銀の爪
人それぞれの生き方、
人それぞれの愛し方。
それでもあなたには、
ありきたりなまま。
許されないこと、
自分勝手なこと、
あなたを思うたびに、
考えてしまう。
オレンジと銀の爪に、
何を信じて、何を求めて、
そこにいればいいのか。
わからなくなった。
唇に触れるものが
海になったとしても、
あなたを奪えないのは、
自分の力の無さ。
悔しさが溢れてくる。
肌からは溜息が出る。
触れると濡れている。
あなたが垂れてくる。
その愛しき水の香りは
いつの時も甘くて、
無理を押しつける人々が、
無性に憎くなってくる。
遅くに生まれた純愛に、
温もりを得るようで、
愛しさの言い訳すら消えた。
いい年をして恥ずかしい。
人それぞれの死に方、
人それぞれの憎まれ方、
どこかであなたと、
暮らしてゆくだろうか。
理不尽なること。
合点のいかぬこと。
あなたを見つめるたび、
考えてしまう。
オレンジと銀の爪は、
何を語って、何を守って
そこにあったのか。
今もわからない。
知りたいから、
いつの日か気が捻じれて、
あなたをか、誰かをか、
殺めるような海もある。
苦しさが増えてくる。
夢だけは持ち続けて、
言葉ならまだ生きる。
あなたに燃えている。
どうかきつく抱いて、
いつの時も芳しく。
正義を振りかざす人々が、
辛く悲しくなってくる。
今は詩歌を生む情愛に、
古典の意義を知り得て、
人それぞれの、人の世に、
あの爪の色、麗しい。