第8話「リベンジオブデスロード」
マッドAIバイクの二人の再登場です!
届いた手紙のようなもの。それは果たし状であった。送り主は…
「マッドAIバイク…ってあいつらか!」
マッドAIバイク。2ヶ月前に高速道路でメドゥ達を襲撃、あと一歩のところまで追い詰めた強敵コンビである。
「内容はー?」
「ええと…『お前らにリベンジマッチを申し込む。指定の場所に行き、俺達の挑戦を受けろ!今すぐにだ!』だそうだ。」
「ふーん。どうするのー?」
「こんなもの受ける義理もないだろ。わざわざ危険に晒すような行為はしたくない。」
「そっかー。でも多分行く羽目になっちゃうと思うよ。」
「なに?それはどういう…」
ケイが言い終わる前にカータが指を指すとその方向にいたのは、瞳を輝かせ、興奮しているとはっきりわかる動きを見せたメドゥだった。
「……逃げることはできないか…」
「腹くくるしかないねー」
「……仕方ない。行くぞ。カータ、ここに書かれている住所を特定してくれ。」
「りょうかーい。」
「妾も同行しよう!」
「……止めたって来ますよね?」
「もちろんじゃ。」
「……わかった。なるべく身を隠せるところにいてくれよ。」
「了解。」
「わしも連れててってくれ。」
声を掛けたのはチュウコン博士だ。
「えっ、どうして…?」
「1度、そのAI搭載型バイクを見てみたい。だめか?」
「……メドゥと一緒にいるのなら。」
「十分だ。さて…どんな奴かな?」
「…特定できたよー!ここから西に10キロ離れた場所…あっ、ここサーキット場だ。」
「サーキット場…なにかありそうだな。皆気をつけていくぞ。カータ。続いてすまんがリーダーに無線を入れといてくれ。」
「お任せあれー。」
「よし、行こう!」
『おう!』
メドゥの屋敷から西へ10キロ。ここにはもう使われなくなったサーキット会場がある。そこに現れる、4つの影。10キロといえど、邪鬼の2人からすれば、人一人の荷物があろうが、ものの数分で到着できた。
「よう。待っていたぜ。お二人さんよ!」
『お前らにはたっぷり、お返してやるかなぁ!!』
待っていたのはやはりマッドAIバイクの二人、モトザキとハカブサだ。
「しかし…やられたからリベンジマッチをして欲しいなんて…意外と律儀ね。お前たち。」
「メドゥちゃんの暗殺はいいのかなー?」
「決まっているだろう?お前ら二人をぶっ殺し、ターゲットを暗殺。それで十分だ!」
『まずは、お前らを殺さねぇと気が済まねぇからな!!』
「…まぁいい。それで?もう始めていいのか?こっちはすでに準備万端だが?」
「あっ、ふたりともどこかに隠れてねー」
カータがメドゥとチュウコン博士に隠れるよう促し、二人はそれに従った。
「ふふふ…そう焦るな…お前ら二人のどちらか、バイクは運転できるか?」
「…できないわけではない。」
「まぁ、うん。私はアンドロイドだし、一応、できるけど…」
『これから、俺達とレースをしてもらおう!このサーキットを先に10周した者の勝ちだ。あんたらが勝ったら、俺達は手を引くとしよう。逆に俺達が勝ったら、あんたらを殺し、そこにいるあいつらも殺すとしよう。どうだ?悪くねぇだろ?』
「まて。しれっと言っているが手を引くだと?こちら側の勝ったときのメリットが少ないぞ。」
「そこは自由にしてくれ。俺達は手を引く。だから自由にしてくれても構わん。煮ようが焼こうが殺そうが自由だ。」
「…まぁ、それでいいだろう。」
「ところでー…レースするのはいいけどバイクはー?君たちはバイクと人のコンビだからいいけど私達のバイクは?」
『あ?知るかよ。レースは10分後に始める。遅れるなよ?』
そう言うとモトザキがハカブサに乗りスタート地点まで走っていった。
「…やられた。はなからまともな勝負をする気なぞなかったんだ。くそっ…!どうする…?」
「うーん…どうしようかなー…」
二人が悩んでいると…
「わしにいい考えがある。」
チュウコン博士が名乗り出た。その瞬間カータは何故かビクッと驚き、恐る恐るチュウコン博士の方を見た。
「博士。考えとは…?」
「…ねぇ、もしかしてだと思うけど…」
「わしはこんな事態も想定していた。そこで、わしはカータに予め改造を加えていたんじゃ!」
「やっぱり…」
