ラスボス臭
展開が突然ですし行動も突飛かと思いますが長い目でお願いします。
すみません。
「さてさて面白くなるかな?」
仕込む理由が最低だが、今はそんなことも言っていられない。
先輩をどうにかしなければならない。
先ほどからおかしくなっている。
「あ、あ、あ」
さっきから、あしか言っていない。
い以降はどこに置いてきたんだろうか。
「大丈夫ですって、怖くないですよ。怖いのはお義兄さんですからね」
「君を義弟と認めた覚えはない!」
「少し黙っててください」
僕も結構テンパってるな。
そして横の人が鬱陶しい。
どこかに消えてくれないかな。出来れば海の藻屑になって。
「お義兄さんの冗談ですから。ね?」
そう言うと今度は瞳を潤させてきた。
「冗談、なの?」
どこか残念そうに見ないで欲しい。
反応に困ってしまう。
冗談、それでいいじゃないか。
「自分で考えてみてください」
「私のこと馬鹿って言いたいの?」
「なんでそうなるんですか」
「君にそう言われるとそう言われている気がする」
「それは先輩が自分のことを馬鹿だと認識しているからではないんですか」
「馬鹿じゃないもん!ただ勉強ができないだけだよ」
「世間ではそれを馬鹿と呼ぶのですよ」
「馬鹿!!」
走ってどこかに行ってしまった。
溜息をつく。
もう少し言い方を工夫した方がいいのだろうか。
「やーい、振られた振られた」
「小学生ですか、あなたは。せっかくデートだったのにあなたのせいで台無しですよ」
「台無しにしたのは君のように見えたが」
「原因を作ったのはあなたでしょうが」
全くろくなことにならないじゃないか。
先輩は後にどうとでもできるのだが、この人と一緒に居るのは面倒くさい。
今日初めてあったはずなのにラスボス臭がする。
「臭いですね」
「酷くない?」
「ああ、声に出しちゃいましたか。気にしないでください」
「気にしない方が難しいと思うのだが」
グダグダとうるさい。
というか、
「なんでまだ僕と一緒にいるんですか」
先輩がいないなら僕と一緒に居る理由などないはずだ。
だから早く僕の視界から消えて欲しい。
「君に興味があるからだ」
「気持ちの悪いことを言わないでくださいよ」
寒気がしたぞ。
それに吐き気が。
これは病気か。
いや、この人が病原菌なのか。
「君に言いたいことがあってね」
先ほどとは表情を大きく変えてシリアスな雰囲気を醸し出した。
そんな顔もできるのか。
「君は本当に妹のことが好きなのか?」
「ええ、もちろん」
この人にはそんなことをあんまり言いたくない。
それでも今は言わなければいけないんだろうな。
そう感じてしまう。
「それならもう誤魔化すのはやめたらどうだい」
そう、それだ。
それが僕の本質だ。
「君が妹を好きなのなら、今のままの関係なんて続かない」
その言葉が僕に重く響く。
そんなことは最初から分かっていた。
それでも、今の関係は心地いいから。
そんな時間を守りたいから。
僕は逃げるのだ。
「君がどうするのかは勝手だが、妹は傷つけないでくれよ」
それ以上のことなど知らないのだから。
僕らがどう変わってしまうのかを。
それでも決めないといけないのだろう。
僕は変えなければいけないのだろう。
「じゃあ、貰っちゃってもいいんですか?お義兄さん」
何も知らない僕は先輩よりも馬鹿なのかもしれない。
それでも一歩を踏み出そう。
知らないのなら知ればいいのだから。
「君の義兄になった覚えはない」
その顔がどこか先輩に似ていて、やはり兄妹なのだと思った。
「これからなるかもしれないんですよ」
僕は笑って走りだす。
先輩を見つけに。
その笑顔を見るために。




