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13 眼鏡

『いや~。こんな手段があったとは、文明の利器を侮っていたわ』

「お姉様」


 スラスラと書かれていく文字。そこに昔と変わらないお姉様の姿が見えた気がして、私は堪らなくなってお姉様を抱きしめた。


「GA!?」

「すみません。嬉しくて。それでどうして目を見せてくれないんですか?」

『それがさ私の取り込んだ魔物の中に魔眼持ちがいるのよね』

「魔眼……ですか」


 特殊な力を秘めた特別な瞳。魔眼の中には目を合わせただけで発動する種類も多くあると聞く。


「でもお風呂でお姉様の目を見た時は何も問題ありませんでしたよ」

『いつもは切ってるからね。でもコレ、ちょっとしたことで発動するから扱いが難しいのよ』

「そんな……でもそれだと」


 お姉様はずっと顔を隠して生活しなければいけなくなる。


「そう言うことならいいのがあるよ。ちょっと待っててくれ」

「え? ロイ?」

『どうしたの? 彼』

「さぁ、分かりません」


 部屋から出て行くロイの後ろ姿をお姉様と一緒に見つめる。


『ってかさ、ロイ。随分変わったわよね。最初誰か分かんなかったわ』

「そうですね。随分……格好良くなりました。って、なんですかお姉様。その顔は?」


 お姉様がニマニマと私を見てる。


『何々? 好きなの? シルビィちゃん、ロイのことが好きなの?』

「そんなんじゃありませんから」

「でもさ、昔から仲良かったじゃん」

「それはお姉様も一緒ですよね。お姉様もロイのことが好きなんですか?」

『も? 今もって言った』

「あっ、いや、違います。今のはそういう意味じゃなくてですね」

『ロイのこと好きなんだ。大丈夫。お姉ちゃんが協力してあげるからね』

「余計なことはしないでください。大体お姉様はーー」

「お待たせ。ん? 何を話してたんだい?」

「な、何でもありません!!」

「GA!?」


 私はお姉様から好きの文字が書かれた紙を取り上げた。


「GAGA」


 お姉様が抗議の声を上げるけど、ここで紙を返したらろくなことしなさそうだから、今は我慢してもらおう。


「えっと、良いのかい?」

「良いんです。ところで急にどうしたのですか?」

「うん。これを取りに行っていたんだよ」

「それは?」


 ロイが持っているのは何の変哲もないただのメガネだった。


「魔眼封じの眼鏡だよ」

「GA!? GAGA」

「えっと、ごめん。なんて言っているのかわからない」

「多分どうしてそんなものを持っているのか聞きたいんだと思います」

「GAGA」

「ヘレナの力のことは大公様の話で分かっていたからね。このメガネだけではなく一通りの封印具を持ってきたんだよ」

「UU~」

「ごめんよ、ヘレナ。必要がなければ使うつもりはないからそんな顔しないでくれないかな」


 お姉様を拘束するための道具を準備されていた事は正直面白くない。けどそのおかげでお姉様が顔を隠す必要がなくなるのだから何も言わないでおこう。


「ほらお姉様、さっそく眼鏡をかけてみてください。ミリア、悪いけどもう一度お姉様の髪をお願いしてもいいかしら?」

「畏まりました。ヘレナ様、失礼します」

「GA」


 再び顕になるお姉様の素顔。お姉様はロイから受け取ったメガネを掛けると、私の手から紙を取り戻してそれにスラスラと文字を書いた。


『どう?』

「よく似合ってます。何だか知的さが上がった感じがしますよ」

「うん。ヘレナが賢く見えるね」

『やだ~。褒められてる気がしない~』


 お姉様は日に日に社交性を取り戻している。この調子でいけば学園生活もなんとかなる気がしてきたわ。

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