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11 幼馴染

「ロイが?」

「ええ。先程。今は一階で奥様が相手をされております」


 ミリアの報告に私は手をパンと打ち鳴らした。


「お姉様、ロイですよ。ロイが来ました」

「GA?」


 エプロン姿で頭に三角巾をつけたお姉様がケーキを作っていた手を止める。姉妹仲良くケーキ作り。意外とお姉様の手際がよくて驚いていたところだ。


「ロイを覚えていますか? 昔はよく三人で遊びましたよね」

「GA~……A! U、UU……(コクコク)」


 良かった。お姉様も覚えているようだ。


 辺境伯の息子であるロイは少し気弱なところがあるけれど、とっても優しい男の子で、お姉様を失って塞ぎ込んでいた私を気遣って辛抱強く屋敷に通ってくれた。


「三年ほど前に領地に戻ってからは私も会えてなかったので楽しみです。さぁ、早くいきましょう。あっ、ロイをからかったりしたらいけませんよ」


 昔のお姉様はイタズラ好きで、よく私やロイを驚かせて遊んでた。私はともかくロイは気弱なところがあるので、お姉様のイタズラによく涙目になっていた。


「GA!」


 ヘレナお姉様は元気よく頷いてくださる。くださるのだけれど……怪しい。本当に分かっているのかしら?


 とはいえ屋敷に戻られてからのお姉様は変なイタズラなどはしてないし、この辺りお姉様も成長しているのだと思う。


 私はお姉様の手を取るとお母様がロイの相手をしている部屋へと向かった。


「お母様、ロイ、お待たせしました」

「シルビィ、それにヘレナ。久しぶりだね」

「え? 貴方、ロイなの?」


 濡れているかのように艶やかな黒髪。気弱ですぐに目を逸らしていた瞳には落ち着いた物腰と強い意志が宿っていた。


「シルビィ、なんですかその失礼な質問は」

「いえ、構いません。この三年で背も随分のびましたから」


 照れ臭そうに笑うロイ。身長だけでなく、全体的に格好良くなっちゃってる。


「UU~」

「ああ、ヘレナ。良かった。本当に」

「Uっ!?」


 すっかりと見違えたロイを繁々と観察していたお姉様。ロイはそんなお姉様の手を握りしめた。


「どれだけ心配したことか。大公様から話は聞いてるよ。君が言葉を取り戻すことができるよう、可能な限りのサポートをするから、遠慮なく僕を頼ってね」

「U、UU」

「ロイは学園でも貴方達を助けてくれる約束をしてくれました。学園で何か困ったことがあれば彼を頼るのですよ」

「え? お母様? 学園というのは?」

「貴族学園に決まっているでしょう。ヘレナをなんとか編入させることはできましたが、なにぶん出席日数が足りません。来週から早速通ってもらいますからね」

「ええっ!?」

「UU!?」


 私とヘレナお姉様が叫ぶ中、ロイだけが嬉しそうに笑っていた。

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