#77 新しいメンバー
「今日の紅白戦,よろしくお願いします」
昼食の片付けを終え体育館に戻った俺を待っていたのは,昨日とは違うグループ。
3年生が西田葉菜先輩,清水美波先輩,江口千歳先輩の3人。
2年生が萩原由紀先輩,永井若菜先輩の2人。
そして1年生の平林文香の6人。
昨日天王寺先輩と同じチームだったグループだ。
「まずは,みなさんの得意なプレイと大体のポジションを教えてください」
残念ながら,文香以外の5人とはほとんど面識もなく,練習でちょこっと一緒になった程度しかない。
昨日と同じ失敗をしないためにも,まずはみんなを知る事から始めよう。
俺が遅れて来るのを考慮してくれてか,試合の順番は昨日と同じらしいので,まだ時間はたっぷりある。
「私はリバウンドが得意よ。正直,スクリーンアウトとリバウンドだけなら千夏にも負けない自信があるわ」
俺の問いに真っ先に口を開いてくれたのは西田先輩。
背はそこまで高くないと思うが,白山先輩にも負けない,とは何とも頼もしい言葉だ。
きっと身長差を苦にしない技術を持っているのだろう。
「その代わり,シュートは全然だけどね」
「こ,こら美波。余計な事は言うんじゃない」
「別に良いじゃない。どうせすぐバレるんだから」
そう言って笑うのは清水先輩だ。
「私は葉菜とは逆かな。ゴール下でボールを持てれば負ける気しないけど,リバウンドとかは苦手。やっぱりアウトサイドでボール貰って,ドリブルでゴールめがけて突っ込んでいくのが好きかな」
ぐるぐると肩を回しながら笑う先輩。
身長はそこまで無いが,体格の良い先輩のパワーを生かしたドライブインは確かに迫力がありそうだ。
「美波ちゃん,ドリブル上手だもんね」
「千歳だって頑張ってるじゃん。前よりすっごく上手くなってるし。」
「そう,かな…」
苦笑しながら言葉を濁すのは江口先輩。
こう言ってはなんだが,2人に比べると少し影が薄いというか控えめな感じだ。
「わ,私はあんまり得意な所とかはなくて,葉菜ちゃんや美波ちゃんみたいに上手くないから…」
「こーら,千歳。またすぐそうやって言う。光だってあなたの事を認めているからこの紅白戦に出ているんだからね?」
「木嶋,千歳はこう言ってるけど,ポジションはあたしと同じフォワード。ゴール下,とまではいかないけどインサイドプレイヤーだ。0度からのシュートの精度は中々の物だよ」
ぼそぼそと話す江口先輩をすかさずフォローする西田先輩と清水先輩。
2人の言葉にも確かな信頼が滲んでいる所を見ると,自分に自信がないだけで本当は実力のある人なのだろう。
「じゃあ次は私たちが」
3年生の会話が1段落した所で,次は2年生コンビが手を上げた。
「私は先輩たちみたいにゴール下に突っ込んでいく勇気はないかな。少し離れた所でのパス回しとか,スクリーンプレイとかなら出来るよ」
先に口を開いたのは萩原先輩。
確かに昨日の文香に対するスクリーンプレイは上手かった。
こういう人は,チームに1人いると相手を惑わせやすいんだ。
「私も由紀と同じ。少しはミドルシュートも出来るけど,平林と比べたらまだまだだから」
「いえ,そんな事は…」
「本当の事なんだから,謙遜しないで」
必死に首を横に振る文香にそう言って笑いかける永井先輩。
中学から天才シューターとしてチームで活躍してきた文香と比べられたらたまらないだろう。
けれどそれでも後輩にこうやって言える先輩は素直に尊敬する。
きっと文香もそう思っているだろう。
中学時代は先輩と色々あったみたいだし。
「私は,言わなくても分かる」
「あぁ,大丈夫」
その文香が最後だが,彼女のプレイは中学から飽きる程見てきているし,その実力もよく知っている。
今さら改めて聞く事もないだろう。
「じゃあ最初の試合のメンバーは,ガードに俺が入って,ゴール下は西田先輩と清水先輩に任せます。左右の位置は,萩原先輩と永井先輩で行きましょう。左右どちらが良いとかはありますか?」
「…じゃあ,私が左に行くわ」
「分かりました。なら萩原先輩が右サイド,永井先輩が左サイドでお願いします」
「了解」
2年の先輩は多少驚いた顔をしているが,昨日天王寺先輩にメンバーを聞いてからずっと考えていたのだ。
よく知っている文香を最初は抜いて,まずは他のメンバーをよく見ておきたいと思ったのだ。
それに,文香がいればきっと俺は彼女に頼ってしまうだろう。
それはチームとしてもあまり良くない。
「じゃあ,今日最初の試合,頑張っていきましょう!」
初戦の相手は風花チーム。
チームメイトは,昨日俺のチームで一緒に戦ったメンバーだ。




