VSガイアス戦
「くらえ、轟炎掌!!」
オレは現在、荒野のど真ん中で命の危機に瀕してます。
なんで俺、こんな大男に襲われてるの?
てか、何、あの拳。なんで炎なんて纏ってるの?
魔法? 魔法なの、それ?
「ま、まて、ちょっ、タンマ!」
オレはあわてて、しゃがみこむ。
すると、オレの上を炎の拳が通り過ぎるのを感じた。
「何! オレの轟炎掌をかわしただと!」
どうやら、相手はオレが攻撃を避けたことに驚いているようだ。
たまたまなんだけどね。
「さすがは――と言ったところか。
それでこそ、倒しがいがあるというものよ!」
なにやら相手は興奮している様子。
オレは立ち上がって大男の姿を確認する。
デカイ。
身長二メートルくらいあるんじゃないか?
お侍さんが着るような和服を着た筋骨隆々のいかつい大男。
その肌は浅黒く、髪は紫がかった黒。
そして、ひたいにそびえ立つ二本の赤い角。
角!?
ちょっとまて、どうして角なんて生えてるんだ?
人間じゃねーのかよ、話が違うじゃねーか!(※話なんてしてません)
これはあれか、今はやりの異世界トリップというやつか!
「では、こちらもそろそろ本気でいかせてもらおう、はあああああああ!」
そういうと大男の体から紫のオーラみたいなのが噴き出し、辺り一帯が歪んでいく。
まじかよ、あんなの反則だろうが!
「あらためて自己紹介しよう。
オレは元魔王軍総大将、ガイアス・ウォーレット、お前を殺す男だ!」
おい、こいつ今なんつった。
元魔王軍総大将だと!?
なんで異世界着て最初の敵がそんな大物なんですかねぇ?
普通、最初の敵はスライムじゃねーのか?
なんでチュートリアルすっ飛ばしてラストダンジョンみたいな敵と戦わなきゃいけない訳?
「ちょっと、まて、オレの話を……」
「死ね、偉大体当!!」
大男――ガイアスは、それまで放出していたオーラを全身に纏うと、オレに向かって、突進してきた!
その勢いはすさまじく、一歩足を踏み込むごとにクレーターができるほどだった。
まずい、どうする、オレ!!
ふと、オレは自分の背中に大きな剣を背負っていることに気が付いた。
ええい、ままよ!
オレは剣を盾代わりにして構える。
すると、剣と男の間ですさまじい衝撃が発生する。
「な、なんだと、オレの偉大体当をこうもたやすく……」
ガイアスは信じられないものを見る目でこちらをみている。
今のは危なかった。剣で防いでなかったらと思うと、ぞっとする。
しかし、どうする?
事情は分からないが、このままではあの大男に殺されてしまう!
何か打開策を考えねば……
《――ニア、わたしの声が聞こえますか?》
……なんだ、今どこからか声が聞こえたような。
「ぐ、しかたない、これはとっておきたかったのだが、やはり貴様を倒すにはやむをえまい。
我が最終奥義、とくと見るがいい……」
グッ……どうやら相手はまた何か仕掛けるみたいだ。
《時間がありません。わたしの言葉を復唱してください》
な、なんだ、やっぱり声が聞こえるぞ!
い、いや、今はそんなことより、言葉を復唱だと?
オレは藁にもすがる思いで、謎の声の言葉を復唱する。
《大いなる炎の守護者スルトよ、その聖なる浄化の炎を今ここに顕現せよ》
「大いなる炎の守護者スルトよ、その聖なる浄化の炎を今ここに顕現せよ」
「何!? その詠唱は、まさか!?」
なにやら敵さんはあわてている様子。
どうやらこの言葉、すごく意味のある言葉みたいだな。
「くっ……させるか!」
相手はこちらの詠唱をつぶすためにとうとう最終奥義を放つ。
「うおおお、修羅せん……」
《業火》
「業火」
そして、勝負は終わりを告げた。