幼女を救出しました。
初めてのヒロイン&6話目にして主人公の名前が明らかに|д゜)
だが残念!ヒロインは幼女だ!
ゴブリン3体を倒した後、力が抜けて座り込んでしまいましたがこのままここで座り込んでいても状況は好転しないのは明らかですので、足に力を入れて立ち上がります。
ゴブリンが襲っていた車を見ると白い腕は引っ込んでおり、静寂を保っています。ゴブリンは倒したはずですから無事だと思うんですが。
「大丈夫ですかー?」
シーン・・
とりあえず少し遠くから声をかけてみますが答えはありませんでした。警戒しているのでしょうか?もう一度声をかけてみましょう。
「ゴブリンは倒したのでもう大丈夫ですよー?」
シーン・・
やはり無言です。まぁ状況考えたら仕方ないとは思いますのでこちらから歩み寄りましょう。
「一応無事か確認したいので車のところまで行きますから驚かないでくださいねー。」
・・ガタッ
お、少し反応がありました。生きてはいるようですね。これ以上警戒させないようひと声かけてから車の割れた窓ガラスから声をかけます。そこいたのはまだあどけない少女が一人。助手席に座って震えていました。茶色系のストレートヘアーがよく似合う大きな透き通るような目が印象的な少女です。中学生・・にはいくらなんでも見えないのでまだ小学生高学年くらいの年齢ですかね。
憔悴しきっており、表情は無表情です。
「こんにちは。危なかったですね。もう大丈夫ですよ。」
にっこりと笑顔を浮かべて警戒心を解くようゆっくりとした論調で話しかけてみます。
「・・誰?」
「私は|赤木 海人≪アカギ カイト≫といいます。あなたが襲われていたのでとっさに助けに入ったんですが無事で良かったです。お一人ですか?」
少女からの小さな声での誰何に対し、名前を伝え、状況を確認してみます。車内には一人ですが少女のみで行動していたというのは考えにくいですし。
「・・違う。パパと・・一緒だった。・・怪物に追われてたら・・・パパは・・危ないからここで隠れてなさいって言って・・お外に出ちゃっ・・た」
やっぱり保護者がいたようですね。怪物というのはゴブリンのことでしょうか。無事だといいんですが。
「そうですか。無事だといいんですが。」
「・・ううん。パパは・・食べられちゃっ・・た。・・パパはもうダメだから私だけでも逃げなさい・・って・・聞こえ・・・た。けど、・・私は怖くてお車から外に出ること・・・できなかったの。・・もし私が・・お外に出れば・・パパを助けられた・・か・・も・・しれないのに・・・・きっと・・私のせいでパパが死んじゃったんだ!・・私さえいなければよかったのに!」
「ッ!」
少女の語調が段々と強まってきて最後には涙を流してしまいました。完全に私の失言でした。チラリと後ろの食われてしまった人を見てため息をつきます。少し考えればこの状況も予測できたはずでしょうに!私の考えが足りませんでした。
「すいません。辛いことを聞いてしまいましたね。ですが、自分を責めてはいけませんよ。あなたのお父さんもそんなことは望んでいないでしょう」
「・・でもっ!・・私が動けなかったのは事実・・だから!」
「それでも、お父さんはあなたが生きていることを喜んでいるはずです。子供の無事を喜ばない親なんていませんよ。」
「・・・うん。・・でも私が動けなかったのは・・事実」
お父さんの気持ちを考えているのでしょう。幾分落ち着きましたがやはり自分が助けられなかったことを引きずっているようです。
「あなたが後悔しているのであればお父さんの分まで幸せになりなさい。それこそがお父さんが望んでいたことだと思いますよ」
「っ!・・うん。分かった。それがパパがして欲しかったことなら私は幸せになる。・・私もついていっていい?」
少女の目に光が戻ってきました。これなら大丈夫そうですね。
「もちろん。こちらこそよろしくお願いします。っと車から外に出る前に確認したいんですが、非常に聞きにくいことですが外にある亡骸はもしかして・・」
「・・うん。パパだよ」
そっと目を伏せて答える少女。やっぱりそうでしたか。となると車から出す前に死体を隠したほうがいいですね。
「答えにくいことを聞いてすいませんでした。あなたのお父さんの亡骸は損傷が激しいので隠せるようシーツか何かを持ってきますので暫く待って頂けませんか?」
「・・大丈夫。パパをちゃんと見送ってあげないといけないから。・・私は大丈夫」
「いや、でもかなり損傷が激しくて、見ないほうがいいですよ?」
「・・大丈夫。」
「いや、本当にやめたほうが・・」
「・・大丈夫だから。」
「・・分かりました。無理はしないでくださいね?」
「・・ん。大丈夫。」
何度聞いても大丈夫という少女に折れてしまった形になりました。車から出てくる少女を見つめます。気丈にしていますが手が震えていますね。そっと手をつないであげると驚いたように目を開きながらこちらを見つめてポツリと
「・・ん。ありがと。」
「どういたしまして。」
ぎこちない笑顔を浮かべながらお礼を口にします。可愛らしいですね。あ、私はロリコンではないので他意はありませんよ。えぇ、ありませんとも。
