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第1話:子分になる日

無限に広がる大宇宙

そして宇宙を渡る宇宙船

その中に僕はいた


「何でこんなことに・・・」


何度呟いたことだろう

いったい誰が僕をこんな目に・・・

いや、誰がではない、あいつだ


古くからの悪友が僕の家にきて

しばらく情報端末を使わせて欲しいと言ってきた

親切心から端末を貸した次の日

突如として軍隊が僕の部屋へ押し入ってきた

そして僕は何もわからずに『監獄』へと送られようとしている


「よう、お前は何して捕まったんだ?」


隣にいた大男が僕に話しかけてきた

いかにも『悪』といった風貌の男で

僕はこいつが宇宙海賊だったとしても驚かないだろう


そして

『何』をして捕まったのか一番知りたいのは僕自身だ


「僕も自分が何をしたのか知りたいんですけどね。誰も教えてくれないんですよ」


「何だそりゃ。お前面白い奴だな」


男はクスクスと笑っていたが

僕からしてみれば笑い話じゃない

ここに送られるまでが急転直下で何が何やら





広大な銀河を3分する勢力の一つ『地球連邦』

その名の通り地球を起源とする勢力であり

3勢力の中で最も領土と人口が多い


連邦内でも有名な囚人収容施設が

難攻不落、脱獄不能の監獄『ヘルズ・ゲート』だ


居住可能な惑星が存在しない辺境で

定期便以外の行き来はまったくなく

その守りは強固

特に周辺に展開されたエネルギーフィールドの強度は

海賊達が一斉に攻め込んでもビクともしなかったそうだ


入った囚人は生きて出てきたことがない

そんな場所に僕は入れられようとしている


僕に言わせれば

出さないくらいなら殺せばいいと思うのだが・・・

別に死にたいわけじゃないけどね





「行け!」


宇宙船から降りれば生きては出られぬ墓場への直行コース

僕を連れてきた監視に押し出されて

僕は地獄へと降り立ってしまった


そこにいるのは獣のようなギラギラした連中ばかりだった

目が合っただけで殺されそうな人達ばかりの中で

僕のような一般人丸出しの人間は激しく浮いていた


手続きを終えて

細かく区切られたブロックの中へ入れられた僕を待っていたのは

昔漫画で読んだ世紀末ギャングのような大男


顔は半分近く鋼鉄でできていて

他にもいくつかサイボーグ化されているらしき姿は

まるで鋼のモンスターだ


「よく来たな新入りども!!! 俺がこの第187区画のボス『ギャビー』様だ!!!」


男が煩いくらい大きな声で叫んでいる


「ここでは俺がルールだ、俺に逆らう奴は死あるのみ」


そう言って自分の喉を掻き切るようなジェスチャーを見せる


何でこの手の連中の言うことは何時も同じようなセリフなんだろうね


「ん!? おい! そこのお前!」


「へ? 僕・・・?」


突然僕に声がかかった

目立たないようにしていたのに

周りから浮いた存在だったのが不幸を呼んだのか

これまで悪いことなんてしてこなかったのに

それがこんな形で災いするなんて


「お前はこの後俺様の牢へこい」


「え!?・・・何で」


困惑する僕にヤジが飛ぶ


「お前の尻穴をボスが使ってくださるってよ!」


そんな内容のヤジが飛び交い

ようやく僕は状況を理解した


これこそまさに冗談じゃない!

とっさに尻を押さえてしまった

まだ女の子とキスさえしたことないのに

こんな所で男に犯されるなんて!


