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Assassins  作者: 悪町龍千
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プロローグ「科学と魔法」

遅くなったプロローグ。

連投です。

有史以前から、人間には2つの知識が神から与えられていた。魔法に関する知識と、科学に関する知識。人間は与えられた知識を活かし、研鑽し、自らの地位を高めていった。 

 だが、人間は徐々に、自分たちの得意なものを優先するようになった。魔法が得意な者は魔法を究め、科学が得意な者は科学を究めていった。

 やがて、人間は持っていた不得意な知識を失ってしまった。そして、いつしか自らが持つ知識を他より優れていると思うようになり、科学と魔法は相容れないという風潮が生まれてしまった。


 今から300年ほど前。魔法と科学は両立できないものが当たり前として、日々、人間たちの間で、小競り合い程度の争いが起こっていた。

 しかし、人間たちは争いではなく平和を望んでいた。全面戦争でも起こって人類滅亡など、科学側も魔法側もごめん被っていたからだ。世界平和という願いだけが科学と魔法を糸一本で繋ぎ止めていたのだ。

 だが、願っていても対立は日々、深まるばかり。そして、全人類が恐れていた事態、科学と魔法の全面戦争が起こってしまった。科学が魔法を寄せ付けず駆逐し、魔法が科学を圧倒し殲滅する。そんな不毛な戦いが休戦を挟みながら100年続いた。民衆は疲弊し、戦いの大義名分も薄れ始めていた。

 しかしながらある時、この100年続いた戦争は突如として終戦を迎えた。科学側のリーダー的存在の女王『デルヒロート』が、魔法側のリーダー、女王の『グラルトリス』と和解したのだ。

 真の平和を掲げ、科学と魔法の融合を図り、彼女達は働きかけた。そして僅か30年で、世界は科学と魔法が融合した平和な世界が広がっていた。


 やがて、彼女達が治めた国は何らかの原因で衰退、歴史から姿を消した。彼女たちの子孫たちも行方しれずとなった。

 人々は新たな統治方法を模索していた。そこで思いついたのは世界の分割統治だった。


 かつて世界は、ナーロパ、アルセアン、ロンギル、チューニズ、ニホン、ノースアルメリア、サウスアルメリア、アーストンカ、オーセルタル。の9つの州に分けられていたという伝説があり、その伝説の分け方を参考にし。

 かつてのナーロパを『ナーロパ連合』が、アルセアンを『アルセアン連盟』が、ロンギルを『ロンギル機構』が、チューニズを『チューニズ共同体』が、ニホンを『江室鎌幕府』が、ノースアルメリアを『アルメリア機関』が、サウスアルメリアを『アルメリア財団』が、アーストンカを『アーストンカ王国』が、オーセルタルを『オーセルタル財閥』が、管理し、世界を治めた。


 しかし、管理をしていると言えば聞こえがいいが実態はお飾りの統治機関。実際は、各機関に従う貴族兼実業家達が、世界を回していた。貴族達は自分が覇権を握ろうとライバル達を蹴落としていった。あるときはありもしない不祥事をでっちあげ、またあるときは無理矢理財力を奪ったりしていた。しかし、もっとも簡単で、手を汚さずに済む方法は、暗殺者を雇うことであった。多額の報酬金に暗殺業界は大いに盛り上がり、魔法や科学を武器に、与えられた任務をこなしていき、中には暗殺者を育てる集落も現れ、独自の暗殺方法を使用する者も現れ始めた。


