シルフィーナの軍勢
淫魔城、その玉座で優雅に寛ぎながら美男美女の部下たちに命令を下しているのは、ドラグニアに対し先ほど宣戦布告をした淫魔の女王シルフィーナ。
彼女は戦の前だというのに、非常に落ち着いており、その姿からはまるで自分の敗北を考えていないかのようである。
配下たちが部屋から出て行ったことを確認すると、女王は「ふう」とため息をついて、
「ふふ、これで準備はおしまい。
まっててね、わたしのニアちゃん」
と言いつつ、少女の写真に「ちゅっ」と口づけをして、悦に入っていたが、すぐに表情を戻して、
「ところで、いつまでそうして隠れているつもりなのかしら?」
と、話しかける。
すると、陰から「やれやれ、仕方ないですね」と言いつつ、16歳くらいの少年がひょっこりと顔を表す。
巨人族の王ロキである。
少年は女王に対し「これでも隠密魔法には自信があったんですけどねぇ」と悪びれることもなく答える。
「あら、ロキの坊やじゃない。
わたし、あなたはあまり好みじゃないの。
だから……次、やったら殺す」
ロキは「こわいこわい」と肩をすくめる。
「それとも、わたしに殺してほしいのかしら?
なら、ニアちゃんの後でいいなら相手をしてあげてもよくってよ」
「勘弁してくださいよぉ、僕はねぇ、魔王とかそういうことには興味ないんですよ。
僕はねぇ、この世界がもっと面白くなればそれでいいんですよぉ」
相変わらずへらへらした態度のまま女王に対応すロキ。
その態度に若干、イラッとするシルフィーナ。
ロキの方はそのことを知ってか知らずか、
「じゃあ、お邪魔みたいですので、僕の方はおいとまいたしますか」
と言って、さっさと帰っていった。
彼女は彼が何しに来たのか分からず首をかしげるが、部下たちの準備完了の声を聞き、頭を切り替えるのだった。
そして、淫魔族総勢1000名がドラグニアに襲い掛かることになる。