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Assassins  作者: 悪町龍千
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第6話 「裏切りの恨み」

今回はガイの過去!

 今宵の月も輝きを増していく。サム曰くニホンでいう中秋の名月が近いらしく、お月見という風習を学んでいた平和な昼とは違い、今宵も暗殺者たちがメドゥの命を狙って姿を現した。

 今回の襲撃で大広間にてメドゥを守っているのはガイ。呪術に長けたガイは何かを唱えている。恐らく敵を殺す呪いを唱えているのだろうがメドゥには敵の姿が見えないため、どうなっているのかは検討もつかない。

 そんな大広間前の廊下では、見るも無惨で凄惨な光景が広がっていた。

 ある者は、拳銃で自殺をしており、またある者は自らの魔法の力で自分の首を捻じ曲げて死んでいた。

 ガイには死んでいく暗殺者が見えているのか、ガイが詠唱をやめた。


「…ふん。魔法に長けたやつもいたようだが…所詮この程度か。」

「おお。終わったのか?」

「あとは、逃げている雑魚どもだ。あいつらが仕留めるだろう。」

「…いつ見てもお主の呪術は得体がしれんのぉ…外はいったいどうなっているのやら…」

「ゲロ吐く趣味でもあるのなら、見に行ったほうがいいかもしれんな。」

「なんじゃその悪趣味は…しかし、無駄話は嫌いなんじゃないのか?」

「ああ…嫌いだ。だが、信頼関係が大事なのは知っている。…あいつらさえいなければ…」

「あいつら?誰のことじゃ?」

「お前に言う必要はない。」

「ふむ…信頼関係を大切にするならここで話しておいたほうがよいじゃろ。隠し事を持つのはよろしくないじゃろう。」


 ガイはその言葉を聞くとしばし考え込んだ。

 そして、決心したかのように口を開いた。


「…少し長くなるかもしれんぞ。」

「構わん。」


 それを聞くとガイは語り始めた。


「俺が呪術を得意とするのは血筋が原因だ。」

「ほう。血筋とな。」

「俺の遠い先祖は魔法の中でも究極の魔法、死の魔法を操ることが出来ていたんだ。」

「なんと。死の魔法か。」

「当然、当時の公国の王から異端とされ先祖は辺境の地へと追いやられていた。だが、代々受け継がれていき、一つの集落を作るくらいには成長していた。だが、その分、死の魔法は伝達が薄れていき、今や死の魔法を知るものは誰もいなくなった。そこから、ある者は悪魔を操る術を身につけ、ある者は魂を使役する術を身につけ…そして、俺の曽祖父が選んだのは…」

「呪いの術。じゃな?」

「そのとおりだ…お前らからすれば、禁忌や危険な術が飛び交う集落とも思えるかもしれんが…普通の集落と何ら変わりない…平和な集落だった。…あの日が来るまではな…」


 ガイはため息をつくように顔が下を向いたが、話を続けた。


***


[俺には兄貴がいた。名はジュンソ。体が強く、頑丈だった代わりに、魔力がほとんど無い人だった。両親からは厳しい特訓が重ねられていたが…効果は無かったみたいだ…そして、俺が産まれたことで後継が俺に移り、両親も特に何を言うことも無くなったんだ。兄貴は事あるごとに魔力がないことをいじられていたんだ…]


「やーい!魔無しののうーきーん!」

 今日も今日とてジュンソはいじられていた。しかし、いい加減慣れてきたのでジュンソは適当にあしらおうとしていた。

「兄ちゃんをいじめるな!!」

 だが、適当を許さず、ひ弱な体でジュンソを守ろうとした者がいた。弟のガイだ。

「なんだこいつ!」

「やっちまえ!」

 ガイに殴りかかるいじめっ子たち。

「うおー!!弟に手を出すなぁ!!」

 それを止め、逆に殴り返すジュンソ。体が強いジュンソはあっという間にいじめっ子達を返り討ちにした。

「兄ちゃん!」

「ガイ!怪我はないか?」

「うん!兄ちゃんが守ってくれたから平気!兄ちゃんこそ大丈夫?」

「ああ!兄ちゃんは強いからな!」


[笑顔を見せてくれる兄貴に、俺は憧れた。いつか兄貴みたいな強い人になると心に決めていた。あんなことさえ…起こらなければならな…]


