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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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101/188

101何を勘違いしてたんだろう

Cランク試験、全4日間の2日目。


盗賊の潜伏地点を調べることになった。


リーダーを申し出るだけあって、ガノン君の指示は的確だった。


年上の人間の方が多い計20人という大所帯で、本来の仲間の4人をひいきせず、適材適所に振り分けた。うまく部隊を5つ作り、盗賊の調査をやっていく。


私は後方支援だ。ガノン君の温情だ。彼はいい人間だった。


なぜなら、私は早くも2日目朝に失格寸前なのだ。


はっきり言って役に立っていない。


木々の間を隠れない。服装は音がする鎖かたびら、キラキラでボロボロのミスリルタンクトップ。


道に迷う。休憩でうっかりエールを出す。テントが建てられない。野営地の痕跡を消せない。


まだある。


力任せに冒険してきたツケが回ってきてる・・


薬草採取だったころ猛獣を警戒していたから、静かに歩くところだけほめられた。


「ガノン君ごめんね」

「まあ、向き不向きがあるっす。それを補い合うのがパーティーですから」


2歳年下の男の子に慰められている。


「申し訳ない」

「いざとなったら俺と一緒に前衛やってもらいますから」


そこ得意。言葉に甘えるしかない。



昨日のうちに、盗賊が砦から出て通過するルートを確認した。夕方に話を統合して、警戒が薄い部分を見つけた。


今日から盗賊の砦の規模、拠点の形と侵入口、人数を把握する。


中にどんな職種の人間がいるとか、持ち物、人質まで分かれば、加点がある。


冒険者は試験官を除いて20人。


敵の戦闘員を少人数に分断できるなら、捕縛等も検討してよい。


みんなテキパキと台本があるかのように動く。


私は盗賊に見つからない場所を聞いて、全員の寝床を作ったりしてる。



私はゴブリンキングを倒している。


なのでギルドの規定により半年後、つまり登録一年を越えれば、自動的にCランクになれる。


だけど、きちんと課題をクリアして、普通のCランクになりたい。


早くもトロル退治の討伐隊依頼が、打診されてる。


特例昇級↓魔物まみれ↓デストロイ一色。そんな冒険者ライフは嫌だ。


◆◆

「まずいぞ」


試験開始から3日目の夕方になって、2組の調査隊から報告があった。


今回は12人の盗賊がいると聞いたのに、確認しただけで26人。


廃村を利用した8軒の家に武器を運び込んでいる。


ゼル試験官、モエバ試験官は口を開かない。


任務中にハプニングは当たり前。リーダーガノン君も分かっているから、試験官を見もしない。


「人数が膨れ上がった。最低26。盗賊の職種は分かるか」


「魔法使いの気配が3人。属性不明」


「武器はショートソードが中心。数は確認できないが弓矢もあり」


「リーダーと思わしき人間、他4名は確実に我々以上の戦力。10人が我々と同等。残りは不明です」


「よし。本来なら明日の朝まで監視だが、危険度が増した。方針を決めよう」


「あの・・、もう一点、確実でない情報ですが、いいですか」


「ツインズ」の片方だ。


「何でも言ってくれ」


「武器と一緒に盗賊の砦に運び読まれた皮袋に、生き物のようなものが入っていました」


皮袋からの声。


女性が助けを求めるような声に感じたという。


だが、確実ではない。

その情報の精度では、誰も動けない。


武器庫の場所は、砦に入って左奥。私達の監視地点から、見えにくい。


「はい、その近くの小屋に運び込まれました・・」


「貴重な情報をありがとう」


行って確かめたい。私なら行ける。


だけど、みんなが危険にさらされる。


ガノン君が決を取った。


「探索予定は明日まで。だが敵戦力が増えた。我々で対処できるレベルを越えている。監視を続けるか撤退か、決めるべきだと思う」


「リーダーの判断はどっちだ?」


「これは、試験を越えた事態だ。全員が同じDランク。俺の独断で決めてはいけない。決を取りたい」


人の意見に流されないように、目をつぶって挙手。


全員一致で「撤退」


試験官は何も言わない。



迅速に荷物をまとめて歩き出したが、全員の表情は暗い。


恐らく撤退の判断は正解。


冒険者としては、ギルドに帰り討伐隊を組んでもらうことがベストだ。


全員合格だろう。




捕まった人がいると決まった訳ではない。だから、慌てる必要もない。


最低点の私も、ここから無事に帰れば、討伐履歴が加味されCランク。


半年を待って登録から最短の1年でBランクも可能だ。


回復スキルを嗅ぎ付けても、有力者や教会勢力も私に手を出しにくくなる。


冒険者として判断は間違っていない。


本当に盗賊に捕まった人がいたとしても、「ツインズ」に罪はない。責任はない。


何ひとつ間違ってない。


オールDランク戦力で考えたリーダーガノン君の判断も完璧だ。


「ツインズ」の2人を見ると顔が青い・・




「あ・・」


何が間違っていないだ。


私はジュリアを襲撃した。


ジュリアは火魔法適正A、冒険者Aランクの美しき化け物。悔しいが、最後まで輝いていた。


劣等人の私には、ジュリアが輝いて見えた。


憧れていた。


私も強力な力を手に入れた。


私も同じように輝こうなんて、思い始めていたのだろうか。


それともジュリア暗殺に成功し、ジュリアより強くなったとでも思ったのだろうか。


ねえ、私・・



ジュリアが輝いた裏で、何をやってたか知ったよね。


「輝くために切り捨てられた者の中に、自分もいたよね」


廃棄されても・・目の前で苦しむナリスを助けたかった。


だから、『』の中に「超回復」を入れてもらったくせに。


何をためらっていた。


馬鹿だろ。


すでに人としての『ことわり』から外れかけているくせに・・



「ユリナさん?」



街道から2キロ、森の中で私は立ち止まった。



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