3、旋律の曲弦
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王都グラングランへと帰還した冒険者達は、ライドの攻撃に違和感を覚えながらも戦利品を確認し、王都で一番流行っている酒場で大いに騒いだ。
ライドの里を襲ったのは、王都では知らぬモノの居ない最強のクラン“旋律の曲弦”と呼ばれる数十名からなる大手クランの精鋭達だった。
リーダーで戦士の“デイズ”は、無鉄砲で喧嘩っ早いが、情報戦に長けており、レベルもつい最近までの上限だった90を越えている。武器は主に好んで大剣を用いた。
副リーダーで旋律の曲弦のオカン的な存在の“ブロウス”は、この世界に二つと無い神の石を用いて造られた究極の盾を用いて、どんなモンスターの攻撃だろうと受けきる究極のタンカーだ。
魔法を極めし深淵の魔術師と呼ばれる“カイナ”は、人と交わる事を拒んでいたが、ある日“デイズ”に命を救われた事から、デイズを想い、デイズに命を捧げ、デイズの為にその叡知を惜しみ無く費やした。
一時的であれば、命さえも操る事の出来る、生と死の女神“ロット”は、この物語が世に放たれた時からデイズと共に切磋琢磨し、死地を乗り越え、神をも凌ぐともてはやされる力を手に入れた。
旋律の曲弦を代表する冒険者は皆この物語…… MMORPG“ドレイクスケイル”のプレイヤーだった。
だったとゆうのは、それは元の世界での話だ。
各々に元の世界での死を体験して、ドレイクスケイルのゲームを舞台としたこの世界に転生して来ている。
初めは混乱していた人々を束ねて、この世界での生き方を示したのがデイズだった。
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死の体験と言っても、それぞれがそれぞれに体感したそれらは異なる。
デイズ…… 本名“日野原 彩月”は元の世界では平凡なサラリーマンをやっていた。
土日祝日休みで、9時出勤の5時退社、殆ど残業なんて無い優良企業に勤めていた彼の唯一の趣味がドラゴンスケイルだった。
初めて彼がドラゴンスケイルに出会ったのは、大学を卒業し、その企業に入社したての春の出来事だった。
初めてドラゴンスケイルが世に放たれた時には(何が、どこがドラゴンなんだ?)と言われる程に、ドラゴンと遭遇する事は無かった。
それにも関わらず、伝説の生き物としてのドラゴンと出会うまでの壮大な物語が市場に受け入れられ、多種多様なモンスターとクエストとストーリーによって、ゲームを通して自身も成長出来ると話題が話題を呼び、ドラゴンスケイルのユーザーは数百万人に及ぶと現在では言われている。
日野原彩月は、そんなドラゴンスケイルを発売初日からプレイして来た生粋のプレイヤーであり、22歳の時から始めたプレイも既に10年を経過していた。
初めてドラゴンと遭遇したのは、そんな日野原彩月がプレイを初めて3年後の事だった。
その時のプレイヤーレベルの上限は僅か40。ドラゴン一体の討伐には百人規模のプレイヤーの参加が必須であり、さらにドラゴンの里の襲撃となれば数百人から数千人の参加が必須であった。
日野原彩月は、初めての大規模戦闘に興奮を覚え、それ以来何度も何度もドラゴンの討伐に参加した。
もちろん失敗する事もあったが、死んでもデスペナルティと呼ばれるアイテムの紛失や経験値の喪失や戦闘における一定期間のステータスの減少も見られたが、実際に死ぬわけでは無いのでそれらも経験として大いに楽しんだ。
……
それは、日野原彩月がドラゴンスケイルを初めて調度10年目の出来事だった。
10年の間に度々拡張を重ね、進化してきたドラゴンスケイルの新拡張パックがリリースされる日だった。
様々な年齢のプレイヤーがいる事を配慮してなのか、ドラゴンスケイルの拡張のタイミングは毎回19時であり、この時も例外では無かった。
日野原彩月はいつもの様に仕事を終えて帰宅すると、いつもの流れで電気を点け冷蔵庫から飲み物を出し、ドラゴンスケイルの世界にログインすると、クランの仲間やフレンド達に軽く挨拶を行い、コンビニで買ってきた夕食を食べて、風呂に入り万全の体制で19時を待っていた。
19時になり、新拡張パック《古の探求者》のダウンロードを行い、新たなる世界へと足を踏み入れた調度その時。
19:18
関東全域から九州までを突き抜けるマグニチュード10.0の大地震が列島を襲った。
日野原彩月のマンションはその揺れを受けて突っ込んで来た、ガソリンタンクを積むトラックの爆発に巻き込まれ倒壊し、日野原彩月は崩れ落ちるマンションの瓦礫に巻き込まれ全身の痛みと、恐怖に包まれ意識を失うと、次の瞬間には見慣れない木の床板に倒れ込んでいた。
現実に見慣れない木の床板の、嗅ぎ慣れない臭いに包まれ、起き上がるとそこは見覚えのある場所だった。
日野原彩月同様に、大地震に遭遇しこの世界を訪れた人々は数百人に及んだ。
この情報は、元の世界で役所に勤めていた冒険者の一人が、たまたまドラゴンスケイルの世界に来ていた同僚数名と状況の把握と混乱の収束の為に調べた事の一つだった。
数百万のプレイヤーに対してその数百人とゆう数字が多いのか少ないのかは分からないが、間違いなくこの世界の環境に大きな影響を与えた。
それ以降、少しずつ冒険者の数は増え続けている。
増え続けているが、デイズ達が来る前から居た冒険者も居た。
そんな人々はデイズ達とこの世界に来た体験が異なる。
病気だったり、事故だったり、自殺だったり。
共通して言える事は、死の体験の直前までドラゴンスケイルにログインしていたとゆう事だ。
その事が、拡張パックリリース以前から、この世界に転生が始まっていたとゆう事実を示した。
殆どの冒険者が元の世界の情報に、この世界の情報に、情報に飢えていた。
その為に、三つの組織が造られた。
一つ目が、この世界を訪れた人々の情報を収集する“冒険者組合”という組織だ。
冒険者組合は、この世界を訪れた冒険者の情報を収集して、冒険者や他の組織に情報を与える事を生業とした。
クエストの受注や、報酬の受けとりを冒険者組合で行う事が出来る。
二つ目が、この世界の情報を収集する“諜報部”である。隠密に長けた者が個々に属する事が多く、個人で収集した情報を売買している。
個人で完結する生業が組織と呼べるのかと、批判する者もいるが、諜報部員から諜報部員への横の伝達がしっかりと組織として成り立っている。
もしも、万が一その行為を妨害しようモノなら、見えない多数の敵を作る事になる。
三つ目が、“商人の集い”と呼ばれる組織だ。主に武器の流通や、製作を生業としている。一見して情報とは程遠い所にいるかと思う人も少なくは無いが、実際にはこの世界でもっとも必要な生産性のある情報を一手に管理しているのはこの組織とゆう事になる。
それら三つの組織を管理する存在がある。
それが、最強で最大のクラン“旋律の曲弦”だった。
もとを正せば、それらの組織全てが“旋律の曲弦”のメンバーが創立者となっており、三つの組織がうまく機能しているのは互いに有益な関係になっているとゆう事もあるが、何よりそれらを今日まで運営し、混乱を収め皆を導いたデイズの功績による所が大きいだろう。
そしてここまでの話は全て冒険者様、転生者様の話であり、この世界に生きる全ての先住者には関係の無い事だった。




