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如意宝珠  作者: 茉井華
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始まりの前

宮廷に着いた琿春を待っていたのは・・・



想像を絶する光景だった。


琿春の目の前には四肢切断された成鈺帝と万貞兒が全裸で放置されていた。


二人は辛うじてまだ息があるが、目は虚ろで口からは涎を垂らしていた。


「・・・」


琿春は思わず顔を逸らす。


すると、横にいた曹嶔はニヤリと厭らしい笑みを浮かべて、


「おやおや?いけませんよ琿春様、ちゃぁんと見届けなくては・・・大罪人の末路をね・・・」


と言った。


「たい、ざい・・・にん?」


「そうですよ、琿春殿」


後ろを振り向くとそこには・・・


「皇太后様・・・?」


成鈺の母である皇太后の周氏がいた。


「万貴妃は自分に子供ができないという理由で他の妃嬪の子達を手にかけてきました・・・更には・・・畏れ多くも皇后のみならずこの私をも毒殺しようとしたのです。それだけではありません、この女狐は宝石に異常な興味を示し、宦官の王直や梁彷結託して宝石を得るために様々な賄賂をとっていたのです。到底許される行為ではありません、にも関わらず陛下はこれらを全て知りながら黙認していたのです。こんな愚かな者は私の息子でもなんでもありません」


皇太后の恐ろしく冷たい目に琿春はゾッとした。


(本気だ、本気で自分の息子を、殺す気なんだ・・・)


「・・・それで?何故、私は此処に連れてこられたのですか?」


必死に平静を装って琿春は皇太后に訊ねる。


「それは勿論、貴方に皇帝になっていただく為ですよ」


「・・・え・・・?!」


予想外だった。


そもそも自分が皇帝になるなど、これっぽっちも考えた事はなく、そんなものは無縁だと思っていった琿春にとって、それは死刑宣告と同等だった。


「ま、待ってください!!私に務まりません!私は皇帝などという器ではありません!!今すぐお考え直しを「いいえ、考え直す必要などありません」


琿春の言葉を威圧的に遮る皇太后に何も言えなくなる。


「もし、それでも嫌だと駄々をこねると言うのであれば・・・」


皇太后は曹拮祥と曹嶔に目配りをし・・・


そして・・・



「琿春様っ!!」


ジャッ


曹拮祥と曹嶔の剣が琿春に向けられ、賢德が慌てて琿春を庇う。


「これは何の真似ですか・・・?」


皇太后は小さく微笑むと、


「見た通りですよ。従わぬのなら切り捨てるまでです」


そう冷たく言った。


「さぁ、此処で誇りを持って無残に死ぬか、それとも私の傀儡となってまで無様に生きるか・・・お決めになってください、琿春殿」


にっこりと微笑みながら皇太后は琿春に恐喝まがいの選択を迫る。


「・・・」


琿春は屈辱のあまり血が出るくらい強く拳を握る。


そして・・・


「・・・わかりました・・・私も死にたくはありません・・・」


琿春は自分の無力さを痛感し、今は従うしかないと自分に言い聞かせ、傀儡になることを決心した。


皇太后は満足げに頷き、右手を上げる。


曹拮祥と曹嶔は剣を鞘に戻す。


そして・・・


「今日をもって、朱炆珪殿の遺児、朱琿春殿が皇帝にご即位いたします!!皆の者、新しい皇帝陛下に忠誠を誓いなさい」


「曹拮祥、皇帝陛下に心からの忠誠を誓います」


「曹嶔、父に同じく皇帝陛下に心からの忠誠を誓います」


「皇帝陛下万歳!皇帝陛下万歳!」


と言葉とは裏腹に見せかけの忠誠を誓った。


「さぁ、皇帝陛下、最初の仕事です。この者らの処刑を申し渡してください」


皇太后はにこやかにそう言う。


勿論、その目はゾッとするほど冷たい。


「わ、私は・・・」



もう、そこから琿春の記憶はない。


自分が一体何を言ったのか・・・。


自分の下した判決であの二人がどうなったのか・・・。


もう何も覚えていないという・・・。

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