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如意宝珠  作者: 茉井華
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始まりの前

弘樘を引き取った統珍帝は弘樘が8歳の時に38歳で崩御してしまい、弘樘は再び後ろ盾を失ってしまう。


更に、その頃弘樘の母も流行り病で衰弱していき、とうとうこの世を去ってしまう。


これで完全に弘樘は独りぼっちになってしまった。


弘樘を統珍帝の長子で弘樘の義理の兄だった、今は皇帝に即位したが子がまだいない朱成鈺しゅせいぎょくの養子にどうかという話もあったが、これに反発したのは皇后ではなく妃である万貴妃こと万貞兒ばんていじだった。


「私がいずれ陛下のお子を産むんだから、養子なんて不要ですっ!!」


貞兒は皇后ではないものの、成鈺の寵愛を一身に受けていたため誰も逆らえずやりたい放題であったため、結局この話は無効に終わった。


この時、10歳の子供だったが、朱弘樘はよく周りの目を気にしていた。


自分は周りから快く思われていない人間だと、解っているからだ。


特に、萬貞兒にとって自分は目障りで要な人間だと理解していた。


そして最終的にそんな孤独な幼子を憐れに思った成鈺の弟、朱清潾せいりんが弘樘を引き取った。


清潾は資質に優れ、仁孝に厚い人であったため民衆の生活を第一に考える人物であった。


そして、養子となった弘樘にも優しく接し、文学に熱心だったため暇をみては弘樘に学問を教えていた。


弘樘は清潾の養子となってから琿春こんしゅんという名を与えられ、以後彼は朱琿春と名乗るようになる。


清潾はよく琿春に、彼の曽祖父朱標と弟の朱爽の話を聞かしては、普段からこう言い聞かせていた。


「兄弟は争わせたりさせるものではない、手を取り合い、意見を述べ、時には諌め、時には庇い合い、助け合っていかなくてはならない」


しかしその日は、清潾はこう続けた。


「だから私は兄上の役に立てれるように勉学に励んできた、が、今の兄上は万貴妃に夢中になりすぎている・・・それがとても不安だ」


「不安、ですか?」


「ああ、万貴妃は兄上の権力を傘に民の生活も省みずやりたい放題、贅沢三昧だ。このままでは・・・この国は終わりだ」


「え?」


「民が居なければ国は成り立たない。この国の食糧は農民たちが汗水流して造ったもの、皇族はそれを食って生きている。農民の方がよっぽど国を支えているというのに・・・今の兄上は・・・」


彼はため息を吐き、そして琿春に向き直りこう言った。


「もし、私に何かあったら・・・この国を頼むぞ」


「え・・・?」


琿春には清潾が何を言っているのか理解できなかった。


「何を仰るんですか?義父上はまだお若いではありませんか・・・それに・・・僕みたいな子供にそんな大役が務まるとは、到底思えません・・・」


「琿春・・・お前もいつか大人になっていくし私も年老いていく。それに・・・父上だって38で崩御なさった・・・自分がいつ死ぬかなんて、誰にも予測できないものだ・・・」


「・・・」


「それに・・・お前にはその優しさがある。十分だ」


清潾の言葉に目を見開く琿春。


「優しいだけでは国を守るなんて・・・無理です・・・」


清潾にそう反論するも、


「確かに、優しいだけでは国は守れない。だが・・・」


清潾はある本を見せた。


「これは?」


「此処よりずっと東の東・・・極東にある小さな島国について書かれている」


「島国・・・瑞穂ずいすい?」


「ああ、向こうでは瑞穂ミズホと言うらしい」


「瑞穂・・・」


琿春は本をめくる。


その本には、瑞穂とは、瑞々しい稲穂のことで、稲が多く取れることから瑞穂の実る国ということで、「瑞穂国」と呼ばれるようになったと、あった。


元々そこは葦原という名で穴牟遅なむじ王という人が納めていたが、太陽の方向に進んでいた磐余彦いわれひこという者が現れ、磐余彦の德を見た穴牟遅王は国を自ら譲りった。


これを穴牟遅王の国譲りと言い、ずっと民衆に語りつかれてきた。


磐余彦は王から直に国を譲られたため磐余彦は大王おおきみと呼ばれた。


それからずっとその一族は瑞穂の国を統治してきた。


初の女性統治者、炊屋媛かしきやひめが即位したとき大王から皇尊すめらぎのみことと名称が変わった。


千年以上経っても皇尊は民への慈しみを欠かさない。


故に民も皇尊に敬意を胸に抱きながら生きているのだ。


そう書かれていた。


「・・・こんな国があるのですね・・・」


「ああ、優しいのは頼りなく見えて、実は最も大切な事だと私は思う、どんな状況であれ困難に陥っている者を見捨てるのは簡単だ、だが・・・どんな状況だったとしてもそれを押して助けに行くことが出来る者は人間の鏡だ、優しさとは弱くなどない、寧ろ優しいからこそ本当に強くなれるものさ」


「・・・そういう、ものなのでしょうか・・・?」


「さあな・・・これはあくまでも私個人の考えだ・・・正解不正解もあるまい」


「・・・・・・」


「琿春」


「はい」


「この国の将来を・・・頼むぞ・・・」


「はい・・・」


清潾はこの6日後突如病に倒れこの世を去る。


この時、琿春はまだ15になったばかりだった。



後に琿春はこの時の事をこう語っている。


義父はこの時自分の死期を悟っていたのかもしれない・・・と。

書き直すことにします。

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