一日目、母親
「モルト、どうしたの!?」
大きな音をたてながら入ってきた黒髪の女性、これがおそらく『僕』のお母さんだろう。
お母さん・・か。
交通事故で消えてしまったお母さんのことを思い出した。
優しくて気が利いて・・・・
思い出さないようにしていたことを思い出してしまい、少し目頭が熱くなってしまった。
あれ?なんでかな。本当のお母さんではなかったはずなのに。
何も言わない僕を不審そうにみている『お母さん』に見つからないように目元をぬぐった。
「なんでもありませんよ。お母さん。」
あ、まただ。本日二回目の驚愕の表情。
「本当にどうしたの!?いつもなら「うるせーな。あっちいってろ」くらい言うはずなのに。」
なにやってるんだ。前の僕~~!
今ごろになって反抗期の子供かーーーーー
なんかさらに申し訳なくなってくる。
「そんなことがありましたか!すいません。」
とりあえず謝っておく。
「本当に様子がおかしいわね。いつからこうに?」
「昼寝をされたあたりから突然です。」
「神官の方々に見てもらおうかしら。」
なんですか?この展開。
「お母さん。僕は本当になんともないのですけど。」
「そう?ならよかったわ。」
たちまち微笑み顔になったお母さんを見て切り替えが早い人だなーと思う。
こんなにすぐ人を信じれるなんていい人なんだろうなぁ。
「とにかくもう夕食だから一緒にきなさい。」
「わかりました。」
と頷いて立ち上がって・・・・あっ
自分の足で立ってる。もう一生、だめだと思っていたのに
「どうしたの?モルト。」
「いえ、なんでも。」
とはいっても流石にしばらく動かしてないと上手く動かせない。
「大丈夫ですか?ご主人様。」
「大丈夫だから気に・・・・!」
「気にしないでください。」
メイドが横から支えてくれた。ごまかすのは無理みたいだった。
そのままゆっくりと歩き始める。
お母さん、天国から見ててくれてる?
僕、ここでは後悔しないって決めたから。
だからここで頑張ってみるね。