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亜利奈のストレス発散方法

 パソコンでプログラミングした経験があるならば、どうしても上手く作動しなくて苛立ちが募る経験もきっとあるだろう。


 デン! 『ERROR!』


 それも時間に余裕が無ければストレスは倍増しだ。

「あーもーっ!」

 こういったストレスをどうやって解放していくかが作業効率に直結するのだが、亜利奈の場合はわりと直情的に何かにぶつける方法を選ぶ。

 まあもちろん、目の前にあるコンピューター機器に怒りの鉾先を向けてもいい事が無いばかりか、なんら解決しないため、代わりに力いっぱい八つ当たりできる〝おもちゃ〟を用意する事が多い。

「いう事聞いてよ、ったく!」

 亜利奈は手元にある投擲ナイフを掴み、的に向けてフルスイングする。


 ひゅーっ、――サクッ!


 どこにどう当たったかどうかはこの際重要では無い。

〝投げるもの〟と〝受け止める場所〟があればそれでいい。

 亜利奈の傍にはナイフが十本単位で大量に置いてあり、作業に失敗するたびそれが空を裂く。


 デン! 『ERROR!』

「今度はどこが悪いってのっ!」

 ひゅーっ、――サクッ!


 デン! 『ERROR!』

「もー、亜利奈に恨みでもあるのっ!?」

 ひゅーっ、――サクッ!


 亜利奈の処理速度はその道の人間が見れば卒倒するレベルの神がかり的なスピードなのだが、だからといって万事うまくいくわけではない。

 ――早くしないと、ユウ君が危ないかもしれないな。

 そんな焦りが亜利奈の脳裏に過り、かえって苛立ちを募らせる。

 まあ本格的に危険な状況であれば彼の持っているE:IDフォンが警報を届けてくれるはずだから今のところは大丈夫だと思うが……。


 デン! 『ERROR!』

「ったく、もぅっ!!」

 ひゅーっ、――サクッ!


 ナイフをかれこれ二十本は投げたころ。

『compile』

 亜利奈の制作した新たなプログラムがやっと彼女の意図を汲んでまともに動作するようになった。

「……あぁーっ。

 やっと出来たーっ」

 亜利奈は大きく息を吐き、データーを祐樹のE:IDフォンに送信する。

 パチンと指を弾くとパソコンは目の前から姿を消した。

 専用の異空間へ飛ばされたのだ。

「さてさて、ゆっくりしてる暇ないぞ、亜利奈」

 そんな独り言を纏い、亜利奈は活を入れるべく自分の頬を叩く。

「大好きなユウ君のためにもう少し頑張らないとっ!」

 そして慌ただしく夫人の部屋を後にした。






 ――バタン。

 亜利奈の扉を閉める衝撃で、部屋の隅にあった何かが力なく床に倒れる。




 全身に刃が突き刺さった、この部屋の主の亡骸だった。









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