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聖魔の惨殺姫  作者: マシュマロ悪魔族
第二章 神々の黄昏
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二つの戦場

 元ガイアス領にして現ドラグニア領の南。

 そこでは今、破壊の権化と化した巨人たちが森の木々を倒しながら、ドラグニアの城を目指し進行をつづけていた。

 ガイアスはその壮絶な光景に言葉を失う。

 巨人族、単純な身体能力では吸血鬼ヴァンパイア族すらしのぐ魔界の上位種族。

 噂には聞いていたがこれほどのものとは……

 だが、自分は主より巨人軍団討伐を命じられた身、必ずや巨人どもを食い止めねば。


「ゆくぞ、皆の者。

 勝利は我が主、ドラグニア様とともに!」


 その掛け声とともにガイアスの部下たちが巨人に向かっていく。

 しかし……


『ごあああ!』


 巨人の棍棒による一振り。

 それだけで幾人もの戦士たちが宙へ放り出される。

 それは動く壁。絶対堅固の恐怖の壁。

 歴戦の戦士もこれには戦々恐々せざるを得ない。


「馬鹿な……たった一振りだぞ……

 たった一振りで我が軍が手も足も出ないだと!?」


 ガイアスは思う。

 このままではドラグニア様の命令を遂行することができない。

 そしてシルフィーナ。

 彼女の勝ち誇った顔を脳裏を過ぎた瞬間、ガイアスのなかの何かが壊れた。


(オレがあの女に負ける……

 そんなこと看過できるはずがない!)


 ガイアスは立ち上がり、最後の手段の使用を決める。


「いくぞ、巨人ども。

『鬼人活性』……否、『鬼神覚醒』!!」


 その言葉とともに解き放たれし、ガイアスの真の力。

 戦闘力を二倍~四倍に高める鬼人族固有魔法「鬼人活性」のさらに先、その力を一時的に十倍以上に高めるガイアスの究極魔法「鬼神覚醒」

 これぞ闘神。

 知性無き巨人すらたじろぐその威圧感オーラ

 ガイアスに合わせて部下の鬼人たちもまた「鬼人活性」を発動する。

「鬼人活性」を使っても四~五人で巨人一人を相手にするのが関の山だろう。

 しかし問題ない。

 不足分は自分が補えばいい。

 ガイアスは抑えきれない笑みを浮かべながら戦場を貫いた。


=============================================


 シルフィーナはその美しい漆黒の翼をはためかせながら、戦場を優雅に眺めていた。

 オジリアの軍はオークを中心に構成されているようだ。

 オーク……生殖能力が高く他のどの種族のメスとも交尾が可能なため数が多く、魔界では戦争その他で数合わせとしてよく使われる下等種族だ。

 つまりオジリアの軍はハリボテ。

 シルフィーナは笑い出しそうになるのをなんとかこらえる。

 真の魔王後継者が聞いてあきれる。

 だが、数は数。そして数は力だ。

 つまり、脅威であるのは変わりないのだ。

 前回のように部下の魅了に任せるのも良いが、それでは時間がかかる。

 今回は南から巨人の軍勢が押し寄せている。

 ガイアスが抑える算段ではあるが、あの筋肉馬鹿に任せるのは不安しかない。

 ゆえに今回は久々に本気を出すことにする。


「あなたたち、光栄に思いなさい、わたしの一部ペットになれることを。

 禁断発動『永久魅了リリス』」


 一瞬にしてオジリアの全軍勢が動きを止め、シルフィーナを崇め始める。

 それはまるで神を崇めるように。

 これがかつて六魔将と呼ばれしシルフィーナの力。

 魅了を超え崇拝の域に達する究極魔法「永久魅了」

 前回のヨムンガルド戦では見せられなかったシルフィーナの本気。

 ロキがヨムンガルドを使ってでもシルフィーナを亡き者にしたかった理由。

 女王の真の力だ。

 支配されたオジリア軍は進路を180度変えて動き出した。

 すべてはシルフィーナの思う通りに。


「さて、ロキにこの前のお仕置きをしなくちゃね。

 わたし、あなたは好みじゃないから、たっぷり後悔させてあげるわね」


 不敵なる女王はロキのいるであろう戦場の最奥に向かって飛んで行った。

激戦がはじまると言ったな、あれはウソだ。

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