10 冒険者ソフィー
高ランクのダンジョン8階。私のことを知ってる冒険者に会った。
土魔法の適正A、昇格間近のBランク冒険者ソフィーだ。
ダンジョンの中で顔見知りに会うこと自体、不思議じゃない。
だけど、ここは特級ダンジョン8階。
来れる人間は限られてる。
私は初級ダンジョン2階でさえ危ない、Eランク。
さらにソロ。腰にぼろ布一枚。プラス剣1本。
場違いなのだ。
「ユ、ユリナ? なんで半裸でこんなとこにいるの?」
ジュリアに嵌められて仲間を殺された。
スキルに目覚めて、ギリギリ生き残っている。
本当のことを打ち明けたい。
だけど、怖い。
私達を騙したジュリアは、無能と言われた私達に良くしてくれた。
そうして油断させて、ダンジョンに連れていって仲間を殺した。
ソフィーもジュリアと同じくらい、私達4人を気遣ってくれた。
普通に考えれば、彼女を頼るべき。
だけど、信頼してたジュリアに裏切られた。ソフィーに出会ってみると、彼女まで怖い。
まさか、ソフィー・・
ジュリアの依頼で私を捕まえに来た?
私の必殺コンボ。魔物には強い。だけど、人間なら破れる。
私は焼かれようが斬られようが『超回復』が使える。簡単に死なない。
だけど、大きな弱点がある。
「等価交換」で有機物を使って体を修復する限り、無敵ではない。
例えば鉄の檻。私が体を修復する「栄養」がない場所で拘束。
そこで消滅するまで焼いたり切ったりすれば死ぬ。
それに気付かない魔獣だから、どんなに強くても倒せた。
カルナ戦のあとに自分の無謀さに気付き、恐ろしくなった。
ソフィーを見て足が震える。
「こ、怖い、怖い怖い」
逃げようと思って力を入れた。ソフィーの姿がブレた。
そう思った。ほんの一瞬だ。もうソフィーは、私の目の前にいた。
魔法使いなのに、速すぎる。
硬直して肩が震え始めた。
だけどソフィーは私の肩に、そっと手を乗せてくれた。
優しい。
不覚にも涙が出た。
「ユリナ、行方不明になってたと思えば、なんでこんなとこにいるの?」
「あ、あの、ジュリアが・・」
「ジュリア? あいつに何かされたのね。やっぱ、嘘の報告をギルドにしたんだ」
ソフィーが知ってる話はこうだ。
ジュリアら6人が、私、アリサ、モナ、ナリスを雑用係として、ダンジョンに連れて行った。
その日の内にジュリア達が帰ってきて、探索失敗を報告。
アリサ、モナ、ナリスが岩トカゲに奇襲されて死に、ユリナは逃げて生死不明と申告した。
ユリナを助けるため、ジュリアが費用を捻出。
風のカルナをリーダーに探索隊が組まれた。
ソフィーは臨時パーティーを組んで、カルナ達の2日後にはダンジョンに潜ったため、結果は知らない。
話を聞いたけど、まだ迷っている。
「超回復」のことをごまかしながら、これまで半月以上のことを説明できるのだろうか。
「ソフィー、ところでジュリア達6人はどうしてるの?」
「あなたが行方不明になった次の日から、カルナの帰りを待たず、5人で街を出たわ」
「そう。奴は罪を追及される前に逃げたのね」
「ユリナ、さっきの質問。なんで、こんなとこに1人でいたの?」
1人で地上を目指しても、いつになるか分からない。
さっきの優しい指の感触が、肩に残っている。ソフィーに賭けてみる。
「私、逃げてない。1階に、10階層まで見える断崖絶壁があるでしょ。あそこから落とされたの。仲間3人は殺された・・」
「え・・どうやって助かったの?」
「死線を越えたとき、自己回復スキルに目覚めたの。体を治して、魔物を避けながらギリギリで生き延びてきたの」
「そう、大変だったのね。私達と一緒に来て。依頼の品がもうすぐ揃うから、地上まで送り届けてあげる」
良かった。
ソフィーに会えたのは偶然のようだ。
半月ぶりに、少しだけ気持ちを緩められた。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
アルファポリスで先行しています
読んでいただきありがとうごさいます