カータは呆れていた。これまでもお手伝いロボに全く関係ない、しかも暗殺にも関係ないシステムや改造を無断で施されていたりと散々な目にあっており、しかもそれのどれもこれもが除去されていないのだ。KOTKシリーズはどれだけ魔改造しようとも、それを内部に収納できる超空間ホールがあり、どれだけ魔改造されても変形ギミックをつければいつでも出し入れ可能なのだが…これを悪用したチュウコン博士による魔改造にカータはとても辟易していた。
「…それで、今度は何改造したんですか?」
「よし、教えよう!それは…バイクトランスフォームだ!」
「また超局所的にしか役に立たない…」
「仕組みはまぁ面倒だから省くがとにかくカータがバイクに変形できるんだ!」
「そうなのか…大丈夫なのか?」
「そうだよ。もし転倒したときのボディーへのダメージが…」
「その…一応…体重は大丈夫だとは思うが…恥ずかしくって…」
「えっ、そこ?えっ、ケイ?そこなの?今そこ心配なの?」
「ばっかもん!そんなことを心配しているのか?」
「そっ、そうだよー!こればっかりは博士が正しい…」
「そんなもん気合でどうにかなるわ!」
「博士ぇ!?私の心配じゃないの!?」
「とにかく!早いこと変形してもらうぞ。そして人馬合体を目指すんだ!」
「ええ…なりませんよー…どんなことになるかわかったもんじゃないのにー…」
「そうかならないのか……なら、ポチッと。」
突如としてチュウコン博士はポッケからボタンを取り出し押してしまった。するとどうだろうか。あんなに嫌がっていたカータのボディーが変形しているではないか。
「えっ!?ちょっ、ちょっと博士!?」
「わしの作ったものじゃぞ!遠隔操作が出来て当然じゃわい!ガハハハーッ!!」
カータが、どんどんバイクに変形していく。その豊満な胸はバイクの前輪、後輪となり、腕はハンドルに、ボディーから足はバイクのボディーとなり、顔はヘッドライトを輝かせている。
「こんなことに…なっちゃうなんて…」
「よーし!成功じゃ!!」
「おお!なんという変形!かっこいいのぉ!」
悲観するカータを気にせず、喜ぶチュウコン博士とメドゥ。
「おお…これなら行けそうだ!」
「…ケイ。私は時々君の感性が理解できないときがあるのだが、それは私がアンドロイドなのだからでしょうか…」
「ほれ時間がないぞ!はよぉ、行かんか!」
「ありがとう博士!よし行くぞカータ!」
「…後で恨みますからねー博士ー?」
ケイがカータに乗り込む。
「おふっ!?」
カータが変な声をあげる。
「どっ、どうした?」
「いっ、いやごめん。人なんか乗せたことないから変な感触がしてー…もう大丈夫。行こう!」
「ああ…頼んだぞ!」
彼女ら二人もスタート地点に立つ。
『どうやらてめぇらもちゃんとスタート地点に立てれたようだなぁ?褒めてやるよ!』
「まぁ、俺達に勝てるかどうかは別だがな!」
「舐めるな!こっちだって負けるわけにはいかないんだからな!」
「…どうしてこんなことに…」
各々それぞれ違う心持ちでレースの開始を待つ。
「よーし!わしが、このマイクを使ってスタートと…」
「妾がやる!!」
年頃の少女のように興奮し、チュウコン博士からマイクをひったくるメドゥ。
「ゆくぞ!3…2…1…スタートじゃ!!!」
メドゥのド迫力なスタート合図に、2台のバイクはスタートした!
一番を走っているのはマッドAIバイク。その後を追いかけているのはケイとカータの二人だ。
『へえ…スピードはまぁまぁだな。』
「だが、それだけじゃ勝てねえぜ。喰らえ雷魔法『ライトニングショット』!」
モトザキが後ろを向き後に続く二人に電撃の弾丸を撃つ。
「くっ…!」
なんとかケイがハンドルをきり、回避した。
「ちょっとー!攻撃しないでよー!」
「馬鹿め!誰も相手に攻撃しちゃいけないなんて言ってねえよ!!」
『あくまでも俺達のレースだ。公式のレースじゃねぇくらいわかっとけ!ハッハッハッ!!』
1周目は思わぬ妨害により、差が縮まらず、追いつけぬまま終えてしまった。
そのまま2周目に突入。更にマッドAIバイクの妨害は続く。
「喰らえ!幻覚魔法『ファントムジャマー』!」
モトザキの手が光ったかと思うと、何も無かった空間から壁が現れた!
