世界の鍵
シルフィーナは自分のこれまでの常識が吹き飛んだのをはっきりと感じた。
それほどまでに先ほどのドラグニアの技――竜剣は衝撃的だった。
剣より放たれた強大な魔力はその密度により自然と光線と化し、ヨムンガルドの巨体を飲み込み、跡形もなく消滅させた。
次元が違いすぎる。
ガイアスも同様の衝撃を受けたのだろう尊敬を通り過ぎ、もはや崇拝の目で自分の主を見ている。
そのすさまじい攻撃をした当の本人はというと、さすがに魔力が切れたらしく攻撃の直後に倒れて眠っていた。
寝ている彼女に近づいて抱きかかえてみる。
こうして見ていると、とても先ほどの強大な技を放った人物と同一人物には見えない。
華奢で可憐で儚くて。
「貴様、我が主を放せ!」
「安心していいわ、わたしはもう何かするつもりはないから」
怒鳴りつけるガイアスに対し、彼女はつきものでも落ちたかのように静かに返答する。
「何かするつもりはない」というよりは「何もできない」という方が正解だろう。あれを見せられては。
そして彼女はある決心をした。
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オレが目を覚ましたとき、すべてが終わっていた。
あの蛇はオレの最後の攻撃で消滅したらしい。
倒したのではなく、消滅。
どんだけ強烈な攻撃だったんだよ、オレの竜剣。
そうそう、シルフィーナたち淫魔軍はオレたちに降伏した。
うやむやになっってしまうかと思ったが、シルフィーナたちから負けを認めたそうだ。
彼女は目覚めたオレに開口一番、
「これまでのご無礼、お許しくださいドラグニア様。
われわれ淫魔一同は、敗北を認め、あなた様の軍門に下る決意をいたしました」
と頭を下げてきた。
それと同時に彼女の取り出したもの。
それは七候補に渡された七つに分けられた世界門の鍵のかけら。
魔王候補の証。
ガイアスとの戦いの後にあいつからもらったものと同様の物だ。
これでオレが持つかけらは、もともとオレ(ドラグニア)が持っていた分と合わせて3つとなった。
「分かった。
お前たちが我が軍門に下ることを認めよう」
その言葉を聞き、パァッと明るい笑顔で「ありがとう、ニアちゃん!」と言いながらオレに抱きついてくるシルフィーナ。
おお、またもあの感触が……!
「貴様……まだ反省しておらんようだな!」
「あらガイアス、あなたまだ居たの?
ニアちゃんにはわたしがいるんだからあなた、もう用済みよ」
「抜かせ、今度こそ貴様を成敗してくれるわ!」
激戦で荒野と化した元草原で、またも喧嘩を始めるガイアスとシルフィーナ。
ともかく、新たな頼もしい? 仲間を得て、オレは魔王へまた一歩前進した。
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「このような結果になりましたか……
なかなか思うようにはいかないものですねぇ。
シルフィーナくらいは道ずれにできるかと思ったのですが……
まあ仕方ないでしょう、では僕はもう一人の要注意人物に会いに行きますかねぇ……」
魔人は不吉を孕んだ笑みを浮かべながら闇に消えて行った。




