#2 始まりは突然に(2)
「い、いきなりどうしたんですか? 先生?」
学園長の言葉に、真っ先に反応したのはキャプテン。
俺を含めた他の部員は、皆ボールを持ったまま呆然としている。
「あのな、倉持―――」
「廃部だ、と言ったんだよ。倉持くん」
「が、学園長…?」
キャプテンの言葉に答えようとした顧問の言葉は、後ろからの声にバッサリと切られた。
驚きの表情で先生が振り向いた先には、冷ややかな表情を浮かべる学園長の姿があった。
「そもそも、現状ではこの部活は部としての体裁すら整っていないじゃないか。三年が三人、その後ろにいるのは…一年生かな、が二人。このままでは公式戦はおろか、練習試合だってまともに出来ないじゃないか」
「そんな…」
学園長の冷たい声が続く。
背筋に冷たいものが落ちてくる感覚。
――これが、本当にあの入学式で話をしていた学園長なのか。
入学式で見た学園長のイメージとしては、温和で明るそうな人、程度のものだったが、今目の前にいる人物は全くの逆ではないか。
「それは…」
何とか反論しようと振り返るキャプテンだが、そこにいるのは三年生と一年生が合わせて五人だけ。
キャプテンは悔しそうに目を細めただけで、言葉を詰まらせた。
「今日から君たちは部ではなく愛好会という形で続けてもらう事になる。一年生の二人は、まだ仮入部期間中だ。他の部へ行くことをオススメするよ。では、行きましょう、先生」
「は、はい…」
もう伝えるべき言葉は無いということなのか、それだけ言って学園長は踵を返した。
顧問の先生も困惑の表情を浮かべながらもそれに従う。
後に残された俺たちには、学園長の言葉も、今の状況も、何一つ理解することはできなかった。