私を心配して来てくれた。追い返すことはしない。


「マルコ君、おいで」


アフターサービス。マルコ君の右手をつかんで「なんとなく触診」。問題なし。


熱い視線を感じると、マルコが連れてきたオカザ、ドウブ、ホワロ、リリオ、バトダの5人が私達を凝視していた。


「ほ、本当にユリナ様は闇属性を気になさらないんだ。ミハイル師匠やマルコが言った通りだ・・」


リリオ君のつぶやきに、属性による差別は根深いと感じた。だけど、それだけじゃない気がする。


リリオ君の顔をじっと見てみた。そして気付いて首元を触った。


「な、なんでしょうか」

「あ、この首のところにある、黒い炎のようなあざはいつできたの?」


「これは、そういえばいつでしょうか。教会に引き取られて工作員として訓練していて、気付いたら・・」


これはきっと、魔法の呪縛。


黒いイメージが首から頭につながっている。思考をただれさせているのだろう。


完全な操り人形は工作員として役にたたない。だから軽い呪印を用いるのだ。


支配者に都合がいい因子をすり込んで精神支配をする方法がある。そうアルバさんに教えてもらった。


繰り返し「お前は闇で生きるしかない」と言われ続け、ただの光属性の人間に遠慮する人格を作るそうだ。


ふいに思った。


アリサは3歳で唯一の味方であるべき家族に「お前は劣等人だ」と言われ続けた。


彼女は、どんなに悲しくて苦しかったんだろう。


涙がこぼれていた。


「ユリナ様・・。なぜ泣くのですか。初めてお会いしたのに」

「ごめん、死んだ友達のことを思い出した。リリオ君も苦しかったんだね。今まで頑張ってきたんだよね。おいで、もう大丈夫だよ」


「あ、ありがとうございます」


『超回復』ぱちっ。


「あ、あれ?今まで普通だと思っていたのに、頭がクリアになった。な、なんだか心の重いものが取れたような」


残りの4人にも『超回復』をかけた。


「名もなき神が私に告げる。あなた方は呪縛から解放した。自由に生きさせよと」


飲みたくなってエールを出したら、リリオ君に聞かれた。


「さっきのが、祝福でしょうか」


「違うよ」

「祝福ではないのですか・・」


落胆している。


そうか、彼らの心を持ち直させるためには、「祝福」とやらまでやってワンセットなのか。


「祝福は、オルシマに帰ってからやろうよ!」


「え」

「こんな暗い海岸じゃない。冒険者仲間やらが沢山いて、明るい場所でみんなに祝ってもらうよ。私の中の「名もなき神」が、あなた方5人を歓迎してるわ」


「ほ、本当に?」

「まさか、私達のために」

「マルコ、本当だったんだな」

「うっ、うっ」


「神様じゃなくてごめんね。今夜は私やミールと飲むよ。私達の出会いに乾杯!」

「乾杯」


ちょっと緊張した。


◆◆◆

途中でオークを倒し、小規模集落を見つけたけどスルーした。


前に聞いたサーベルヘッドシャークの干物も手に入れ、平和な旅を続けて私はイーサイド男爵領に入った。


ミール達には先に行ってもらった。


隠密行動が得意な彼らが役目が欲しいと言うので、アリサが慕っていたサマンサさんのことを頼んだ。


普通に暮らしているならそのまま、何かあるなら保護してもらう。


◆◆

数日後。

オルシマでは見なかった、迎撃隊長の188センチ剣士が私を出迎えてくれている。


残り6キロの街道。道を封鎖して60人が集結。剣士45人、魔法使い15人の構成。こちらは1人で160センチの細身の女。気が緩んだのか私達に自慢げに話していた。


私は、もう覚悟している。


『超回復』を手にしたばかりの頃と頭の中身は変わらない。


だけど、同じ「劣等人」、そして虐げられた「闇属性」を守る。そのためにサルバさんに迷惑までかけて「ふーどこーと」まで作る。


彼らの共通点は、親の愛を満足に受けていない。


闇属性のせいで親と引き離された、身寄りがなかった、売られた・・


今回の旅はアリサのため。だげと、彼らとアリサが重なってしまう。






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