男らしさと女らしさ
今日は先輩にアイスを奢った。
それ以外に大きく記憶に残ったことがない。
僕の生活が先輩で大きく回っているのだなと思い、笑ってしまった。
「何を笑ってるのよ、気持ち悪い」
気持ち悪いとは酷い。
それなりに僕のファンだっているのだ。
「僕の笑顔には千円ぐらいの価値はあるんですよ」
「もう少し安めに設定しなさいよ。スマイル0円を見習いなさい」
「嫌ですよ。あれ注文してみたらすごい目で見られたんですから」
「・・・・・・注文したことがあるのね」
あの目を思い出すと今でも寒気がする。
とてもスマイルなんて見られなかった。
「それに金を払ってまであんたの笑顔なんて見たくない」
「それは息子にいう言葉ですか」
「息子だからよ。どうせそれで商売できるとかそんな変なこと考えてんでしょ」
流石母親だ。
ものすごい美人にそれをやらせたら稼げるかもしれないと少し思っていたところだ。
「父さんに頼んだらいけるかもしれない」
それはかなり名案に感じた。
父さんはどうも女顔で下手をしたらそこら辺のモデルより綺麗かもしれない。
中学生のころに不覚にもその笑顔でときめいてしまった。
「なんで私じゃないのよ」
母さんから苦情らしきものが出た。
そんなものは分かり切っているのに。
「父さんの方が美人だからですよ」
「うっ」
いや母さんも美人ではあるのだ。
それでも父さんの方が女らしいというか、母さんの男気が強すぎるというか。
「あいつは男なのに」
ショックを受けているらしい。
だが母さんよ、それが現実だ。
「もう少し女らしい振る舞いをしてみたらどうですか」
肌とかには気を使っているらしいが、行動が男気にあふれている。
可愛いよりかっこいいのだ。
僕はそっちの方がいいのだがどうも気になるらしい。
「十分にしているつもりなんだけどね」
「はは、ご冗談を」
それなら家で大きなおならを出さないで貰いたい。
臭くて息ができなくなる。
本当にそんなところはおっさんにしか見えないから。
「ていうか服を履いてください」
当たり前のように話していたけれど実はずっと母さんは裸だった。
風呂上がりで服を置くのを忘れたらしくそれを取りに行く途中で僕に話しかけていた。
母親の体だから興奮はしないが目のやり場のは困る。
情操教育をする気がないのだろう。
「別に裸ぐらい良いと思うけどね」
こういう発言をするのは僕を男だと思っていないのだろう。
ちなみに父さんにも同じような考えを持っているのは気のせいだろうか。
「お~い」
着替えが終わったらしい。
振り向いたら驚いた。
なんと下着しかつけていない。
こういうところも男気があるなと思ってしまうのである。
色気はもうほとんどないが。