表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/188

105 ランク降格の影響

ペナルティーのはずなのに、楽しみにしていた子供冒険者の引率。今回で2度目だけど、一緒に子供を護衛する「降格組」のジャンとレンの機嫌が悪い。



今回の子供は9人。


「どうしたの、降格男子が2人とも早く来て、心を入れ替えたのかな。前は遅刻ギリギリだったのに」

「なんでもねえよ」

「ちっ」


薬草採取地に黙って着いてきた。私が合流する前に何かあったのか、子供達がおびえている。

だから今日の薬草採取場所は私が選んだ、大きな枝が多い縦よりも横に広がった木が近くにある。


子供達が薬草を採り始めて30分、ジャンとレンが近づいてきた。

「おいお前、ギルドで俺達のことを何か言ったか。ギルマスや副ギルマスとも知り合いらしいな」


「さぼってるとか、何も言ってないよ」


ジャンに胸ぐらをつかまれた。


「やっぱてめえか。ギルドに奉仕作業の態度が悪いって密告があって、奉仕期間が延びたんだよ」


「そうなんだ。基本的に開けた場所でやってるから、見た人から報告があったんでしょうね」

「いけしゃあしゃあと!」


ジャンは私の胸元をつかんだままだ。頭の中までレベルが落ちている。


私は不適格な行動で降格だけど、ソロの討伐条件を満たしてCランク試験を受けた。その話はしたはずなのに、私の首元に「無防備な指」をさらしたままだ。


ミール直伝の技がある。ジャンが胸ぐらを右手でつかんでいるから、私は自分の右手を彼の手の上にかぶせる。そしてジャンの右手小指をつかむ。


ミールが丁寧に教えてくれた。「回しながら上にひねったら、指が折れるんだよ」



ボキッ。

「あ、本当だ~。ミールが言う通りだ。ノカヤダンジョンのオークと違ってもろい」


「あぐぐぐう」

「ジャン!」


ずっとこっちをうかがっている4人組がいる。ジャンの声でこちらに歩き始めた。盗賊殺しから勘が鋭くなっているのだろうか。危険に陥ったときの準備をしていて良かった。


収納指輪から、子供達の面倒をみることが決まってから買ったハシゴ3本を出した。5メートルで鉄製のお高いやつ。緊急避難用だ。


「みんな。木に登って、枝の又の間とかにしっかりつかまっていて!」


ジャン、レンに合流した男達は子供が木に避難するのを見ている。余裕・・。そうか子供が木に釘付けになっている限り、私は逃げられないと思っている。


なめられていて良かった。


「あなたたちパーティーで、計画的な犯行ね。狙いはこの収納指輪?」


「Eランクでソロの女が、大容量の収納指輪を持ってたら危ねえぜ」

「換金履歴も桁が違うしな」

「余計なお世話。それに自衛ぐらいできるわ」


「みんな以前は恐れてたけどな。実際には戦えないから、Eランクまで降格したんだろう」


「ああ、そういう「都合のいい予断」で私を狙ってきたのね」



そうか、私のように一度目立った人間がランクダウンすると、「獲物」と思われてしまうのか。


どうせソロだからEランクでいいやと思ったのは間違いだったようだ。


遠くからミールが見ている。だけど走ってこない。可愛いミールだけど「ニンジャ」という珍しくて強力なスキルを持っている。彼女が来ないということは、私1人で子供を守りながら戦えるということだ。


ハンドサインで「逃げるやつがいたらお願い」。「分かってる。夕飯はオークシチューがいいな」ハンドサインで帰ってきた。


「ここで私を襲ったら、ギルドに帰ってただじゃすまないわよ」

「おう、どうせパーティーから2人も降格したんだ。ばっくれるんだよ。その前にいいもん見つけたからな。お前の持ち物をもらって、南から国境でも超えるさ」


私は久々に両手にビス付き手甲スタイルで、真っ直ぐに175~185センチの男6人に向かって走り出した。


「とりあえず女を捕まえるぞ」

「来い」


私よりも強いが、ランクは中級ダンジョン中層に現れたビッグチキン程度の強さ。


つまり。


ばきっ。ばきっ。

「ぎゃっ」


押され気味でもはじき飛ばされず、クロスカウンターが入る。


『超回復』


盗賊の討伐から、幾分か残酷になったかも。


全員が剣を抜いたが、気にしない。

さくっ。ぼきっ。ざくっ。ぼきっ。


「「等価交換」『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」『超回復』」


ミール先生のハンドサインに従い、狙うのは腕。なぜかは聞いてないが、信用して実行する。


1人だけミールの方に走って行って転ばされた。肩から変な音が鳴っているが、気のせいだろうか。


「うがああ」

「いでええ」

「誰だよ、こんな女は楽勝って言ったのは」

「俺の腕が折れてる」



さて、自粛期間の私闘は不味いが、子供をはじめ、私が襲われる場面を見た人が何人もいる。大丈夫だろう。



「ユリナ様、こいつらどうする?」

「捨てていくわけにもいかないし、やってみてから後処理が大変だって気付いた」


「殺して捨ててくる」


「ダメだよ、ミール。せっかく人を殺さずに裏世界から抜け出せたのに。あなたには殺って欲しくない」


「ユリナ様も人を殺したから、私も同じように経験したい」

「盗賊は手配されてたからいいの。こいつらまだ、冒険者だから不味いよ」

「隠滅くらい簡単なのに・・」


可愛く拗ねるミールの頭を抱いてほっこりするが、盗賊冒険者達が青ざめている。



「はっ」

木の上に避難させた子供達がこちらを見ている。


貧乏そうで情けないユリナお姉ちゃんのイメージが崩れる寸前だ。早く決着をつけないと、子供達が寄り付かなくなる。



結局、不良冒険者から武器を取り上げて、オルシマと反対側に逃がした。奴らの足を無事に残しすように戦わされたのは、この為なのだと分かった。


今後も「絡まれ&バイオレンス」を繰り返すのかと思うと、少し気が重い。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