手を繋いだまま一歩一歩お父さんの亡骸に近づきます。近づくごとに大きくなる少女の震え。私には強く手を握って上げることしかできません。少女がこちらをチラリと見た後に現実を噛みしめるように父親の亡骸を見つめています。
「パパ・・。」
「パパ・・パパ・・パ、パァッ・・ウァァァアッ。」
父親の亡骸を前に名前を何度も声をかけていますが、無言の返答が否が応にも現実を突き付けています。
「パパッ!ごめん・・なさい!私のせいで・・私のせいで・・!ごめんなさい!」
自戒の念を込めて今は亡き父親に謝罪の言葉を告げる少女。ボロボロと涙を流しながら謝罪の言葉は終わりがなく少女の口から零れています。このままだと少女が潰れてしまいます。そこで私からも少女の父親に向けて言葉を発します。
「|赤木 海人≪アカギ カイト≫と申します。あなたが身を挺してお子さんを守る為に使った時間で私はお子さんの危機に立ち会うことができました。あなたの死を無駄にしないようこれからは私があなたに代わり保護致します。どうか安らかに眠ってください。」
「お兄ちゃん・・」
「ほら、お父さんもごめんなさいばかり言われてしまうと困ってしまいますよ。幸せになるんでしょう?」
「・・うん。・・ごめ・・ううん。ありがとうパパ。パパのおかげで私はお兄ちゃんに助けてもらったよ。ヒックッ、パパのっ・・分までっ幸せになるヒグッ・・ね?だヒックッ・・からお願い。・・私をっズズッ見てくれる?」
「きっとお父さんも天国であなたのことを見守っていますよ。ほらほら、可愛いお顔が台無しです。ほら、鼻かんで。チーンですよ。」
「・・むぅ。私は子供じゃないもん。」
「はいはい。分かりましたお嬢様。次からはお一人でお願いしますね?」
「おじょっ・・?・・ん。今回はお願いする。」
「はいはい。」
「むぅ。はいは一回。」
「フフ、はい。分かりました。」
「チーンッ」
と、言いながらもされるがまま鼻をかむ少女。学校の先生とかはこんな気持ちだったのでしょうかと考えてしまいますね。
「では、これから改めてお願いします。|赤木 海人≪アカギ カイト≫です。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「・・私は|柊 紫苑≪ヒイラギ シオン≫。」
「紫苑≪シオン≫ちゃんですね。よろしくお願いします。」
「ん。ちゃんはいらない。紫苑≪シオン≫でいい。カイトはいくつなの?」
子ども扱いされたくないお年頃というやつですね。
「私ですか?私は今年で25歳です。紫苑≪シオン≫からしたらおじさんです。」
「むぅ。おじさんじゃない。・・紫苑≪シオン≫と14歳離れているだけだから・・おっ・・お兄ちゃんになる。」
14歳離れてたら相当だとは思いますが、本人がそういうならいいでしょう。私自身まだおじさんとは思いたくないですし。14歳差ということは11歳ですか。まだ小学校4、5年生くらいですね。
「フフ、有難う御座います。私のことはカイトとでも呼んでください。」
「・・むう。分かった。カイト。」
プクッとほほを膨らませて答えるシオン。何か不満なことでもあったんでしょうか?
「カイト。」
「はい。なんですかシオン。」
「・・パパ。ここにそのままにしておきたくない。お墓を作ってあげたい。」
「そうですね。私もこのまま野ざらしというのはいくらなんでも可哀想だと思いますが、ここまで損傷の激しい亡骸を移動させるのは難しいです。」
シオンが悲しそうに顔を伏せますが、話は最後まで聞いてください。
「移動させるのは難しいですが、ここで火葬して葬るということであれば可能すね。」
今度は顔を上げました。心なしか嬉しそうです。
「ただ、今は火葬する準備もないので今すぐにというわけにはいきません。モンスターもいますので、出直す必要がありますがよろしいですか?」
「・・モンスター?」
「あなたが先程言った怪物のことですよ。ほら、私が倒した死体もあります・・し?」
あれ?確かに3体倒したはずですが、いつの間にか消えています。代わりに死んでいた場所にシオンの手のひらくらいの黒光する石が転がっています。
シオンも辺りを見回していますが、
「・・いない。」
「ですね。確かに倒したはずなんですが・・いや、消えた?そんなはずは・・。いや、しかし・・。」
ブツブツと思考が巡りますが、答えは出てきません。
「・・いないならいい。」
「まぁ考えても答えは出ませんし、また余裕がある時にネットで調べてみます。」
「ん。」
肯定の返事を短くするシオン。
「倒したモンスター以外にも何が出てくるか分かりませんし、火葬の準備をする為にも一旦ここを離れましょう。」
「・・ん。分かった。」
お父さんの亡骸は車のトランクを調べた際に見つけたブルーシートを被せ、一度その場を後にしました。こうして私は幼くともしっかりした仲間を見つけることができましたが、どちらかというと保護者のほうがしっくりくるかもしれません。が、まだ独身の美空で保護者は嫌なのでそれは断じて認めません。えぇ、認めませんとも。
拙い文章ですが読んでくださって感謝しております。
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次回は柊 紫苑のサイドストーリーとなります。
文体を変えており、紫苑の感情がよく分かるように頑張ってみます!
よろしくお願いします。