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15 怖がらせる

「初めまして美しいお嬢さん。私はロロド、知っているとは思うが、この国の王子だよ」


 ロイや私が何か言うよりも先にお姉様へと話しかけるロロド王子。この王子は一体どんな頭をしているのかしら? 散々化け物呼ばわりをしたお姉様を口説こうだなんて。まさか……ううん。確実にお姉様がお姉様だと気付いてない?


 流石のお姉様もロロド王子の態度には呆れ顔だ。


「どうしたんだい? ひょっとして私が王子だから萎縮させてしまったかな? そんなこと気にせずに好きに話してくれていいんだよ。私なら君にいろいろ教えてあげられる。そう例えば、決して近付いてはならない化け物のこととかね」


 そういって王子が私に視線をチラリと向ける。お姉様を化け物呼ばわりされるのは腹が立つけど、王子の間抜けすぎる行動のせいで怒りが湧いてこない。


 お姉様がスッと王子の真後ろを指刺した。


「ん? どうしたんだい? そっちに何かあるのかな?」


 素直にお姉様が指差した方向を見るロロド王子。お姉様はその間に結んでいた髪を解くと、それで髪を隠した。前に比べると髪質がずっと綺麗だけど、王子が化け物呼ばわりした時の姿に早変わりだ。


「何もないが……うおっ!?」


 驚きに腰が引けるロロド王子。そこでお姉様が……


「GA!!」


 と吠えた。


「ひっ!? ひぃいいい!? で、でたぁああああ!?」


 何度も転がりながら去っていくロロド王子。遠巻きに眺めていた生徒達はお姉様のあの行動で何故そこまで怖がるのか分からずに、キョトンとした顔をしている。


「GA」


 髪を元に戻して、得意げな顔で腰に手を当て胸を張るお姉様。


「もう、お姉様ったら。相手はこの国の王子ですよ?」

「その割にはシルビィ、ちょっと楽しそうな顔をしてるね」

「そ、そんなことは……って、ロイも笑ってるじゃない」

「うん。僕は楽しかったから」


 王子をおちょくることを全然恐れてない。本当、人って変われば変わるものだわ。


「そう言えばロロド王子、前回の一件を陛下に言いつけるとか言っていたけれど、結局アレ、どうなったのかしら?」


 あれからなんの音沙汰なく、また王子のことよりもお姉様の方がずっと大切だから、今の今まですっかりと忘れていた。


「何も言ってこなかったのなら、そう言うことなんだと思うよ。大丈夫。何があっても僕は味方だ」

「GA、GA」

「ああ、ごめん。僕達は、だね」

「もう、今は私だってお姉様を守れるんですよ」


 ただ泣くしかなかった十歳の時とは違うんだから。


『嬉しいけど、無理しちゃ嫌』

「ならお願いですから、大人しくしていてくださいね」

『超任せて』


 今一つ信用できないけど……この方がお姉様らしいわよね。


「じゃあ教室に向かいましょう。二人に友達がすぐ出来るといいですね」

「頑張るよ」

『百人希望』


 お姉様、何気に志が高い。でもお姉様なら案外やりそうだわ。


 そんなことを考えながら王子が先に逃げ込んだ校舎へと私達は入っていった。



 

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