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7 強さの秘密

「さぁ、お姉様。こっちです。この部屋、あの時のままなんですよ」


 ヘレナお姉様の手を引っ張って十歳の時に二人で一緒に寝起きしたかつての子供部屋へと入る。


「懐かしいでしょう? ほら、このヌイグルミ。お姉様が引っ張って壊したものをお母様が塗ってくれたやつです。覚えていますか?」

「G、A」


 私からヌイグルミを受け取ったヘレナお姉様はそれをジーと見つめる。


 良かった。やっぱり覚えているのね。過去を懐かしんでいるお姉様の邪魔をしたくないし、今の内にお父様からの封書を見てしまおう。……えっと、何々?


『シルビィ、この手紙を読んでいるということは無事にヘレナと再会できたようだな。私の怪我について聞いていると思うが、実は私は定期的に魔の森にヘレナを探しに入っていた。その日、予感があったのか私は普段はしない無理を重ねていつもよりも森の奥にーー』


 お姉様がヌイグルミを置いて室内を移動し始める。今のお姉様から目を離すのはちょっと不安だから、このあたりは読み飛ばした方が良さそうね。


『ドラゴンに襲われた私を助けたのはヘレナだった』


「ドラゴン!?」

「GA?」

「お姉様、ドラゴンと戦ったんですか?」

「a、a……(コク、コク)」

「そ、そんな何でもない事の様に頷かれても」


 ドラゴンといったら魔物の頂点よ? 魔族だって簡単に手を出せない最強存在なのよ? それを……一体どうやって?


 私は更に手紙を読み進めた。


『どうやらヘレナには倒した魔物を取り込むことができるユニークスキルがあったようで、その力を使って魔の森で生き延びていたようだ』


「ユニークスキル!? 実在してたなんて」


 魔法とは違い後天的に獲得することができない特別な力『スキル』。スキル保持者は珍しくはあるけれど、探そうと思えば探せないことはない。でもユニークスキルは別だ。世界中を探してもユニークスキル保持者は五人といないと言われ、現代において確認されているユニークスキル保持者は一人もいない。


 ううん。この場合はいなかった、と言う方が正確かしら?


『ヘレナの体の中にはドラゴンを含めた数多の魔物が封じられており、それらはそのままヘレナの力となっている。恐らくは、いや、間違いなくヘレナはこの地上で最強の存在だ。魔族とて今のヘレナには敵うまい。ヘレナがうまく喋れないのも自分の力を制御するのに意識の大半を割いているからだろう。戦いから離れ、力を安定させることができればヘレナは言葉を取り戻せるはずだ』


「……良かった」


 色々驚くことはあるけれど、お姉様とまたちゃんと話せるようになる。それが何よりも嬉しかった。


『ヘレナの力が知れ渡れば多くの者がその力を利用しようと近付いてくるだろう。そうならない為にも、ヘレナの力をうまく隠してくれ。一人では大変だろうと思うのでガルーダ辺境伯に頼んでロイ君をそちらに向かわせる。お前達はよく三人で遊んでいたからヘレナも喜ぶだろう。それと最後にヘレナはお風呂に入るのを嫌がる。その辺りもしっかりと直してやってくれ。怪我が治り次第私もすぐに戻る。それまで頼んだぞ』

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