「うわっ!?」
ケイは驚きつつもなんとかハンドルをきり、回避をする。すると、カータが違和感を覚えた。
「ケイ?なんか障害物でもあったのー?やけに運転が荒々しいけど…?」
「見えなかったのか?壁が出てきたんだ!進路を塞ぐように壁が出てきて…」
「あー…次は私、ライトOFFにして一緒に見てみるから。」
「…?わかった…。」
しばらく走るとまた進路を塞ぐように壁が現れた!
「くっ…!」
「そのまま突っ走って!」
「なっ、なに!?」
「いいから!私を信じて!」
「わっ、わかった!!」
カータに諭され、一か八か突っ込むケイ。壁と衝突する…そう思われていたが、二人は壁をすり抜け、なんともなく走り抜けていった。
「これは…」
「幻覚だね。熱源探知に引っかからなかったし。敵さんの妨害だろうね。」
「助かったぞ、カータ。」
「どういたしましてー。さーて、そろそろ反撃しよっか!」
カータがスピードを出し、前の二人に追いついてきた頃合いに3周目に突入した。
「アイツら追いついてきやがったな。」
『好都合だ。俺の技でアイツらをリタイアさせてやる!』
徐々に追いつきマッドAIバイクの目と鼻の先まで迫った時だ。
『死ねぇ!!スピニング・スパイク・バックホイール!!』
前回の襲撃と同じく、ハカブサは自身のタイヤに棘を生やし、今度は追いついていく二人の勢いを利用し前から棘でズタズタに引裂こうとした。
「そうホイホイとやられるわけないでしょー!とうっ!」
迫りくる棘付きタイヤに臆することなく、むしろ余裕を持ったカータはタイヤの側面にロケットブースターを生やし、飛んで回避した。
『何!?』
「飛んだ!?」
驚くマッドAIバイクを横目に二人は遂にマッドAIバイクを抜き、一番となる。
そしてそのまま4周目、5周目とマッドAIバイクの追随を許すことなく、走り抜いていく。
「ちっ、アイツら調子に乗ってやがるな…」
『なら目にもの見せてやるわ!!』
ハカブサがスピードを更に上げ、一気に距離を詰める。
『今だ!モトザキ!シフトチェンジだ!』
「わかったぜー!!お前の作戦がなぁ!!変質魔法『シフトチェンジ』!硬度15のダイヤモンドボディだ!!」
変質魔法を使い、ハカブサのボディがダイヤモンドの結晶体と化していく。
そして、カータとケイの二人に直接体当たりを行った。
「ぐわぁっ!?」
「カータ!」
『そーれもう一丁!!』
二度目の体当たり。カータのボディもそれなりの硬度はあるが世界最高の硬さを持つダイヤモンドのボディには紙も同然、フラフラと蛇行が目立つようになってきた。
「まだだぜ!雷魔法『ヴォルテックス・ラウンドウェイブ』!!」
さらにモトザキが地面に電撃を走らせる。電撃はカータに直撃してしまう。
「アババババババ…」
「カータ!カータ!しっかりしろ!」
「セセセセセセイイイミミツキキキキカイ二デンゲキキキハハハハハ…」
完全にスピードが落ちてしまい。マッドAIバイクにあっさりと抜かされてしまった。
6周目、7周目と共にカータの調子が上がらず、差を広げないようにするのが精一杯だった。
「うう…まだ痺れるー…」
「大丈夫かカータ?」
「だっ、大丈夫…それよりも、どうやって抜こうか…」
「ようし……一か八か賭けてみよう…」
「ケイ?」
「スピード上げて!追いつけれるように!」
カータはスピードを上げ、なんとかマッドAIバイクに追いついてきた。
「Assassin Skill『毒化膿』!」
ケイは吹き矢を取り出し、矢を吹く。矢は寸分の狂いもなく、モトザキの首に命中した。
「ぬおっ!?貴様何を!!」
「毒矢よ。死にはしないけどしばらく再起不能になってもらうわ!!」
「くっ、くそ!!こんなの外してしまえば!」
