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時を彷徨い  作者: 宮沢弘
5/9

500年まえ

 また永い時を彷徨った。ハームの墓へも行ってきた。もうそれとはわからなくなっていたが。ともかくこのあたりだろうという場所に花を供え、ハームが使っていた古い言葉で祈った。神にも彼にも。そして教えてくれとも。だが、神からも彼からも応えはない。

 そうしてビオスと過した街へと戻って来た。そこでどれほどの時間を過ごしただろう。巨大な劇場がゆっくりと崩れていくのも見た。ハームとビオスが言っていたのであろう未来も見た。だが、それでも私の体に異変はない。


 大きな商家と知り合いになった。古い言葉が役に立った。その商家のつてで、古い言葉で書かれた文書を読みもした。もしかしたらビオスは急いでしまったのかもしれない。新しい時代が始まろうとしているように思った。

 奇妙な道具もいくつか見せてもらった。木で作った長い坂にボールを転がす。そうすると坂の上にいくつか付けられたベルが一定の感覚でチリンチリンと鳴った。あるいは穴のあいた板が付いた妙な棒も。遠い星が見えた。

 昔、ビオスと会った島やその周辺での議論ほどに、どれほどこれが役に立つのかはわからない。ただ、無関係ではないと思う。おそらく車の両輪のようなものかもしれない。私の理解はうまく追い付かなかったけれど、確かになにかが新しく始まろうとしているのだとはわかった。

 しばらく見なかった本も見かけるようになった。手で書くのではなく、道具が書くのだという。それに古い本も見掛けるようになった。僻地から古い本を何冊も持ち帰ってくる人たちがいた。これも商家との付き合いのおかげだが、古い本を読む機会にも恵まれ、たまには翻訳のようなこともした。本を書いた人の名前や、本の中に登場する人の名前には、懐しいものもある。そう言えばこんなことを言っていたなという場合もあれば、書いた人は何か誤解しているのではないかと思える場合もあった。


 いろいろと興味を惹かれる事柄があった。新しい道具を見たり、あるいは古い本を読んだことで、少し気持が浮かれてきたのかもしれない。その商家との繋りも保ちつつ、また少し旅をすることにした。ハームとビオスがいたのだから、他にもいるのではないかと思ったからだ。


 これまで行ったことのないくらい北へも行った。海を渡って島へも行ってみた。確かに私だけではなかった。私とハームとビオスだけではなかった。北ではドーグラスと出会い、西の島ではコナーと出会った。どちらも少なくとも最初はあまり穏かな出会いではなかったが。


 ドーグラスと出会って、奇妙な話を聞いた。「同類と出会ったら、首を落せ」と伝えられているという。あるいは「生き残るのはただ一人」とも。そして「生き残った者にはプライズがある」とも。

 西の島へはドーグラスと一緒に行ったのだが、そこでコナーと出会った時は傑作だった。コナーは私たちの事に気付くと、剣を手にとり、"They can be only one!" と叫んで突進してきた。ドーグラスも彼の言葉で同じ意味のことを叫び、コナーの剣を受けた。だが、力量の差は明らかだった。コナーはドーグラスに殴り倒された。ドーグラスはコナーの剣を受ける時にしか彼の剣を使わなかった。

 コナーと出会った時にも、ドーグラスと会った時と同じことを言っていた。

 伝えられているということは、彼らの地方にも稀に現れていたのだろう。しかし、私はそういう話は聞いたことがなかった。ドーグラスとコナーが使う言葉はどことなく似ている。それが関係しているのだろうか?

「確かに首を落すというのは試したことがないな」

 ドーグラスもコナーも、私がそう言うとふんと鼻で笑った。だが、どちらもせいぜい一、二回、そういう経験があっただけだった。

「それで何か起こったか?」

 二人とも期待外れだったと答えた。

「そうだろうな。頭が粉々になったはずの者に会ったことがある。だがすぐに生き返っていた。まぁ首を落せば、さすがに死ぬかもしれないな」

「では、プライズとは何だ?」

 私はハームとビオスを思い出した。

「プライズ。そう呼べるなら、そうだな。私たちにとってはプライズだろう」

 二人ともさらに問い詰めてきた。

「いや、プライズを受け取った者を見たことはある。だが、私には何がプライズなのかはわからないんだ。ただ二人とも救いだと言っていた」


 ドーグラスとコナーとは、たまには会うという約束をして、別れた。


「生き残るのはただ一人」" They can be only one!" と、「生き残った者にはプライズがある」は"Highlander" から使っています。


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