神界への道
ゲートを抜けた先にあった光景にオレたちは圧倒される。
「これが世界樹『ユグドラシル』であるか……」
ガイアスが言葉にならない感想をもらす。
どこまでも高くそびえる巨大で神々しい大樹。
その周りには目視できるほどのマナの粒子が螺旋を描き天へと昇っている。
世界樹「ユグドラシル」この大樹こそ世界の根源でありすべての世界のマナを供給する存在。
オレたちが今いるのはその第二階層にあたるらしい。
魔界を含む三世界は第二階層、そして今向かっている神界は第三階層に在る。
二階層から三階層に行くには虹の橋「ビフレスト」を渡る必要があるのだそうだ。
ドラグニオスいわく、
『ユキ……いや、聞いた話によると橋を渡るのには常人の足で1年くらいかかるらしい」
「1年!? そんなに歩くのか!!」
『常人の足ではって言ったろ。
オレたちならまあ、1日ってとこだな』
……まあ、そんなわけでオレたちは虹の橋を上っているわけですが、はい、飽きました。
だって、ずっと上ってるのに終わりが全然見えないんだぜ、肉体よりも先に精神的に参りました。
「まさかこれほどにきついとは……」
「もう無理、動きたくな~い」
さすがの二人もバテバテになってその場にへたり込んでいた。
それに対し、ドラグニオスが『休憩するのはいいが、絶対に橋から落ちるなよ』と忠告する。
いわく、この橋から落ちると亜空間法則により一気に最下層、深淵世界「二ヴルヘイム」に落ちてしまうらしい。そうなったら元の世界に戻れる保証は無いとのこと。
そういうわけでオレはしばしの休息についていたわけだが、それを邪魔する声が一つ。
『やはり来たね、ドラグニオス、
そしてその娘、ドラグニアとその配下たち』
『レオン……』
出現したレオンは陽炎のように薄く揺らめいている。
どうやら本人というよりは思念だけを飛ばしているというのが正解のようだ。
『今はこちらも少々取り込み中でね、悪いけど君たちを神界に行かせるわけにはいかないんだ』
そのとき、橋にひびが発生する。
「馬鹿な!? 『ビフレスト』にひびが!!」
「冗談でしょ!?」
『あははは、どうかな、僕のプレゼントは。
「今」の僕にとってこんなことは造作でもないんだよ!』
『まさか、てめぇ、神王の肉体を!?』
崩壊を始める虹の橋。
驚愕するオレたちを一瞥し、レオンは『じゃあ、たどり着く事が出来れば相手してあげるよ、もっとも生き残ることもできないだろうけどね』と言って消えた。
くそ、完全にしてやられた。
「ドラグニア様、自分たちには構わず先に行ってください」
「そうよ、ニアちゃんだけなら「邪神降臨」でこの状況でも神界までたどり着けるはずよ」
そうだ、「邪神降臨」これを使えば……
オレはすぐに「邪神降臨」を使う。すさまじいエネルギーが肉体を作り変えていく。
それをみてホッとする二人。
だが、そのあとにオレが行ったことは二人の予想とはかけ離れたものだった。
オレはその「邪神降臨」を二人に譲渡したのだ。
エネルギーを失い、元の少女の姿に戻るオレ。
それを二人は唖然とした表情で見ていた。
オレの飛行魔法を無視して落下するカラダ。
そうしてオレは意識を失った。




