表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
PR
89/148

#87 本気の勝負(5)

「すみません!」

「大丈夫,気にしないで」

「そうそう,火野相手にあそこまで食らいつけただけでも十分だよ」

「気を取り直して,攻撃で活躍してね」


 全力で謝る俺に,チームの面々がそれぞれ声をかけてくれる。

 流石は3年の先輩,人間が出来ていらっしゃる。


「………」


 と,思ったら,あからさまに不機嫌そうな顔の先輩が1人だけ。

 でもあの表情を見るに,簡単に抜かれた俺にというより,上手く攻撃が出来なかった自分に対して怒っているのだろう。


「先輩,すみませんでした」

「ん? ……まぁ,気にするな」


 一応声をかけに行くと,一瞬考えてからそう答えるものの,どうやら今の俺のプレイは見ていなかったらしい。

 きっと目の前の天王寺先輩の相手で手一杯になり,後ろなど気にする余裕が無かったのだろう。

 それも仕方ない。いつものゴール下から,突然真逆のトップ位置にポジションを変更したのだから。


「白山先輩,大丈夫ですか?」

「あぁ,問題無い。次はもっと上手くやるさ」

「はい。俺も精一杯サポートしますから,どんどんパス回してください」

「…よろしく頼む」


 たった一回の攻防で,白山先輩はかなり疲弊している。

 慣れないポジションで,最初の相手がラスボスクラスではそれも仕方ない。

 だが,それでもポジションを変える気が無いという強い意志を言葉や表情から感じる。

 事情はよく分からないが,それほどまでに先輩を突き動かす何かがあるのだろう。

 だったら,俺のやる事は1つだけ。

 先輩が全力でプレイ出来るように,しっかりとサポートをしなければ。


「…よし!」


 俺は改めて気合を入れ,ポジションにつく。

 目の前の火野先輩も,先ほどまでの戸惑いはなく俺の正面につく。


「ディフェンスも負けないからな」


 先ほどのプレイで余裕を持ったのか,自信満々で俺に向かってくる先輩。


「こっちこそ,負けませんよ」


 だが,こちらもおめおめと負けっぱなしではいられない。

 ディフェンスで失敗した分は,オフェンスで取り戻すしかないのだ。


 ちらりと天王寺先輩の方を確認すると,あちらも今度は全力で白山先輩についている。

 先ほどやられたお返しと言わんばかりの徹底マークで,白山先輩の動きを完全に抑えている。

 逆サイドから大内先輩がボールを呼んでいるが,ちと厳しいか。


 それならばと,火野先輩の動きを見ながら俺が出る。

 こうなる事はある程度予測されていたのだろう,先輩も中々やり辛い位置で守ってくるが,天王寺先輩程ではない。

 完全に引き離せなくとも,パスを貰う事くらいは出来る。


「先輩!」

「ッ! 頼む!」


 身長差を上手く使ったパスを白山先輩から受け,先程とは攻守の逆転した俺と火野先輩の1対1の形。

 だが,あいにく俺に火野先輩を突破する力は無い。

 天王寺先輩に使った奇襲だって効果は無いし,かといって先輩に正面からぶつかっていける勇気も無い。

 無い無いづくしの俺に出来る事といえば,今までのようなパス回ししかない。


「……?」


 ふと,そこである違和感に気づく。

 パスを貰うまではあんなにしつこく張り付いていた火野先輩が,俺がボールを持った途端にほんの少しだが離れたのだ。

 どんな事にも反応出来る距離,と言えば良いのかもしれないが,それにしても少し遠い気がする。

 これはむしろ,俺を誘っているような…


「…なるほどね……」


 誘っているようね,ではなく,完全に誘っていた。

 オフェンスでもディフェンスでも俺の事を正面から叩き潰してやるという目で先輩はこちらを見ている。

 この誘いには乗るべきか,乗らざるべきか。


「木嶋! もう時間無いよ!」


 どうするか躊躇っていると,高野先輩が声をあげた。

 その声に驚いて時計に目をやると,確かにもう24秒間近になっていた。

まさか,それを見越して俺に揺さぶりをかけたんじゃないだろうな。

 だが,もうそれを確かめる時間も,ましてやパスターゲットを探す時間もありはしない。

 ここは俺が何とかしないといけないか。


「………」


 うだうだ考えても仕方ない。

 どうせドリブルもパスもダメなら,残された道はこれしかない。


「ッ?!」


 そんな俺の考えを察したのか,火野先輩が前に出て距離を詰める。


 ――でも残念,それじゃ俺には届きませんよ。


 先輩が1歩目を踏み出すと同時に跳び,まっすぐにリングを狙う。

 中学時代からそれほど得意ではなかったミドルシュートだが,今回はリングに嫌われる事もなくネットを揺らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