20 予想外
「はい、そこまで」
ロイとクルス君の戦いが終わる。決着は付かなかったけど、どちらも凄かった。
「お姉様、ロイ凄く強くなっていましたね」
『お姉ちゃんの方が凄いよ!』
「……いや、変なところで対抗意識出さないでくださいよ」
相変わらずお姉様のこだわるポイントはよく分からないわ。
「やるじゃねーか。ただの青二才じゃないようだな」
「君こそ、勝てると思ったんだけどね」
ロイとクルス君が握手を交わす。男同士の友情って何か良いわね。
「さて、では次の試合ですけど……」
「GA」
お姉様が手を上げる。
「……ヘレナさん、本当に大丈夫なんですか?」
『ここから始まる私の伝説』
「お姉様はどうしてそんなに伝説を始めたいんですか?」
「まぁ、ヘレナなら伝説になりそうな気はするけどね」
「伝説って、おもしれー女だな。何なら俺が相手をしてやろうか?」
冗談だと思ったのかしら? クルス君が無謀な名乗りを上げる。
「いいえ。私がしますわ」
「おい、ロネンサ。横槍かよ?」
「横槍? 貴方はさっき戦ったばかりでしょう。でしゃばらずに引っ込んでなさいな」
「……ったく、わーったよ」
「それで良いのですわ。さぁ、私と勝負しなさいな」
不敵な笑みを浮かべるロネンサだけど……勝負になるのかしら?
「お姉様、あまり本気を出さないでくださいね」
「GA」
「あら~。すっごい自信ね~。ロネンサちゃんはかなり強いのに~」
「ミララ先生!?」
驚いた。いつの間にこんな近くに?
「はい。これはヘレナちゃんのリング。私の魔法がある限り怪我はしないから、気楽に戦ってね~」
「……」
あら? お姉様ったら、ロネンサの次はミララ先生を見つめて、先生の桃色の髪と瞳が珍しいのかしら?
「ほら、お姉様、ロネンサが待ってますよ」
「GA」
そしてお姉様とロネンサが向かい合う。
「ふふ。逃げなかったのは褒めてさしあげますわ。自称天才さん」
どうしよう、ロネンサに自信がありすぎてちょっと可哀想に見えてきたわ。ロネンサのことはあまり好きではないけれど、試合の後は優しくしてあげようかしら。
「それでは二人とも準備はいいわね。……初め!!」
その合図と共にドカッ!! と膝が顎に入って大きく上半身が揺れる。ロネンサの……ではなくお姉様の。
「え?」
予想外の展開。というか翼!? 何でロネンサの背中に翼が。
「死ぬがいい、偽王よ!!」
黒い炎を纏ったロネンサの拳がお姉様を吹き飛ばした。
「え? へ? ま、魔族!?」
ロネンサは魔族だった。