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9 お風呂

「そんなに湯船を警戒しなくても何も出てきませんよ」


 全裸のお姉様がお風呂のお湯を指で突いては、後ろに飛び退くを繰り返している。驚くのは後ろに飛びのいた際、垂直の壁に当たり前のように着地して、そのまま立っていることだ。


「お姉様、それ、魔法なんですか?」

「GA? A……(フルフル)」


 どうやら違うようね。お父様の話ではお姉様は倒した魔物を取り込んでその力を使えるということだけど、それには身体的特徴による能力も含まれているのかしら? 例えばお姉様がヤモリに似た特徴の魔物を取り込んでいたなら、壁に立つくらいわけないわよね。


「まぁ、何にしろそんな所にいたら体は洗えませんよ。ほら、お姉様、降りてきてください。髪を洗いますから」

「UU」


 お姉様ったらあんなに顔を顰めて。……そんなに嫌なのかしら? 昔のお姉様は長湯するタイプではなかったけれど、少なくともお風呂を嫌ってはいなかったと思うのに。


 魔の森でお風呂にトラウマが出来るというのも変な話だけど、本気で嫌がっているようだし、今日のところは体をサッと洗うだけで湯船はまた今度にした方がいいかしら? 今のお姉様なら風邪を引くこともないでしょうし。


「はい。じゃあお湯をかけますよ」


 私は渋々と言った様子でバスチェアに腰掛けたお姉様に湯をかける。


「GUU」

「ちょっ!? お姉様、それやめてください」


 水に濡れた犬みたいにお姉様が体をブルッと震わせたら、凄い勢いで水気が飛んでいった。


「もう。ほら、もう一度かけますからね。今度は動かないでくださいよ」

「UU~」


 とっておきの石鹸でお姉様のボサボサになっている髪をゴシゴシと洗う。お姉様はその間ーー


「A、A、A、A、A」


 と、嫌がっているのか喜んでいるのか今一つ分からないリアクションをしていた。


「よし。綺麗になった。……けど、凄い癖毛」


 濡れているのにぴょんぴょんと立つ髪の毛。この癖毛を直すのは凄い苦労しそうだ。


「あとは体ですけど、自分で洗えますか?」

「GA……(コクコク)」


 タオルを手に取るとサッと体を洗うお姉様。もうちょっと念入りに洗って欲しい気もするけど、今日のところは何も言わないでおこう。


「それじゃあお姉様、上がりましょうか」

「GA?」


 あら? この反応。もしかして湯船に入るのを覚悟していたのかしら?


「お風呂嫌いなんですよね? だから今日は湯船に浸からなくてもいいですよ」

「GA。……(フルフル)」

「お姉様?」


 てっきり喜ぶと思ったのに、何故かお姉様は湯船を指差してその場から動こうとしない。


「……ひょっとして私に入れとおっしゃってるんですか?」

「(コクコク)」


 確かにこのまま出たら湯冷めしてしまいそうだと思ってたけれど、まさか今のお姉様に気遣われるとは思わなかった。


「ふふ。それじゃあお言葉に甘えて。あっ、勿論お姉様も一緒に入ってもらえますよね?」

「UU~」


 ちょっと嫌そうな顔をしたものの、お姉様は湯船に浸かってくれた。そして私達は体の芯が温まるまでお風呂を楽しむと、夕飯を食べて、昔のように子供部屋で一緒に寝た。ベットは今の私たちには少しばかり小さかったけど、そんなことは全然気にならなかった。

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