逃げようとする僕の両腕を

ボスの部下らしき男が取り押さえてくる


「嫌だ! 放せ!」


暴れても僕じゃ歯が立たない

まるで捕まったエイリアンのように運ばれていく


ああ、僕の純潔があんな奴に・・・




「ちょっと待った!!!」


連れられていく僕の後ろから

芯のある強い一喝が響いた


「何だ手前は!!!」


囚人達が殺気立つ

ボスの部下に囲まれているその男は

さきほど輸送艦で隣だった眼つきの悪い男だった


「悪いがそいつは俺の子分なんでな、勝手に持っていかないでもらおうか」


「生意気言ってんじゃねぇぞ新入り!!!」


ボスの部下達が一斉に飛び掛った

誰もがボコボコにされるその男を予想したが

次の瞬間、それは覆えされた


「ぐふぅ!!!」


「うぎゃぁ!!!」


「ひでぶっ!!!」


一瞬何が起こったのか解らなかった

僕に理解できるのは

囲まれていた男は無傷で

周囲の部下達がみな吹き飛ばされて起き上がれないという状況だけだ


「この野郎っ!!! 何しやがった!!!」


怒りに顔を真っ赤に染めてギャビーが男に迫る

それに対して男は


「いいから、こいよ」


余裕の表情で手招きをしている

それに尚更怒り爆発のギャビー

サイボーグ化された右腕を全力で振りかぶり

有り余る力を男の体に叩きつけた


僕は男がミンチになる瞬間を見れずに思わず目を瞑った

そして轟音の後・・・静寂

ゆっくりと目を開けたそこには

信じられない光景が浮かび上がった


「なっ何だってぇっ!!!!!!!!!!!!」


激しく同様するギャビー

他の囚人も唖然としている


なんせ

長身とはいえ筋肉質でもなく

サイボーグ化されている気配もないその男が

片手でギャビーを止めていたのだ



「馬鹿な! こんなことがっ!!!」


ギャビーは更に力を込めて左手で殴りかかる

それを男が再び片手で受け止めると

200kgは平気でありそうな巨体を持ち上げ

壁に向かって投げ飛ばした


牢全体を揺るがす轟音と共に叩きつけられるギャビー

それでも崩れた壁の中から立ち上がってくるのはボスとしての意地か


「よくもやりやがったな!!!!!」


血管が浮き上がり

体から蒸気を上げながら獣のように男に掴みかかる


「いい加減黙れ」


僕には男が消えたように見えた

僕が男を見つけた時には

ギャビーの腹に男の拳がメリ込み

白目を向いて倒れる瞬間だった




「おい」


「は、はい!?」


驚きで何も考えられなくなっていた僕に

超人的な能力を見せ付けたその男が声をかけてきた


「部屋割りは自由らしいんでな。俺と相部屋でいいだろ?」


「はい!」


「じゃあ付いてきな」


何も考えずにとにかく返事をしてしまい

謎の超人の後を付いていくことになってしまった

騒ぎの現場をそのままに

僕らは奥の空き房へと移動するのだった





「さてと・・・」


「ひっ!」


ヤラレル!!!

何か知らないけどヤラレル!!!


咄嗟に尻を隠す僕を見て男はケラケラと笑った


「おいおい、別に俺はお前を食うつもりで連れ込んだわけじゃないぞ」


「・・・そうですか、でも、それなら何で僕を?」


「な〜に、俺の仕事を手伝わせる子分が欲しかったんでな。助けてやったんだからお前はもう俺の子分だ。文句あるならアレに抱かれるか?」


「いえ! 子分でいいです。子分にしてください!!!」


さっきまでの悪寒を思い出し

全身全霊を持って子分になると誓った


「そうか、それじゃぁまずは自己紹介だな。俺は『グレイ』だ、今は・・・なんでも屋ってところだな」


「僕は『コウ=タチバナ』です。地球の日本電脳大学に通っていました」


「地球出身かお坊ちゃんだな」


「家が昔から地球にあるってだけですよ。特別裕福ってわけでもないし」


「それにしても妙だな。地球育ちがこんな監獄に送られるなんざ普通じゃねえぞ」


「僕にもここへ送られた理由がよくわからないんです」


「船で言っていたのは本当のことだったってか。まぁそのうち調べる機会もあんだろ」


「機会って・・・ここでですか?」


グレイはニヤリと笑みを零すととんでもないことを言い出した


「ここから出ればいくらでも機会はあるだろうぜ」


「ここから出る!? そんなの・・・」


「今回俺が請け負っている仕事はな、この監獄から『囚われのお姫様』を助け出すことだ。お前にはその手伝いをしてもらう。その代わりにお前も外に連れ出してやる」


「つまり・・・ここを脱獄するってことですか? それに『囚われのお姫様』って何なんです?」


「読んで字の如し、お姫様はお姫様さ。な〜に、心配はいらねぇよ。お前は俺の指示通りに動けばいい。いいか、まずな・・・」




わけも解らず送り込まれた監獄で

合ったばかりの男に告げられる脱獄計画

こんな宇宙の吹き溜まりで

僕の未来はどうなっちゃうの?

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