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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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104 Eランク降格

試験中に勝手な行動を取り、盗賊をたくさん殺した。


救出できた3人の女性に、多くの犠牲者が出ていると聞いて我慢できなくなった。


本当に、盗賊団を壊滅できたのか分からない。情報を吐かせず殺したことでも、私にCランク冒険者の資格はなかったのだろう。




「分かっていても、降格決定なのにギルドに帰るのは足が重いよ」


森を出て、オルシマまで10キロな場所までは歩いた。道端で、早くも4杯目のエールを飲み切った。


今なら15分で走り切れる距離なのに、1時間しても飲んだくれている。



「ユリナ様、帰ろう」

「うおっ、どっから?」


突然にミールが現れた。


「迎えに来てくれたの?」


「うん。ユリナ様がまた人助けしたけど、一緒に試験を受けた人のために表面上は悪役になった。私知ってる」


「ミ~ルうう、あんたがそう言ってくれれば救われるよ」


ミールに手を引いて立たされ、10キロの道を30分で走って帰った。


私は「超回復走法」だったのに、ミールは素で走っていた。


帰ってギルマス室に呼ばれた。ギルマス、副ギルマス、2人の試験官も一緒だ。


「ユリナ、Eランク降格だ。盗賊絡みで試験官を入れた21人に大きなリスクを負わせる選択をした」


「・・・反省して1年間、Eランク冒険者として励みます」


「3人の女性救出については・・」

「それは、謎の冒険者の仕事よ」


1年間のEランク固定、2ヶ月間は週に3回の奉仕作業。素材買い取りの2割カットだ。


功績リセットも覚悟していたか、「ゴブリンキング単独討伐」、「上級ダンジョン単独踏破」のダブル功績は大きく、1年間すればCランク昇格。


そのままBランク受験資格も得るそうだ。



「すまんな。個人的には恩があるのに・・」


「ギルマス、納得してるよ。男爵家での一件が先にあったし」


ギルドが理不尽な貴族相手に喧嘩してくれるってことは、厳しい義務があって当たり前。


一緒に試験を受けたメンバー19人は無事にCランクになった。


救出した3人の女性は元の村に帰りにくいらしい。なぜかなんて聞けない。


盗賊討伐の報奨金と砦から持ってきたお金も渡してある。


それにまだ20歳前後でやり直せる。副ギルマスとガノン君のパーティーが面倒を見ながら、オルシマで暮らす。


冒険者になるか、街で仕事を見つけるか決めるそうだ。


「副ギルマス、奉仕作業って、何をやればいいのかな」

「ユリナ様に適した奴があります」


「もう、ユリナでお願い。違反者に様つけなんかしたら、反発者が出ますよ」


「だね。・・ユリナには、成人前の冒険者の付き付き添いではどうだろう。薬草採集やウサギ捕りの手伝いだ」


「はい了解です」


ラッキーだ。週に3回のどぶさらいとかだったら、泣くとこだった。


気持ちは意外と吹っ切れている。


結果として3人の女性を連れて帰ってこれた。


試験失敗だから、しばらくはギルドの食堂でエールが飲みにくい立場になったくらいだ。


これからは週の3回は子供のお供。4日が自由行動になる。


◆◆◆◆


奉仕作業の初日だ。冒険者3人で11人の子供の面倒を見る。


街の子供達の中で、家庭の事情などから稼がなければならない者もいる。


領主の男爵はいい統治者だけど、街の隅々までは目が届かない。


今回は最年長が12歳。


10歳でギルドカードを作ったばかりの、Fランク冒険者サリカちゃんが最年少。それに付いてきた弟のマハル君7歳も薬草採取をしてもらう。


病気の母を助けるために兄弟で活動している。


「押し掛け回復ユニット、ホネマスクの出番だね。メルバさんに頼も」


子供達は頑張る。私も薬草採集ならアドバイスができる。むしろ、2年間は専門でやっていた。


いいムードだ。


だが、私と同じ「降格組」の男子2人ジャンとレンにやる気がない。以前の活動域も違いすぎて、初対面だ。


「あーあ、ついてないぜ。ビッグチキンにやられて寝てる間に依頼の期限切れだよ」

「早く、あと1か月たたねえかな」


「遊んでてもいいけど、魔物が出たときはきちんと子供達を守ってよ」


この辺りは時折、ゴブリンと一角ウサギが出る。薬草が豊富な分、生態系の動きも活発なのだ。


「お姉さんはアレだろ。Cランク試験をばっくれて降格だろ。俺らよりひどいぜ」


こんな感じで話にならないが、職務放棄はしないからゴブリンへのけん制程度にはなる。



子供達が1時間ほど薬草を摘んで、少し休憩。


休憩の2回に1回は大量に用意したパンと、ドラゴンパピーを卸しているグルールさんとこで仕入れた干しオークを子供に振る舞っている。


私自身が親を亡くしたあとにカナワの街で多くの人に助けられた。


だから助ける側に回れる今、子供達には甘あまで接したいのだ。


「おいしい」

「だね。マハル」


サリカちゃんはそう言いながら、こっそりパンと干しオークを袋に入れている。


母親に持っていくのだろう。


だけど私が余計なことをする必要もなく、横の子供がサリカちゃんにパンを分けてあげている。


いい光景だ。


むやみに物をあげればいいというものでもない。子供への接し方は微妙に難しいのだ。


あっという間に最初の3日が過ぎた。


一緒に付いてきた薬草採取者の中に3人組の魔力ゼロ人間がいた。


私と同じ劣等人。もちろん歓迎した。


カナワの街と同じく、寛容な人が多いオルシマでは、楽ではないが食っていけるそうだ。


私は「後天的スキル」を得たことになっている。奉仕作業期間を終えたら、ご飯に行く約束をした。



夜中を待ってメルバさんと「ホネマスク」活動開始。


サリカちゃんとマハル君のお母さんを押しかけ回復で治し、干しオークを大量に置いてきた。


間の4日間は2日休んで、2日は鳥ダンジョンのビッグチキンとビッグウズラ地帯で、子供達にふるまうための鳥肉を大量に仕入れた。



時に人助け、時に冒険、のんびりとやっていくしかないかな。


だか、面倒ごとは次々と沸いてくる。



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