 我々が住む、ナーロパはラトル家という貴族がナーロパの経済を支配していた。対抗貴族も暗殺者、財力、でまかせで潰し、彼らの傘下グループに加入させていた…


「…爺や。歴史は飽きた。別の話をせい。」

「しかし…何れはお嬢様がこのファンディール家をお継ぎになるのです…特に、暗殺者のことを知っておかねば、自らの命に関わるのでございますよ。」

「ならば、暗殺者を妾の部下にすればよい。こうすれば、妾は殺されんじゃろ?」

「……では、そのためにもお勉強を頑張ってくださいね。」

「うむ。ご教授よろしくお願いするぞ。」



 ファンディール・メドゥが邪鬼を引き込むまで、あと1年の出来事であった。



 メドゥに雇われる頃より半年ほど前。

 ケイは、ふと小さな頃、母に聞いた昔話を思い出していた。

***

題名「女王達の決断」


 昔々、この世界は科学と魔法の2つの知恵が、人間たちに与えられていた。

 人間たちは切磋琢磨し、与えられた知恵を良いものへと成長させていった。

 しかし、人間たちは徐々に、片方の知識だけを優先し、もう片方の知識を無くしてしまった。

 そうして、いつしか科学を使う人と魔法を使う人で別れ、いがみ合いが起こり始めました。

 いがみ合いはエスカレートし、ついには戦争が起こってしまいました。

 戦争は続き、人々はいつ終わるかもわからない戦争に怯え始めていきました…


 ここはマシルハン王国、マシンキャッスル。科学側のリーダー。デルヒロートが住まう城である…


「デルヒロート様!北部への侵攻が芳しくないとのこと!至急増援を!」


 と家臣が言うと。


「………いやじゃ。」

「はっ?いまなんと…?」

「嫌じゃと言っておる!!」

「なっ、何をおっしゃいますか!?」

「こんな不毛な戦争!なんになるのじゃ!妾の目の前で誓いを立てたものがどれだけ帰ってこなかった!!」


 デルヒロートは激怒していた。戦いの場にいくのに際して、兵士たちはデルヒロートの前で誓いをたて、そのたびにデルヒロートは必ず帰ってこいとおっしゃっていたのだ。

 だが、その約束を誰一人として、守り切ることはできなかった…


「…その兵士たちを増やさないためにも…どうか援軍を…」

「嫌じゃ!!妾は出ていく!こんなのもう嫌じゃ!」

「デルヒロート様お待ちください!!デルヒロート様!!」


 デルヒロートは城を飛び出し、自身が持っていた飛行型の機械に乗り、どこかへと行ってしまった。


 ところ変わって、ここは、マジルトラル公国のマジックキャッスル。魔法側のリーダー、グラルトリスの住まう城である。


「グラルトリス公!どうか考え直してください!なぜ、進撃を中止するとおっしゃられるのですか!」

「……私には…もう出来ないのです…私のために心血を注ぐ兵士たちを…もう戦場に送り出したくないのです…」


 グラルトリスは泣いていた。自らに忠誠を誓い、戦場へと掛けていく兵士たち。その兵士たちが亡骸となって、グラルトリスの前に再び来られることを嘆いていた。


「…皆、グラルトリス公の、ひいては国のために死ねることを誇りに思っています…どうか、ご決断を…」

「…私は…死んでほしいなど思っていません…ただ、生きて帰ってくれることを願っていただけなのに…」


 すると、グラルトリスは魔法でテレポートをし、何処かへと消えていった。


「グラルトリス公!?どこへ行かれたのですか!?グラルトリス公!!」



 そして、なんの因果か。ほぼ同時に家出をしたデルヒロートとグラルトリスは科学側の魔法側の境にある小さな花畑で出会ってしまったのだ。


「おっ、お主何者じゃ!?」

「あっ、あなたこそ……ん?あなたのその高度な機械は…それに王冠…もしかして…機械側のリーダー…デルヒロート?」

「ということは…お主は魔法側のリーダーのグラルトリスか!」


 お互い、敵である国の王の名前は知っていた。傍から見れば一触即発にもなりかねないが、二人はすぐに意気投合し、親交を深めていった。そして、ある時…


「のぉ、グラルトリス。」

「グラでいいよ。私はデビちゃんでいい?」

「…まぁいいじゃろう…それでの、グラ。お主は…戦争が嫌いか?」

「…嫌いです…みんな死んでいくのは嫌だ…」

「…妾も同じじゃ。じゃから…妾達は戦わなければならん…」

「戦うとは…?」

「…この戦争を終わらせる。そのためにはグラ。お主の力が必要じゃ。」

「…わかりました。デビちゃん。私達で成し遂げましょう。真の平和な世界を。」


 二人の誓いは、すぐさま行動に現れた。

 まず手始めに現在、侵攻している軍隊を全て戦場から撤収させた。

 そして、彼女達は自らがもつ知識で機械側にテレビ中継を、魔法側に魔力によるテレパシーを使い、戦争が終わったことを告げた。


「皆様。この100年、どれほどの死亡者が出たでしょうか…」

「とてもじゃないが、妾達だけでは数え切れない。とても多くの人が亡くなった。」

「ですが、もう数えることはできません。いや、数えなくていいのです。」

「今、ここに高らかに宣言しよう。戦争は終わった!もう、科学と魔法で争うことはない!」

「ですが、これは始まりに過ぎません。」

「元々、人間たちは科学の知識も魔法の知識も持っていました。そして、この戦争の原因になったのは、片方の知識を優先しすぎて対立を深めてしまったからじゃ!」

「…今一度、戻しましょう。真の平和を目指して、科学と魔法の融合を行いましょう!」

「マシルハルト王国女王、デルヒロート・〇〇〇〇!」

「マジルトラル公国女王、グラルトリス・〇〇〇〇!」


 彼女達はそう全人類に誓いを立てた。彼女達は前線に立ち、科学と魔法の融合を推し進めた。

 最初は反発していた者たちも彼女達の姿を見て改心し、協力した。

 全人類も協力した。そのおかげか、たった30年で魔法と科学はいがみ合うこともなく、平和な暮らしができるようになっていた。

人々は戦争を終わらせ、平和な世界を作り上げた二人の女王に、深く感謝したという…

***


 当時の物語を思い出したケイ。何故今思い出したのかはわからなかったが…今も昔も、とても不思議な話であると考えていた。

 しかし、ケイは引っかかっていた。デルヒロートとグラルトリスの名字が分からないのだ。聞かされてはいたはずなのだが、どうもど忘れをしているらしい。

 だが、ケイは特に気にすることはなかった。そして、明日の依頼のためにもケイは眠りについた。

これで世界観が少しわかってくれると私、嬉しいなぁ…

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