孤独
孤独が好きだった。
誰かと一緒なんて、鬱陶しくて、面倒くさいこと。
そんなのをあえて好むやつとか。
俺には理解なんてできないことだった。
ある晴れた日だったと思う。
誰かが、隣に座った。
……誰だよ?
うざったい……煩わしいな……。
俺は望まない。
誰か、他人といることなんて。絶対に。
「本当は、怖いんでしょ?」
唐突に、そいつが言う。
顔は俺を見て微笑んでいた。
――こいつは、なにを言っているんだ?
怖い……?
なんで怖い? なにが怖い?
俺がなにを恐れているっていうんだ。
「本当は、独り取り残されるのが、怖いくせに」
そいつはそのまま続ける。
俺は顔を逸らした。
違う。
俺が望んでいることだ。
独りが好きなんだ。
「いつか訪れる別れを、恐れているんでしょ。
なら、最初から出逢わないほうがいいって。
そう、思っているんでしょ?」
……恐れ……?
俺は、恐れていたのか?
一緒にいることで、人の温もりを知ってしまって。
でも、いつか必ずやって来る別れに。
俺は、恐れていたのか?
顔を少しだけ上げた。
……本当は――
知っていた。
本当は知っていた。
本当は、孤独が好きでなくて……。
本当は、孤独を恐れていた……。
だからこそ、あえて孤独でいたんだ……。
そんな俺に――
「恐れる必要はないよ。
別れのかわりに、また、新たな出逢いが待っているはずだから。
ほら。
今、このときのように。
出逢いも必ず訪れるから……」
顔を上げて、隣のそいつを再び見た。
そいつの微笑みは、先ほどよりも柔らかく、そして、愛おしく感じた。
――そして、それから。そいつは今でも俺の隣に座っている。