番外編 大魔導師シンの冒険1
大魔導師シン――魔法使いを志す者でその名を知らぬものはいないだろう。
わずか12歳にしてアークドラゴンの討伐に成功し、史上最年少で「竜殺し」の称号を獲得、さらに人間界の魔法の体系化、第五のマナの発見などその偉業は数知れず。
しかし彼は「世界門の鍵」の研究のさなか突如人々の前から姿を消した。
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森の中を歩く少年と少女の二人。
「ここに大魔導師シンがいるのね」
「うん、オーレンさんに聞いた情報だし、間違いないよ!」
少女の質問に少年が答える。
二人とも15~16歳くらいのまだ成人したばかりの年齢だ。
しかしこの森は一流の冒険家さえ舌を巻くほどの超高難易度のダンジョンなのだ。
決して話しながらのんびりできるような場所ではないのだが……
「って、情報源オーレンさんなの!?
それって怪しさすっごく高いわよ!」
「えっ、そうかな?
アリシアは心配し過ぎだよ」
その返答に、アリシアと呼ばれた少女は深いため息をついた。
「あなたが心配しなさすぎるのよ。
だってオーレンさんって怪しいがコートを着てるような人じゃない」
「でもダインでのオーク大進行では彼の情報が活躍したじゃないか」
「あれはたまたまよ、ほとんどあなたの幸運体質によるものだし……
レオンは少しは疑うことも身に着けるべきよ」
実際、あの事件はオーレンが適当に言った情報を頼りに現地に行ったところ、レオンハルトの幸運が相まってオークの大進行に最高のタイミングで居合わせたというのが正しい。
「で、どうするのよ実際、どうやって大魔導師さまを見つけるつもりなの?」
「それは……やっぱり僕の幸運を頼りに……」
「またそれ?
かんべんしてよ……もう……」」
そんな話をしていると、森の奥から声というか悲鳴が聞こえてきた。
二人がそちらに目を向けると、ワイバーンの群れとその群れから必死に逃げるローブを纏った老人が姿を現す。
「ひええ、だ、誰か助けてくれぇい!!」
「大変だアリシア、お年寄りがワイバーンに襲われてる!
助けなきゃ!!」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
アリシアの静止より早くレオンが動く。
ワイバーンの群れに突っ込むと、手にした銀色に輝くロングソードでワイバーンの首を一刀両断する。
「おじいさん、大丈夫ですか?」
「む、おじいさんだと……まあいいわい、こいつらを倒すのを手伝ってくれんかのう」
「もちろんで……」
レオンが返答しようとしたタイミングでワイバーンたちが一斉にブレスを吐いてきた。
二人に迫る灼熱の炎。
しかし、炎は光り輝く透明な壁に遮断される。アリシアの「ホーリーシールド」が二人を守ったのだ。
「もうレオン、また勝手に変な約束しようとして!!」
アリシアの愚痴にレオンは「ごめんごめん」と返して、再びワイバーンに向かって剣をかまえる。
老人はレオンに向かって、
「このままだと埒があかんのぅ、レオンとやら、少しだけ時間を稼いでくれんか?」
「分かりました」
「また話も聞かずに!!」
三人はやり取りを終えて、それぞれ行動を開始する。
レオンが剣を振るい、アリシアが守る。その間に老人は呪文を唱え始めた。
そして老人の詠唱がこの戦いの終わりを告げた。
「ほっほっほ、待たせたのぅ、括目せよ「ボルケーノバースト」!!」
まるで火山のようなすさまじい魔法がワイバーンたちをまとめて消し飛ばす。
その光景に、レオンたちも「すごい」と思わず口にする。
「ほっほっほ、まあざっとこんなもんじゃのぅ」
「すごい、すごいよおじいさん!」
「確かにこれはすごいわね」
レオンだけでなくアリシアも感嘆する。
それを聞いた老人はふふんと、自信満々に腕を組み、
「そうじゃろ、そうじゃろ、なにせわしこそ『大魔導師シン』じゃからのぅ!」
と答える。
その言葉にレオンは驚き、アリシアは「やっぱりね」と言う感じの表情を示す。
「ほっほっほ、しかしお前たちも見た目に反してなかなかのもんじゃ、わしの弟子にしてやってもよいぞ!」
「本当!? やったぁ!!」
「いやいや、勇者さまが勝手に弟子になるんじゃないわよ」
アリシアの言葉ににシンは驚いて、
「なんと、お前さんたち勇者なのか!?」
アリシアはあらためて自己紹介をすることにする。
「そうよ、わたしは聖女アリシア。こっちの天然なのが今代の勇者レオンハルト・ドミニオンよ」
「はじめまして、レオンハルト・ドミニオンです。レオンと呼んでください、お師匠さま!」
さっそくシンのことを師匠と呼ぶレオン。
勇者と聖女は大魔導師に自分たちの目的を話す。
鍵のかけらを探していること、そのために世界門について研究をしているシンの持つ情報が必要なこと。
シンは二人を見やり、「そうか……すると好都合かもしれんのう」と考えを漏らす。
そして考えがまとまったのか、真剣な眼差しで二人に向かって話す。
「実はのぅ、わしがこの森にきたのも、かけらが目的なのじゃよ。
かけらを集め、世界門――ビフレストを渡る――その目的のためにな。
この奥に目的のかけらがあるのじゃがちとやっかいでのう、そこでお前さんたちの力を貸してくれんか?」
二人はようやく手に入れたかけらの情報に喜び、「任せてください」と答える。
二人の返答にシンは「うむ!」と言って、話をはじめた。
「実はのぅ――」
またまた番外編。
しかも一話で完結しないという……
本編はもうしばらくおまちください。