 年月が立ち、ガイも成長し、立派に呪術を扱えるようになっていた。

 とある日、いつものように家へと帰っていくガイ。

 しかし、目の前の信じられない光景に呆気を取られてしまった。

 彼の家が破壊されていた。彼の生家は出かけてから帰るまでの僅か数時間で粉々に破壊されていたのだ。

「なっ、何だこれ…どうなっているんだ!?」

 すると今度は悲鳴が聞こえた。ガイは悲鳴が聞こえた方角に向かう。

 ガイの目に、二度目の信じられない光景が映った。

 彼が尊敬し、憧れであり、目標であった、兄、ジュンソが集落の人々を襲い、殺し尽くしていたからだ。

「あっ…兄貴ッ!?」

 理解ができなかった。普段から兄を見ていたガイは兄がどうしてこのようなことをしているのかわからなかった。

「…!ガイ!」

 ジュンソがガイに気付いた。

「兄貴!どうしてこんなことを!説明してくれ!」

 ガイはジュンソに説明を求めた。

「…ガイ。お前は…いやお前らはよくそんな被害者ヅラができるな!!俺は頭に来てるぞ!!!」

 ジュンソが何を言っているのかガイにはわからなかった。

「なっ、なんのことだ!兄貴!」

「とぼけるな!!この集落の全員がグルと聞いたときは、ショックを受けた!血肉を分けたお前さえ、俺の敵なんてな!!だがもう迷わねぇ!お前もぶっ殺す!!」

「兄貴!!くそッ!兄貴には使いたくねぇが…!」

 ガイは呪術を唱え始める。彼の呪術は恐怖を植え付けることで初めて通用するが手っ取り早く恐怖を植え付けようと強力な呪い、死神の呪いと呼ばれる呪いを唱えた。

 しかし…ジュンソは恐怖しなかった。ほぼ耐えることなど不可能な死神の呪いを無効化してしまったのだ。

「なに!?馬鹿な!」

「お前の呪いなんぞ聞くものか!!死ねェ!!」

 ジュンソは持っていた材木を振り回す。元々非力なガイは振り回している材木をまともに喰らってしまった。

「ぐふっ…」

「おおっ!!くたばれやぁ!!」

 ジュンソは材木をガイの体に突き刺す。破壊の限りを尽くした材木は鋭く尖っており、ガイの腹部を貫いてしまった。

「がはっ……あに…き…」

 ガイの記憶はここで一旦途絶えてしまった。

 記憶が戻ってきたのは数時間後かあるいは数日後か。とにかく彼は再び目覚めたのだ。

「俺は…」

「気づいたか…」

 周りを見ると傷だらけの三人の術士がガイの周りを囲っていた。

「俺は…死んだはずじゃ…」

「いいや、かろうじて息があったからな…俺が悪魔術でダメージを反転させた…」

「…霊魂術で…浮かんでいた魂を戻した…」

「体の穴は呪術の応用で塞いである…なんの後遺症も無いはずだ…」

「なぜ…俺を助けたんだ?」

「助ける…?冗談を言うなよ…俺たちこんなだぜ…誰がやったと思う?」

「この…集落に…あった魂は…全て…天に登った…」

「それも…これも…お前の兄が原因だ…」

「…」

「お前の兄が全部たった1日で全部無くした。だから…償いを。」

「…弔いを…」

「そして何より…殺された者たちの恐怖が恨みに変わり、お前の兄を殺す。」

「……」

「俺たち3人と、この集落全員の恨みをお前の体、一身に受けてもらう。そして、あいつ…お前の兄を殺せ。それまで…」

「ここの魂の救済は…奴の魂の放出でしか…なし得ない……」

「誰かに取られるなど許さん…お前が…兄を…殺せ…」


 3人はそこで息絶えた。するとこの集落中に溜まっていたと思われる怨念が、恨みが、怒りが、悲しみが、全てガイの身に流れ込んだ。

 ガイは全てを受け止めた。必ず、兄を殺すと。そう決心したのだ。


***


「なるほど。それでお主はこんな性格になったのじゃな?」

「ふん。そういうことだ。」

「ふむ。面白い話じゃった。ここに入った理由も兄を探すためか?」

「…手掛かりを探そうとあらゆるところを回っていたらゼロに誘われただけだ。」

「ふふ…面白いのぉ。」

「…どうやらあいつら、終わったみたいだ。話は終わりだ…」

「話してくれてありがとう。」

「ふん…」


 ガイの恨みは消えない。兄を殺したとしてそれが消えるとは限らない。

 だが、ガイはそれこそ使命と、割り切っている。

 割り切っているからこそ、ガイは戦う。自分の恨みを敵の恐怖に変えて。




本当に文字数が少なくっていますが心配しないでください。書きたいことは書けてますので…

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