11 やっと帰れる
私を助けてくれるソフィーは、165センチのハーフエルフ。
ハーフエルフの最大の特徴。性別が男女両方を兼ねている。
下半身にも両方付いてるらしいが、見たことはない。
冒険者には色んな人がいるから、ハンデにはならない。
むしろ男女問わずモテている。
顔も整い、私との共通点は胸の大きさが普通というだけ。生き物として、違いがありすぎる。
「今回はAランク昇格のポイントを稼ぐために、同じ目的のBランク3人と臨時パーティーを組んで、貴族の依頼を受けたの」
「それが、この特級ダンジョン8階?オークしかいないよ」
隣街の貴族の長男が、結婚3年でまだ子供ができない。
強壮剤で知られる高レベルなハイオークの睾丸を依頼された。
捕獲に適しているのが、このエリア。
依頼は4匹分、タマタマ8個。
「あと1匹が捕まらないんだよね」
「あ・・」
「どうしたの?」
臨時パーティーを組んだ4人が、一斉にこちらを向いた。
「ここまで逃げて来るとき、冒険者の遺体を見つけて収納指輪を拝借したの。これって犯罪?」
ダンジョンで見つけた遺体の遺留品は、発見者に所有権があるそうだ。
縁がなさすぎで、そんな決まりも知らなかった。
「良かった。その中にオークが何匹か入ってる。それを見て」
私が出した、一匹だけ大きなオーク。それを見たソフィーは唸り出した。
「これは・・。ガンズ、分かる?」
2メートルのムキムキさんに話を振った。
「おお、これはハイオークじゃない」
「残念」
「ハイオークの上位種のオークジェネラルだ」
「違うんだ・・」
「けど、依頼はハイオーク以上のキンタマならOKになってる。これなら依頼達成の上にボーナスが出るな」
「なら、使ってよ」
「ダメよユリナ。普通に売っても、かなりのお金になるよ」
けど、早く地上に出たい。
「じゃあさ。このオークジェネラルは、私が地上につれていってもらう依頼料代わり」
普通に考えれば、私1人でダンジョン脱出は困難。安全の対価、つまり護衛料として考えると、安いものだ。
捕まえるのは大変だけど、魔物相手なら勝てる。
「ユリナがいいのなら、そうさせてもらう。みんな、それでいい?」
「うん、双方にメリットがあるね」
私と一緒に地上まで行ってくれるのは、土魔法使いソフィー、剣士ガンズ、水魔法使いリューイ、自称忍者のマリーで4人だ。
◆
日は暮れないエリアだが夜営をした。
「ユリナ、見張りありがとう。あと3時間休んだら出発するわ」
「うん。いつでもOKだよ」
「あなた、半月以上もダンジョンを彷徨っていた割には元気よね」
「えへへ」
「寝なくて大丈夫なの? 肌の色もピンクで艶々だし」
手を握られた。
「拾った収納指輪に食料も入ってたこ」
実は、スキルを得てから寝食は必須ではなくなった。
「超回復、等価交換コンボ」、全ての不調を治してくれる。
空腹と眠気も対象なのだ。
気持ちが疲れたときだけ、その場に座って、保存食を口にして眠った。
そして魔物に食いつかれるオリジナルの「モーニングコール」で起きていた。
私は、致命傷を負っても復活できる。
たった今、ソフィーの左手に少し異変を感じた。
彼女が私の手を握っているのは、右手なのに?
「ソフィー、左手の親指を見せて。傷がない?」
「ああ。これは料理番のときにナイフで付けた傷」
「戦闘じゃないんだ」
「戦闘では、近接型のガンズとマリーに打ち身があるかな」
「・・手を見せて」
「治せるの?」
「分からない。スキルを得たばかりだから、知らないことだらけ」
ソフィーの手を取って心の中で唱えた。
『超回復』
「あ、一瞬で傷がなくなった。ありがとう」
「良かった。効いたんだ。大した傷は治せないと思うけど、役立てるかも」
ソフィーに言って、他の3人の傷も治した。
マリーが左の耳から首にかけて青い入れ墨を入れていた。そこに変な反応があった。
「マリー、この入れ墨みたいなの消しても大丈夫?」
「・・無理だと思うけど、やれるならお願い」
『超回復』ぱちっ。
「うそ・・」
どうも入れ墨というより痣だったようだ。
消すとマリーにすごく感謝された。良かった。
ダンジョンを出る前に『超回復』を人に試せて良かった。
接触した相手の異常箇所が分かるのも収穫だ。
感謝され、もらったスープを飲んだら、暖かさが体に染み渡った。
「食」で心を満たされるとは、こういうことだった。
忘れてた。
◆
マリーは痣が消えて、かなり喜んだ。過剰なほどに守ってくれた。
そして、わずか2日後には、地上にたどり着いた。
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