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聖魔の惨殺姫  作者: マシュマロ悪魔族
第二章 神々の黄昏
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番外編 天界軍の最後

本編では語られなかった三鬼衆と天界軍の戦いです。

 三鬼衆が動き出そうとしたときすでに、任務の大半が達成していた。

 彼らの王ドラグニアの攻撃、その余波によって天界軍は崩壊したのだ。

 三人からしたら出鼻を挫かれた形になった。


「わー、すごいね。

 さすがドラグニア様だよ」


 妖鬼は尊敬のまなざしでドラグニアを見つめる。


「だがよぅ、俺たちの出番が無くなっちまったんじゃねーのか?」


 つまらなそうに酒鬼が言う。

 陰鬼はいつも通り冷静に状況を確認する。


「出番など無くとも我が軍が勝利するのなら何でもいい。

 だが、今回に限っては少しだけ我々の出番があるようだぞ」


 陰鬼の言葉を聞いて酒鬼も周囲の魔力を感知してみる。

 すると、どうやらやつらのなかでも上位の者たちは結界を張って身を守ったらしい。

 それを知った酒鬼の顔に歓喜の色が浮かぶ。


「いいねぇ、つまりはつええヤツだけ生き残ったって訳かい。

 結構結構、むしろ余計な雑魚に構う手間が省けてちょうどよかったぜ、ドラグニアさまさまだな!」


「おしゃべりはそこまでだ、いくぞ、すべては我らが主ドラグニア様、そしてガイアス様のために!」


「「すべては主のために!!」」


=============================================


 天界軍総指揮官、ミカエル・ドレットノートはその壮絶な状況に息を飲んだ。

 彼は天界最強の称号である「ミカエル」の名を持つ歴戦の戦士。

 かつては一人で天界最強であるA級モンスターから民たちを守り、英雄となった男だ。

 そんな彼からしてもドラグニアとロキの戦いは次元が違った。違い過ぎた。


「隊長、あれは一体どういうことですか!」

「たとえ最悪のA級モンスターが相手でも我らが力を結集すれば倒せる自信がありました。

 しかし、あの化け物どもには勝てない……次元が違いすぎる……」

「我々天界軍が三世界最強では無かったのですか!?」


 部下たちからの悲鳴。

 いや、悲鳴だけならまだいい、天界軍は二人の戦いに巻き込まれ崩壊してしまっている。

 数千万を誇った偉大なる軍勢が、今や500を下回っているのだ。

 ミカエルも二人の戦いを見ようとするが、右に衝撃波が発生したと思ったら、今度は左に閃光が光り、最強戦士をもってしても視覚することすら叶わないのだ。

 これが魔王、これが魔界なのか……


「感知結果によると彼がこの部隊のリーダーのようだな」

「おーし、じゃあとっとと殺るかい!」

「あ、抜け駆けはズルいよ! ボクだって思いっきり暴れたいのに!」


 そんな彼の耳に聞こえる三人の魔族の声。

 陰鬼たち三鬼衆が天界軍の前に現れたのだ。

 愚かな、ミカエルはそう思った。

 たとえ数を500に減らそうとも残った天界の戦士は皆戦士長クラスであり、5人で挑めばAランクモンスターすら勝てないまでも足止めが可能、10人なら勝利すら見込める強者である。その最強500名にたったの三人ほどで立ちふさがろうとは……

 彼は腰からけがれ無き純白の剣を取り出し、三人に突きつける。


「けがらわしき魔族どもよ、我が名はミカエル・ドレットノート、天界最強の戦士である。

 誇り高きミカエルの名において貴様らを……」


「おい、誰があいつの相手をするかジャンケンしようぜ!」

「よーし、負けないぞ~!」

「くだらん、お前たちが確実に倒すのであればオレはどうでもいい」


 ミカエルの口上を無視してジャンケンを始める三鬼衆。

「やった! ボクの勝ち~!!」と喜ぶ妖鬼。

 酒鬼は面白くなさそうに「ちぃ、俺が雑魚の相手かよ」とぼやく。

 ミカエルはその人を馬鹿にしたような態度に怒りが爆発しそうになるが、その鍛えられた鋼の意志で押し留める。

 まずはこの三鬼をねじ伏せ、天界に戻り態勢を立て直すのだ。


「愚か者が、身の程と言うものを教えてやる!」


 音速の剣が妖鬼を捉える。

 しかし妖鬼はいともたやすくその剣を指でつまみ、「遅いよ」と言って手から取り出したおもちゃ、いや、彼の武器であるヨーヨーがミカエルの頭部を破壊した。


「あがげ……つよ……すぎるぇ……」


 こうして天界最強の男は死んだ。

 それからすぐに雑魚討伐を終えた陰鬼と酒鬼がやってきて「どうだった」と聞くが妖鬼は「特に何も」と答えた。

 こうしてドラグニアの知らぬ間に天界軍は消滅したのだった。

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