戦場の姫君
戦場を少女が、舞う。
それは、冷酷に。
それは、残酷に。
それは、舞い散る花のように。
少女の名は、ドラグニア・ランフォード。
この魔界の王女にして、残虐の姫。
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「いたぞ、惨殺姫だ!」その声を聞き、戦場に緊張が走る。
大鬼も、豚人も、子鬼も、武器を持つ手に力がはいる。
それもそのはず、惨殺姫ドラグニア・ランフォードといえば、前魔王の娘であり、この魔王選別戦争においても、その比類なき力にて、数々の魔王候補を打ち取ってきた、鮮血の姫君なのだから。
爆炎とともにその姿を現す。
その姿は噂とは程遠く、可憐で儚げな幼い少女だった。
「あれが惨殺姫……なのか?」
どこからか声が漏れる。
「へっ、大層な名前だからどんな化け物が出てくるかと思えば……」
「あれなら一発でぶっ殺してやるぜ!」
「ぐひひ、報酬はオレのものでやんす」
皆さきほどとは打って変って、殺る気に満ちた目で、武器を構える。そして、報酬を手にするため、我先にと、少女に襲い掛かった。しかし……。
「ひ、ひいいい……」
「そんな、ばかな……」
「ば、化け物だ……」
悲鳴をあげたのは魔物たちのほうだった。
少女が背中に背負っていた大剣を一振りするだけで、屈強な大鬼たちがまとめて両断される。タフさが自慢の豚人たちの肉壁が、魔法の一撃で消滅する。数にものをいわせた子鬼たちが少女の手のひらで発生した竜巻に巻き込まれ壊滅する。
わずか数分で魔物の大軍が全滅した、一人の少女によって。
「つまらない、この程度の相手をワタシに差し向けるなんて……少し罰がひつようのようだな」
うっすらと笑みを浮かべ、少女は荒野を去った。