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如意宝珠  作者: 茉井華
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始まりの前

ねいの国は大国であるこうに挟まれた小国であったが、豊かな国だった。しかしそれ故に寧の国は常に強国に狙われていた。


その為、一度は寧の国は獅の属国となった事もあったが、百数十年程前、当時寧の王であった朱興璋しゅきょうしょうは親友である李琺長りほうちょう将軍を引き連れ獅に戦いを挑み、見事勝利し属国から完全な独立国となった。


そして興璋王は皇帝を名乗るようになり、興璋帝と呼ばれた。


しかし・・・


皇太子の朱熛しゅひょうが急な病で倒れてから、寧の国に暗雲が漂い始めた。


元々、朱熛は温和で心優しい青年で、周囲からは頼りなく思われていた。


だが、そういう性格だったからこそ、父や弟達が今まで付いてきてくれた部下を粛清しようとするのを止めていたのである。


そして、彼の死が皮肉にも自分の一族を奈落の底に突き落とす切欠となってしまうのであった。


その後、興璋帝までもが死去すると、朱熛の子、朱建炆しゅけんぶんが皇帝となる。


朱建炆こと建炆帝は、まず興璋帝の息子の中でも特に知勇兼備ちゆうけんびの皇子と称された、叔父の朱珀しゅはくを謀反の企みありとして処刑しようとするのだが、朱珀は自ら宮殿に火をかけ、「私は先帝の子である!不幸にも兄の子の手にかかろうとしている!だが敵の手で殺され辱めを受けるくらいなら、私は自らの手で死のう!」と叫んで壮烈な焼死を遂げた。


そしてこの知らせを受け、甥と闘う決意をしたのが朱珽純しゅていじゅんであり、彼は軍師であり親友の姚広衍ようこうえんとともに反旗を揚げた。


初めは僅かな兵力であったが、次々と敵を打ち破っていった。


一方、珽純の宮殿には建炆帝の軍が押し寄せていたが、珽純の妻、徐貞靜じょていせい率いる兵士の妻らとともに鎧を着用し、奮戦したという。


そして三年の月日を経て・・・


珽純の勝利に終わり、建炆帝とその長男は首をはねられ死去。


こうして建炆帝の時代は終わりを迎え、新たに珽純が皇帝となった。



新たな時代となって最初に珽純帝がしたことは、建炆帝についた者たちの粛清である。


まず、皇后となった貞靜の弟、徐輝恭じょききょうは建炆帝についたため、珽純帝に粛清されるはずであったが、貞靜皇后が必死に懇願したため、死は免れた。


次に、わずか二歳であった建炆帝の二男、朱炆珪しゅぶんけいは珽純帝により助命はされたが、庶人に降格されて、皇族の籍を剥奪され、以後はずっと幽閉されて育つことになる。


粛清が終わると、珽純帝は都を晉寧しんねいから琭豊ろくほうに変え、この後珽純帝は建炆帝の存在を歴史から抹殺しようと試み、まず建炆が皇帝であったという記録をすべて燃やさせた。そして皇帝直属の部下達に宮中から庶民までの建炆帝に関する言動を監視させた。


さらに、建炆帝の存在の抹殺の為に父帝が行った恐怖政治を珽純帝は自らの簒奪さんだつ隠蔽いんぺいするために実施し、民は色々なことに気を遣い、常に怯えて暮らすことになる。





それから約五十年もの月日が流れた。


六代目皇帝、朱統珍しゅとうちんの時代になり、祖父の珽純帝によってずっと幽閉されていた朱炆珪は五十二歳にして漸く許され、皇族として復帰し、妻を娶り行動の自由も許されたのである。


そして翌年、炆珪は男の子を授かったが、その四年後、五十七歳でこの世を去る。


後ろ盾のない炆珪の遺児を憐れに思い、統珍帝はその子を養子にした。


その子の名は、朱弘樘しゅこうとうといい、次の章から登場する主人公の父にあたる。



寧の国の皇帝および皇族達の何人かは明の皇帝および皇族達をモデルにしています。


例、興璋帝は洪武帝、朱熛は洪武帝の息子朱標、建炆帝は建文帝、炆珪は朱文圭・・・など

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