聖魔の惨殺姫
レオンハルト・ドミニオンとは結局、この世界にとって一体どういう存在だったのだろうか。
これはのちの世でも幾度となく繰り広げられてきた論争の一つである。
ドラグニオスとの戦いに敗れ、死にゆく彼はレーヴァテインに祈った。
自分を裏切った世界すべてに復讐を――と。
そのとき、彼の心はアリシアに囚われる憎悪の塊であるロキと世界の統べる神としてのレオンの二つに分離した。
二つの魂は長い年月をかけてそれぞれの目的のために動き出した。
それがのちに言う三世界大戦のはじまりである。
当時の生存者たちは口をそろえて言う、「あれは本物の神であった」と。
しかし、専門家たちはそれに対し否定的な姿勢を示す。
それでは神であるレオンハルトが魔王ドラグニア・ランフォードに負けた理由が説明できないからである。
この並行する議論が解決される日は果たして来るのだろうか……
==============================================
あのレオンハルトとの戦いから一ヵ月が経過した。
オレはあの後、様々な有力魔族にあいさつする日々を送っていた。
魔王として皆へのあいさつは大切だとか何とか……
レオンとの戦いはあの後すぐに終わった。
レオンはオレに跳ね返された「神々の黄昏」の攻性粒子を浴びて崩壊した。そのとき、ヤツは「ようやく役目から解放される」と言い、どこか晴れやかだったように見えたのは気のせいだろうか?
そんなこんなで今日、このオレの魔王襲名式が旧ガイアス城で行われているわけだが……そこは魔界、あわよくば自分が魔王になろうと皆完全武装でお出迎えです。
「おい、ドラグニアとやら、ワシは地獄連、四代目獄長、ダンキュウっつうもんじゃあ、まさかワシに黙って魔王を名乗ろうってんじゃねーだろうなぁ」
……なんか「ヤ」な感じの人たちがワラワラやってきたよ。
マジで怖い、帰っていーですかー?
「ふん、ならずどもが、貴様らなんぞよりこのオレが魔王に相応しいわ!」
今度は龍人の皆さんの登場です。
「貴様ら、魔王に相応しいのはワシの姪っ子のニアちゃんに決まっておろうが、馬鹿どもが、さっさと帰るがいい!」
あれー、あそこで叫んでるのって、元七候補のオジリアじゃあないんですね、あいつ、いつの間にオレ側になったの?
そんな感じで会場がごたごたしてきた。
「ドラグニア様、いかがいたしましょう?」
ガイアスがオレに意見を求めてきている。
いや、どうするったって……
「あらガイアス、そんなことも分からないの、こういう馬鹿どもには力ずくで分からせるに決まってるじゃない」
当然と言うかんじでシルフィーナが答えてくる。
いや、どこの常識だよ。
ガイアスも何か「うむ、そうであるな」っておい、お前まで説得(物理)しちゃうわけ!?
もう、収集がつかなくなった場を見てオレは何となく微笑むのだった。
聖魔の惨殺姫 完