首の後ろについてしまったため取るのに時間がかかっている…が実は内心かなり焦っており、早く取ろうと慌てているモトザキ。ワチャワチャと動くせいでハカブサもバランスが取りづらくなり蛇行運転となっている。
「よーし!いっちゃくー!」
その隙にカータは再びマッドAIバイクの前に出る。
『おい!モトザキ!』
「わかってる!すぐに外してやらぁ!」
『馬鹿!ちげぇよ!落ち着け!!』
「じゃあなんだよ!」
『それ毒ねぇぞ多分!!』
「はっ!?」
『アイツらが何なのかはお前も知ってるだろ!暗殺者ならもっと即効性のある毒物を利用しているだろ!それなのにお前、今なんともないだろ!つまりそれは空の矢だ!』
「ってーことは…俺を騙したのか!!」
「そのとおーり!」
カータが自慢げに高らかと宣言する。
「毒化膿は所謂フェイクスキルだ。見事に引っかかってくれたな!これはオマケだ!」
ケイはマッドAIバイクに対して発砲した。
「ちくしょう!!舐めやがって!!俺達の恐ろしさもう一度わからせてやらァ!!」
その後のデッドヒート。残り少ない周で目まぐるしく変わる順位。
8周目、9周目ともに互角。そしてとうとう運命の10周目に突入した。
「こうなったら…先に運転してる女を潰してやらァ!!」
『おうとも!スピニング・スパイク・フロントホイール!!』
ハカブサはウィリーをしつつ前輪に棘を生やし、ケイの背中をズタズタにしようと迫ってくる。
「くっ…おっ、追いつかれる…!」
「任せといて。ケイ。何があってもそのまま突っ走って。いいね?」
「……わかった。信じるぞ!」
「ごちゃごちゃ言ってねえで死ねぇ!!」
「そうは行くか!!ロケット〜ヘッドショットー!!」
カータはヘッドライト代わりになっていた頭を勢いよく山なりに飛ばした!
そして、分離したカータの頭は道路に転がる。その転がった先は、マッドAIバイクの進路だった!
「なっ!?」
『むおっ!?』
マッドAIバイクはウィリー中のため曲がることができない。
「カータ!」
「振り向かないで!!前に進んで!!」
「…っ…!」
「大丈夫。平気だから。」
その言葉を言い終えるとカータの頭はハカブサにぶつかり、ハカブサは転倒、モトザキも投げ出されてしまった。
「くっ…すまない!」
ケイはそのまま走り抜け、見事10周しきることができた。ケイとカータの勝ちであった。
「カータ!!」
ケイはバイクを降り、カータの頭のあるところに向かう。
猛スピードのバイクと衝突したせいか、彼女の頭は顔の皮膚がえぐれ、機械の表面が顕になっていた。
「カータ…」
「えへへー。言ったでしょ?大丈夫だって。」
「あぁ…ありがとう。」
「ふふ。どういたしましてー。」
ケイがカータの頭を持ち、バイクの下に戻るとバイクは既に元の体に戻っており、ケイは頭に体をつけてあげた。
「これで元通りだな。」
「顔以外はねー。さて、あいつらのところ行こうか。」
マッドAIバイクの2人がやっと体を起こすと、既にケイとカータが2人の目の前に立っていた。
「ぐっ…俺達の負けだ…」
『さぁ、好きにしろ。』
「じゃあ、遠慮なく…」
ケイが小刀を振り上げる…が。
「馬鹿め!!幻覚魔法『ファントムジャマー』!」
モトザキは幻覚を作り出して隙を見て、ハカブサと共に爆走し、逃げていった。
「なっ!?卑怯者!!」
『言ったはずだろう?手を引くし、好きにしろと!俺達も好きにさせてもらうからなあ!!』
「次こそ、お前らを殺してやる!覚えてろよー!」
捨て台詞を吐き、サーキットの外に出ていった。
「……くそッ…」
「まぁまぁ…とりあえずメドゥちゃん守れたからいいじゃん。」
「…今度こそ必ず、殺す。あいつら絶対に殺す。」
「うわー…ケイが殺意増し増しにしてる…くわばらくわばら…」
二度目の襲撃、リベンジはケイ達の返り討ちによって幕を閉じたのであった。
特にないですねぇ…