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第十二節
……眠ったか。
穏やかな寝息を立てながら、京介は眠っている。雪合戦したからか、かなり疲れている様子だった。暫く眠らせておいてやるか。
と言うか寒い。体が凍りつきそうだし、未だに指先の間隔が戻っていない。。けれど京介にブランケットをやったのは間違いだったとは思わなかった。私にも一応情があったのだな、と少しだけ自分が好きになる。非常用にカイロを取っていてよかった。すぐに背中や脇に貼り、極寒をしのぐ。
「それにしても初めてだな。京介が私の名を呼ぶのは」
いつも貴方とかしか言わなかったのに。それだけこいつが私に心を許してくれたということかね。まあきっと京介は意識していないだろうけど。
過去を回想し軽い感傷に浸っていると、ずきりと体に痛みが走る。いつの間にか慣れた、鳩尾を中心とした、ズキズキする鈍痛。
「……そろそろか」
私は引き出しを開け、一番奥に置いたポーチから中身を取り出す。
中に入っているのは、オピオイド鎮痛剤。かなり強い薬。水と一緒に飲み下した。
数分後、痛みがするすると引いていく。先ほどのは一体何だったんだろうと思うくらいに快調だ。
「……いつまでも隠し通せない。分かってたはずなのに」
何も知らずに呑気に寝ている京介を見、私は呟く。
別れのタイムリミットまで、僅か。




