魔剣ダーインスレイブ
オジリアは困惑していた。
あのドラグニアが天使たちから自分をかばったのだ。
先ほどの攻撃、「ホーリーアロー」の一斉照射は、魔力を使い果たしたオジリアに耐えられるものではなかった。
オジリアが死を覚悟したとき、一瞬ドラグニアと目があった。やつはきっと自分のことを自業自得と思っているだろう。あるいはいい気味だと笑っているだろうか。
しかしその直後のドラグニアの行動は、オジリアの考えたそのどれとも当てはまらないものだった。
自分をかばい負傷するドラグニア。
それをみてオジリアは驚愕する。
オジリアは幼いころに母に捨てられすべてを失った。その後、彼は血のにじむような苦労を味わった。謀略、裏切り、暗殺。あれゆる手を使い、有力魔族の座に返り咲いたのだ。それはすべて兄ドラグニオスひいては自分を見下したすべての者たちを見返すため。
ドラグニオスの死を知ったとき、彼は途方もない虚無感を感じていた。これで兄を見返すことが永遠に叶わなくなったからだ。だが、いや、だからこそ彼は魔王選別戦争が始まったとき、歓喜が身を包むのを感じていた。今度こそ、魔王になり兄を見返して見せると。愚痴りながらもこの戦争を彼は喜んでいたのだ。
そしてドラグニア・ランフォード。順当に勝利を収めていく彼女にオジリアは嫉妬の芽が再び発芽するのを感じていた。
才能と美を併せ持つ兄の娘。
嫉妬に駆られロキの甘言に耳を傾け、その結果がこの様だ。
愚かだ、自分のことながら本当に愚か者だ。
そんな自分をドラグニアは天使たちの攻撃からかばった。
すさまじい光の弓の猛攻に全身を傷つけながら自分をかばい続ける少女。
あれだけ憎んでいたというのに、戦争まで仕掛けるほど嫉妬していたというのに。
オジリアは自然とドラグニアになぜ助けたか聞いていた。
ドラグニアは「自分で考えろ」と言った。
オジリアは耳を疑った。それは彼の人生で無償で助けられるなど一度もなかったからだ。
常に打算と謀略がそこにはあった。
しかし彼女は恩を着せることさえしないのだ。
分からない……分からない……分からない……
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突然どこからともなく聞こえる声。
一瞬、ガイアスとの戦いで聞いた声かとも思ったが違う。
夢で出てきた相手とは別の雰囲気。口調。
何となくだが夢に出てきた相手よりあ頭のネジがずいぶんとゆるそうだ。
『……おい、今なんかオレのこと馬鹿にしなかったか?』
おっと、頭の割に感は良いようだ。
とりあえず聞いてみよう。
「あんた誰?」
すると、相手は『ここだよ、ここ! お前の手に持ってるやつ!』と言ってくる。
手? 手には剣しか握ってないが……
『だからその剣が俺だっての!』
な、何だって~!
まさかしゃべる剣だと!
『ふふん、どうやら驚いているようだな、いいぞ、もっとおどろけ!
この魔剣ダーインスレイブ様をな!』
剣が自信満々に言ってくる。
『オレ様が出てきたからにはもう勝利確定だぜ!
ロキだろうが天界軍だろうが……」
「兄上……もしや兄上ではないですか!?」
オジリアが突如話に割り込んでくる。
って、へっ? 兄上……て、もしかしてこいつ、前魔王ドラグニオス・ランフォードか!
ドラグニオス? は慌てて、
『ばっ、おま、いきなりネタバレっていくらなんでも早すぎるだろ!
空気を読めよ!』
「このふざけた感じ間違いない。
ドラグニオス・ランフォード、兄上、生きておったか!」
二人が言い争いをはじめようとするが、天使たちの準備が整ったようだ。
『おっと、しゃべってる時間はねぇ、ドラグニア、オレが補助するからまずは空の天使たちをどうにかするぞ、『邪龍降臨』改、『邪神降臨』!!』
その瞬間、オレの身体が光に包まれた。




